Facebookが「Appleのプライバシー保護強化」に異例の批判 双方の言い分は?

Appleは同社製デバイスユーザーに関する新たなプライバシー保護策の導入を進めている。これに対してFacebookは異例の批判を始めた。それはなぜなのか。

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Facebookは、Appleが計画中の「iOS」「iPadOS」「tvOS」に関するプライバシーポリシーの変更に対し、Webサイトや新聞広告を通じて批判している。Facebookが問題視しているのは、この変更に伴い、Apple製デバイスユーザーの行動を追跡できなくなる可能性がある点だ。Appleはこのポリシーを2021年初頭に導入する。

Facebookはなぜ「Appleのプライバシー保護強化策」に反対するのか

 プライバシーポリシーの変更に伴い、事前にApple製デバイスユーザーがオプトイン(同意の意思表示)をしなければ、アプリケーションは他のアプリケーションやWebサイトを横断したApple製デバイスユーザーの行動を追跡できなくなる。Facebookは、今回のAppleのプライバシーポリシー変更を「多額の収益をもたらすターゲット広告の脅威」だと見なしている。Facebookの広告担当エグゼクティブを務めるダン・レビー氏は、公式ブログのエントリ(投稿)を通じて、今回の変更に反対する意思を表明した。

 無料アプリケーションの開発者は、概してパーソナライズ広告の収入に依存している。消費者の行動が追跡しにくくなることで、そうした開発者は利益のためにアプリケーションを有料化しなければならなくなる可能性がある。

 Appleは、同社製デバイス用のアプリケーションが得た収入の15~30%を徴収する。「今回のアップデートは、Appleにとっては収入が増え、消費者にとっては無料品が減るということになる」というのがレビー氏の主張だ。

 Facebookは今回のアップデートを「スモールビジネス(小規模企業)を傷つける行為だ」と位置付ける。同社はこのアップデートに対する不満の声を共有する目的で、2020年12月にWebサイトを開設した。「個人情報に基づくターゲット広告は、企業が手頃なコストで特定層にアプローチする助けになる」と同社は主張する。

Appleの言い分

 一方Appleは声明を通じて、こうした問題が起きるかどうかは「消費者の選択による」と言い切り、Facebookの懸念を一蹴した。「Facebookがこの変更に伴って慣行を変える必要はない。今回の変更は消費者に情報提供の選択肢を与えるだけにすぎない」とAppleは説明する。

 「消費者は、自身の行動に関するデータがいつ収集されたのか、そのデータがアプリケーションやWebサイトを横断して共有されているかどうかを知らなければならない」とAppleは強調。加えて「こうしたデータの共有を許可するかどうかも選択できなければならない」と説明する。

 Appleによると、今回のプライバシーポリシー変更に伴う行動追跡の制限は、同社を含む全アプリケーション開発者に適用される。

両社の真意

 調査会社Constellation Researchのアナリストであるリズ・ミラー氏は、Facebookの批判について「同社が過去にもっとプライバシーを重視する姿勢を見せていれば、より説得力があったはずだ」と指摘する。「FacebookはデバイスレベルでもOSレベルでも、緩いプライバシーポリシーに依存する広告システムを構築してきた」とミラー氏は語り、「同社が真に守ろうとしているのは『自社の利益』だ」との見解を示す。

 他方でAppleは消費者のプライバシー重視を強調し続けている。2020年12月にはアプリケーションストア「App Store」の出品者に対し、アプリケーションの紹介ページにプライバシー告知を掲載することを義務付けた。これは消費者がアプリケーションをダウンロードする前に、アプリケーションが収集する消費者行動データの種類を告知するためのものだ。Appleはこうした告知を「食品の栄養成分表示ラベル」になぞらえ、「標準化され、消費者が手軽に参照できるもの」だと位置付ける。