AI搭載の新「Bing」を使って実感–大勢が「ググる」から「ビグる」に乗り換える可能性

 マイクロソフトの進化した検索サービス「Bing」を試してみた。昨年末から、OpenAIが提供する「ChatGPT」が話題だ。一方のBingはCharGPTをベースにマイクロソフトが持つ技術と融合することで、使いやすい「検索サービス」に生まれ変わっている。

昨年末から、OpenAIが提供する「ChatGPT」が話題だ。一方のBingはCharGPTをベースにマイクロソフトが持つ技術と融合することで、使いやすい「検索サービス」に生まれ変わっている。

ひょっとすると、検索王者であるグーグルの立場を脅かすのではないか、という期待感に満ちている。最近、IT関連で熱狂するニュースがなくて飽き飽きしていたが、新しいBingはIT業界の構造がひっくり返るのではないかとワクワクが止まらない。

新しいBingはチャット形式の検索サービスだ。

これまでの検索と言えば、思いつく単語をいくつか入力し、検索で出てきた複数のサイトから、自分が知りたい情報が載っていそうなタイトルをクリックして、本文を読んで答えを導き出していくというものであった。

新しいBingでもそうした検索は可能だ。さらに「チャット」という項目を開くと、AIとの対話形式で答えに近づいていくのだ。

実際に検索してみると、まず流ちょうな日本語に驚いてしまう。かつて、こうしたサービスは英語版が登場し、日本語版はしばらく待たないとリリースされなかったものだが、新しいBingはいきなり日本が使えて、しかも完成度が高い。その答えもユーザーを励ましてくれたり、絵文字を使って語尾の印象を和らげたりと、かなり人間味があふれているのだ。

新しいBingを使っていて快適なのが、知りたいことを簡潔に対話形式で答えてくれるという点にある。例えば「ソフトバンクグループの3年間の業績推移は」と聞いてみると

ソフトバンクグループの3年間の業績推移についてですね。

ソフトバンクグループの公式サイトによると、以下のような数字があります。

– 2020年3月期:売上高9兆6,026億円、営業利益1兆3,518億円、当期純利益961億円
– 2021年3月期:売上高6兆1,882億円、営業利益4兆9,883億円、当期純利益4兆5,079億円
– 2022年3月期(予想):売上高6兆0,000億円、営業利益2兆0,000億円、当期純利益1兆8,000億円

2020年3月期は、傘下のファンドの投資損失やコロナ禍の影響で業績が悪化しましたが、2021年3月期は、ファンドの投資益や傘下企業の業績回復などで大幅に増収増益となりました。2022年3月期は、ファンドの投資益が減少する見込みで、売上高や利益は減少する予想ですが、それでも前々期よりは高い水準です。

ソフトバンクグループは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、世界の人々が最も必要とするテクノロジーやサービスを提供する企業グループとなることを目指しています。

と言った具合だ。数字を抜き出してくるだけでなく、状況の説明もしっかりしている。

答えを出してくると、その下にさらに突っ込んだ質問が表示されたりする。もちろん、自分で新たな質問を投げかけること可能だ。

キャプション

今回はAIから「ソフトバンクグループの競合他社は誰ですか」と質問の提案があったので、選んでみると、下記のようになった。

「ソフトバンクグループの競合他社についてですね。

ソフトバンクグループは、様々な事業を展開していますが、その中でも主力の通信事業においては、日本国内ではNTTドコモやKDDI、楽天グループなどが競合他社となります。

これらの競合他社との違いは、以下のような点があります。

– NTTドコモは、国内最大のシェアを持ち、高品質な通信サービスや5Gの先行展開などで強みを発揮しています。
-KDDIは、auブランドで知られ、多様なコンテンツやサービスを提供することで顧客満足度を高めています。また、海外事業も積極的に展開しています。
– 楽天グループは、通信事業においては新規参入者であり、楽天ポイントや楽天市場などの自社サービスとの連携や低価格な料金プランなどで差別化を図っています。

ソフトバンクグループは、これらの競合他社との競争に対して、以下のような戦略を採っています。

– ソフトバンクは、ヤフー・LINE事業や流通事業などの多角的な事業展開や、AIやIoTなどの先端技術の活用などで、通信事業以外の収益源を強化しています。
– ソフトバンクは、ソフトバンクグループの傘下にあるファンドや企業との連携や、海外の優良企業への投資などで、グローバルな視点での事業拡大を目指しています。
– ソフトバンクは、格安スマートフォンや5Gなどの新しいサービスやプランを提供することで、顧客のニーズに応えています」

とかなり具体的に、さらにはわかりやすく解説してくれている。

実際のところ、時々、間違った答えを出してくることがある。特に人物のプロフィールを検索すると明らかに間違っている答えが散見されたりする。

ただ、新しいBingの場合、答えに対してリンクが貼られており、情報源をたどることができる。万が一、信憑性が微妙な時はリンクをたどればいい。

ただ、いまのところは開発版でもあるため、情報の真偽にあまり目くじらを立てる必要はないのではないだろうか。温かい目で検索の精度が上がるのを待ちたい。

ちなみにChatGPTは2021年までのデータしか持っていないが、新しいBingは最新のニュースまでもしっかりと検索対象となっている。

検索業界のゲームチェンジャーになる可能性

ChatGPTは用途が幅広いツールという感じがするが、新しいBingはネットユーザーなら誰でも使う「検索」に用途を絞っているのが興味深い。

なんせ、検索すれば、知りたい情報を簡潔にまとめて表示してくれる、様々なサイトを渡り歩かなくていいし、広告ばかりを見せられて、なかなか欲しい情報にたどり着かないということもない。新しいBingは、とにかく「タイパ」に優れた検索サービスと言える。

将来的にはモバイル向けも提供する予定なので、多くの人が「ググる」から「ビグる」に乗り換えてしまうかも知れない。

これまで検索をフックに広告事業で生計を立ててきたグーグルにとっては死活問題だろう。先日、対抗策として「Bard」を投入したが、広告モデルを維持しながら、どのようにチャット検索をビジネスにしていくかは、悩ましいのでは無いか。

その点、マイクロソフトも新しいBingで広告モデルを投入し、グーグルを追いかける可能性もゼロでは無いが、やはりいまのマイクロソフトであれば、Officeアプリのサブスクリプションサービス「Microsoft 365」のメニューに追加するということが可能だろう。

また、モバイルでの検索にも威力を発揮しそうだが、あいにくマイクロソフトはスマートフォンのプラットフォームを諦めてしまった。さすがに検索のライバルであるグーグルとは手を組めないので、アップルとタッグを組んで、新しいBingを広めるという可能性もありそうだ。

いずれにしても、マイクロソフトにとって新しいBingは今後、大化けし、新たな収益源になることは間違いなさそうだ。

ここ最近、GAFAの収益が落ち、GAFAの先行きが危ういんじゃないか、という指摘もあったが、GAFAには含まれないマイクロソフトは新しいBingで、検索業界のゲームチェンジャーになる可能性が出てきた。とはいえ、当然、グーグルも黙っていないだろう。

今後、検索サービスが新たなフェーズに入る中、まだしばらくはGAFAMの時代が続くのかも知れない。

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