宇宙で気候変動に強いワイン用ブドウの木を育てるSpace Cargo Unlimited

宇宙の商業化では、安価な小型衛星にどんな新しいセンサーを載せるかが話題になるが、製造や生産に役立つ微小重力の恩恵を研究も外せない。ヨーロッパのスタートアップSpace Cargo Unlimited(スペース・カーゴ・アンリミテッド)は、微小重力の利点を収益性のある地上でのベンチャーに活かす事業を進めているが、このほど、世界的なワインの種苗企業Mercier(メルシエ)と組んで、宇宙の利点を活かした丈夫なワイン用ブドウの栽培を行うと発表した。

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宇宙の商業化では、安価な小型衛星にどんな新しいセンサーを載せるかが話題になるが、製造や生産に役立つ微小重力の恩恵を研究も外せない。ヨーロッパのスタートアップSpace Cargo Unlimited(スペース・カーゴ・アンリミテッド)は、微小重力の利点を収益性のある地上でのベンチャーに活かす事業を進めているが、このほど、世界的なワインの種苗企業Mercier(メルシエ)と組んで、宇宙の利点を活かした丈夫なワイン用ブドウの栽培を行うと発表した。

Space Cargo Unlimitedは、微小重力がワインに与える影響について、すでにいくつか実験を行ってきた。2019年には国際宇宙ステーション(ISS)に赤ワインを1箱送っている。ワインは、ほぼ0Gに近い環境で丸12カ月間寝かされてから、2020年、地上に戻ってきた。現在、同スタートアップは宇宙でのバイオテックに特化した子会社Space Biology Unlimited(スペース・バイオロジー・アンリミテッド)を立ち上げ、Mercierと共同で栽培地の気候変動に強いワイン用ブドウの新しい品種の開発に乗り出した。

Space Cargo Unlimitedはボルドーのケースだけでなく、320本のブドウの茎(基本的に新芽の成長によって生まれたかブドウのコア構造)も宇宙に打ち上げている。同社はつい先日、SpaceX(スペースエックス)の貨物船でISSから帰還した茎を受け取ったところだ。送られた茎の半数はメルロー種で、もう半数がカベルネ・ソーヴィニヨン種だが、MercireのCEOであるGuillaume Mercier(ギョーム・メルシエ)氏は声明の中で「前代未聞の生物学的変化」が見られたと語っている。これらは現在クローン培養され、「急速に温暖化が進む地球」での発育において優位性が示されるかが調べられていると彼は話す。

バッテリーの生産から積層製造、基礎的な化学および医療用製造に至るあらゆるものが、微小重力環境で試されている。微小重力には、最もわかりやすい例として、重力による物理的な緊張が軽減されることで地上では困難な複雑な構造体の製造が可能になるという効果がある。その特異な環境では、放射パターンが地上と大きく異なることもあり、有機構造体の成長と発達に予想外の変化が引き起こされる。地上で自然に発生するものではないが、再現することで有用な結果が引き出せることもある。

ISSを利用した微小重力の効果に関する研究は、何年も前から行われている。しかし、宇宙へのアクセスが安価になり機会も増えたことで、それまでは費用やスケジュールの折り合いが付かず手が出せなかった多くの企業やスタートアップにも、ずっと現実的な商業利用の道が開かれた。Space Cargo Unlimitedは、この成長分野で収益が上げられる大変に有利な位置にある企業だといえる。