IBM、433量子ビットプロセッサ「Quantum Osprey」と量子コンピュータ新モデル「Quantum System Two」を発表

米IBMは2022年11月9日(米国現地時間)、量子コンピュータのプライベートイベント「IBM Quantum Summit 2022」において、433量子ビットのプロセッサ「IBM Quantum Osprey」を発表した。2021年に発表したプロセッサ「IBM Quantum Eagle」の127量子ビットと比べて、3倍以上の量子ビット数になる。

 米IBMは、量子コンピュータのプライベートイベント「IBM Quantum Summit 2022」において、433量子ビットのプロセッサ「IBM Quantum Osprey」(写真1)を発表した。2021年に発表したプロセッサ「IBM Quantum Eagle」の127量子ビットと比べて、3倍以上の量子ビット数になる。なお、2023年には、1121量子ビットの「IBM Quantum Condor」を発表する予定である。


写真1:433量子ビットのプロセッサ「IBM Quantum Osprey」のイメージ(出典:日本IBM)
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同社における量子コンピュータのロードマップ(2022年5月10日に最新版にアップデート)は、図1の通り(関連記事IBMが量子コンピュータのロードマップを更新、2025年に4000量子ビット超を目指す)。量子ビット数を拡大するための施策として、モジュール型のプロセッサやクラスタ接続、分散処理などのアーキテクチャを採用する。


図1:IBMにおける量子コンピュータのロードマップ(2022年5月アップデート)(出典:日本IBM)
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イベントでは、モジュール型プロセッサとクラスタ接続を採用した量子コンピュータの新ハードウェア「IBM Quantum System Two」も発表した。2023年末のオンライン化を目指している。

量子コンピュータを導入するうえでは、ノイズへの対処が重要な要因である。これを簡略化するため今回、コンテナ型実行環境「Qiskit Runtime」もベータアップデートした。APIを介した簡単な操作で、速度とエラー数の削減をトレードオフ可能だとしている。機能の複雑さをソフトウェア層で抽象化することで、量子コンピューティングをアプリケーションに容易に組み込めるようにした。

量子コンピュータでも解読に時間がかかる耐量子暗号についても今回、新たな取り組みを発表した。通信事業者である英Vodafoneのインフラに耐量子暗号を適用するための協業を発表した。なお、米IBMは、耐量子暗号アルゴリズムを実装したハードウェアをメインフレーム(z16)に搭載済みである(関連記事メインフレーム新製品「IBM z16」、オンチップAIアクセラレータでリアルタイム推論を可能に)。格子点探索問題を利用した格子暗号アルゴリズムとして、署名に使うDilithiumアルゴリズムと鍵交換・暗号化に使うKyberアルゴリズムを搭載している。

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