世の中は「クラウドカオス」–ヴイエムウェア首脳がコンピューティングを語る

 ヴイエムウェアは11月15日、年次イベントの「VMware Explore 2022 Japan」を都内で3年ぶりにリアルで開催した。イベントに合せて米VMware 最高経営責任者(CEO)のRaghu Raghuram氏と最高技術責任者(CTO)のKit Colbet氏も3年ぶりに来日。基調講演後に代表取締役社長の山中直氏と会見を行った。

会見の冒頭でRaghuram氏は、基調講演の内容を振り返りつつ、世界中のあらゆる企業が「デジタルスマート」な組織を目指す一方で、テクノロジー人材やスキルの不足、複雑化し分断化しているIT環境が足かせになっていると指摘。企業が「デジタルスマート」な組織となるには、まず「クラウドファースト」(テクノロジーの選択でクラウドを優先する)を掲げ、「クラウドカオス」の状況を乗り越えていくための最適なアプローチとソリューションを採用し、「クラウドスマート」(クラウドを使いこなすことができる状態)に進化することが必要だと説いた。

VMware 最高経営責任者のRaghu Raghuram氏

VMwareは、先に「VMware Cross-Cloud Services」を発表して以降、オンプレミス/ハイブリッド/マルチクラウドに対するアプリケーション開発やセキュリティを含めた包括的なソリューションのポートフォリオを拡充してきているが、Raghuram氏は、同社のこの取り組みが顧客企業における一貫性を伴うクラウドスマートへの“旅路”に貢献するものであり、VMwareの大きな強みであると説明した。

VMware 最高技術責任者のKit Colbet氏

CTOのColbet氏は、実際にクラウドスマートの段階に至っている企業がまだ非常に少ないと前置きして、「そもそも『クラウドカオス』にたどり着いていないという企業もあるが、世界中の企業が『クラウドカオス』の状態を認識しており、(複数のクラウドをそれぞれに利用する)マルチクラウドの環境を統合的に運用管理し、(複数のクラウドを効果的に使いこなす)クロスクラウド環境を求めている。そこにわれわれはソリューション(のVMware Cross-Cloud Services)を提供している」と述べ、「顧客はクラウドファーストを掲げ、クラウドカオスに陥ることなく、一足飛びにクラウドスマートへ進出することもできる」とも述べた。

近年関心が高まるエッジコンピューティングについてRaghuram氏は、非常に興味深い領域だとし、「大企業のビジネスが分散化、マイクロ化し、脱グローバル化の動きを見せるようになってきており、例えば、サプライチェーンの観点から物流を最適化し、小売なら次世代のチャネル(顧客接点)の創造に取り組むなど、あらゆる業界がエッジコンピューティングに関与し始めている」と述べた。

Colbet氏も、「エッジコンピューティングの現状を『iPhone Moment』と呼ぶことができる。モバイル端末がiPhoneの登場によって単なる通話にとどまらない多機能化を実現したように、エッジコンピューティングもデータセンターやクラウドの進化を受けて、従来の特定用途から新たな変化を見せつつあり、例えば、通信業界では5Gによりエッジソリューションが台頭している」と語った。

VMwareは、2021年に「VMware Edge」ポートフォリオを発表し、Kubernetesのコンテナーを中心とするソリューションを展開し始めている。「OT(制御系技術)のチームがコンテナー技術に関心を寄せ、活用を検討するようになり、(OTにとってこれまでは異なる存在だった)ITチームとの隔たりが薄まりつつある」とRaghuram氏はエッジ領域への関心も示した。

また、データ保護や高いセキュリティ要件に対応するためソブリンクラウド(データ主権クラウド)で同社は、「VMware Sovereign Cloud Initiative」に取り組み、国内では6月から日立製作所が参画している。今回のVMware Explore 2022 Japanでは、さらにNTTデータ、NEC、富士通クラウドテクノロジーズの参加が発表された。

ヴイエムウェア 代表取締役社長の山中直氏

山中氏は、「国内では『ガバメントクラウド』の観点でクラウドのハイパースケーラー各社の取り組みが注目されているが、データや情報の機密性の要件によってはソブリンクラウドの可能性も十分にある。データ主権に対する意識からまず欧州で展開が始まり、日本でもようやくスタートできる体制を整えることができた」と語った。

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