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企業はインターン生に報酬を支払うだけでなく、ネットワークの構築を支援すべきだ

学生にとって、インターンシップへの参加は就職に直結する貴重な機会となる。ただし、その門戸は誰にでも平等に開かれているわけではない。特にインターンシップが無給の場合、裕福な白人学生にとって有利な状況が生まれやすい。企業がインターン生に報酬を支払うことは、このような不平等を解消する第一歩だ。ただし、それだけで十分とはいえない。インターンシップを自社の人材パイプラインを多様化につなげるために、有色人種や過小評価グループの学生のネットーワーク構築を積極的に支援する必要がある。


 サマーインターンシップは、職を得るための有力なゲートウェイである。しかし、その門戸は、多様な背景を持つ学生に平等に開かれているわけではない。

低所得世帯、ファーストジェネレーション(両親が大卒ではない大学生)、過小評価グループの学生のインターンシップ参加率は、裕福な白人学生の参加率に比べて低い。さらに、長期的な賃金プレミアムと関連する「有給」インターンシップへのアクセスは、依然として人種や階級による不平等が存在する。

インターンシッププログラムを実施する企業は、いま一度自問してみてほしい。あなたの会社のインターンシップは、職場における不平等を生み出しているのか、それとも是正しているのか。その答えは、誰がインターンシップに参加できるかだけでなく、インターン生が時間と引き換えに何を得ているかで決まるだろう。

現在では広く認識されている通り、インターン生に報酬を支払うことは、歴史的に過小評価グループに属する学生が仕事に就く際の障壁を取り除く、最初の重要な一歩である。このような学生に、夏休みに無給で働く余裕はないからだ。

しかし、単に有給にするだけでは、キャリアのスタートを後押しするうえで十分とはいえない。労働市場では仕事の約半数が人脈に由来するため、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)がいまなお成功に不可欠なリソースだ。報酬だけでなく人脈を確保するための経路として、インターンシップへのアクセスを多様化することも極めて重要なのだ。

筆者の共同研究チームは、若者のネットワークを拡大し、多様化させる革新的な戦略について調査し、社内の人材とインターン生をより公平に結び付け、多様なタレントプールを最大限に活用するための、実践的で研究に裏付けられたアプローチを明らかにした。どこから着手すべきなのか、以下で説明しよう。

●時間給という枠に囚われることなく考える

有給のインターンシップは、赴任手当や住宅手当と同様、低所得世帯の学生がエントリーする際、現実に存在する壁を乗り越える助けとなる。ただし、ネットワークや人脈を構築するためには、さらなる壁がある。一緒にランチを食べたり、コーヒーを飲んだりして、濃密な信頼関係を形成して意見を交わすためにも、お金が必要だからだ。

そのような状況を鑑みて、インターン生に日々の食事手当を支給する動きがある。「私たちは、すべての学生に1日20ドルの食事手当を支給しています」と、非営利団体ファースト・ワーキングの設立者兼会長のケビン・デイビスは言う。

同団体は、ニューヨーク市の過小評価グループに属する高校生に、インターンシップを提供している。デイビスは、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)の研究者ブレント・オレルによる最近のインタビューで、この手当の目的はインターン生が人とつながる時間を確保することだと説明している。

「ポイントは、ソーシャルキャピタルの構築と関係づくりにあります。たとえば、同僚から『仕事が終わったらコーヒーを飲みに行こう』とか『昼食は一緒にサンドイッチを食べよう』と誘われた時、参加できるようになります。このような職場での交流を通じて、メンターを得られるのです」と、デイビスは言う。

●マネジャーを割り当てるだけでなく、網の目のようなサポート体制を構築する

経営者はたいてい、インターン生にスーパーバイザーをつけるし、メンターを割り当てることさえある。日々の業務を監督するのであれば、それで事足りるかもしれない。しかし、CERESインスティテュートの研究によると、インターン生が成功を収めるうえでは、網の目のような支援的つながりが不可欠だという。

たとえば、オールド・ネイビーのディス・ウェイ・オンワードというプログラムは、雇用の問題に直面する16歳から24歳の青少年に、キャリアで成功するための基盤となる、最初の就職の世話をしている。プログラムの参加者は、社内のスーパーバイザーのほか、ジョブコーチ(企業が提携する地域の非営利団体に所属)、「お兄さん・お姉さん」(若い従業員)、同年代の仲間とつながることができる。

この網の目のようなサポートは、効果を発揮しているようだ。プログラム修了者に実施した調査によると、同年代の青少年のうち安定した雇用を確保している人の割合は55%に留まるが、このプログラムに参加した人では72%に上る。

企業は、「お兄さん・お姉さん」が提供する見過ごされがちなメリットに、特に注目すべきだ。若い従業員は知識や経験は浅いかもしれないが、他のメンターにはないノウハウや共感性を提供できる。

サーチ・インスティテュートによる最近の研究で、低所得層の学生や有色人種の学生のキャリアの可能性を広げる支援を行う団体を調査した際、年齢や経験が近しい同僚との関係性は、最も多くのリソースの提供につながると明らかになった。たとえば、人とのつながりや、教育や雇用の目標を達成するのに役立つスキルや識見などのリソースである。

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 ●関係性を通してフィードバックを実現する

インターン生はネットワーキングの機会に加えて、フィードバックを必要としている。建設的で有益なフィードバックを受ける機会があると、タスクをこなす能力だけでなく、オフィスでの人間関係も向上する。

インターンシップの質に関する多くの研究は、綿密に設計されたプロジェクトと、プロジェクトを通じて提供されるフィードバックが、インターン生の満足度と生産性を高める決定的な要因だと強調している。

にもかかわらず、ウィスコンシン・センター・フォー・エデュケーション・リサーチの研究によると、スーパーバイザーは、インターン生のウェルビーイング向上につながる一般的なサポートは提供するが、彼らが求める濃密でタスクに特化したフィードバックは、それほど積極的に提供しない傾向があるという。

まず、もっと多くの同僚にインターン生の仕事をチェックしてもらおう。同僚たちは新鮮な視点を提供できるだけでなく、タスクと組織の目標との関わりを広い文脈から示すことができる。

パーカー・デューイは、学生と有給のマイクロインターンシップをマッチングする企業だ。同社の創業者兼CEOのジェフリー・モスは、フィードバックの提供者を多様化することにより、インターン生の目的意識や帰属意識を高めることができると言う。

「インターン生の仕事が企業全体の取り組みのどこに貢献するかを教えることは、とても有益です。たとえば、マーケティングのインターン生が作成するケーススタディは販売のニーズとどのように関連するのか、競合分析の結果が商品開発チームでどのように用いられるのか、といったことを教えるのです。インターン生の仕事の価値が認められていると示すことが重要なカギとなり、インターン生は自分もチームの一員だと実感できるようになります」

●オンラインを含めて、偶然の出会いを活かす

バーチャルか対面かのトレードオフをうまく乗り越えようと奮闘する経営者は、インターン生の人脈構築まで面倒を見切れないと感じるかもしれない。パンデミック以前、オフィス環境での自然発生的な出会いは成り行きに任せておけばよかった。このようなつながりを促進するために時間を割くことは、大きなメリットがある。

ハーバード・ビジネス・スクールの研究者が実施した、「バーチャル・ウォータークーラー」(バーチャル上の立ち話)に関する2021年のリポートでは、リモート環境のインターン生とシニアマネジャーとの間で、オンライン上で同じ時間を共有できる短時間の非公式なやり取りがあると、インターン生のパフォーマンスや態度が改善され、フルタイムの雇用をオファーされる可能性が高くなると指摘している。特にインターン生のジェンダーや民族的属性がシニアマネジャーと一致する場合、その効果は大きかった。

いまなおバーチャルやハイブリッドで活動する企業では、シニアマネジャーも含めて、非公式でオンライン上の会話を行う機会を提供することが大切だ。これはインターン生の帰属意識と成功に対する意識を高めるのに役立つ。

また、特にエントリーレベルの従業員と非白人の従業員は、職場で孤独感を抱きやすいことがデータで示されている。非公式な関係の構築がすべてを解決するわけではないが、従業員エンゲージメントを高める可能性がある。

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 ●持続的な関係性に投資し、測定する

人脈構築の価値は、その時だけに留まらないことが多い。一時的にプロジェクトをサポートしてくれた同僚が、後日、新しい仕事を紹介してくれたり、新たな機会を提供してくれたりすることもある。そのような関係が新たな扉を開いてくれるのか、その扉がどのように開かれるのかを完璧に予想することはできないが、特にソーシャルスキルを重視する業界で働くプロフェッショナルは、ネットワークに投資する動機が強い。

単に仕事の世界を覗きたいだけのインターン生であれば、このようなネットワークを構築して活用する意義を理解しにくいかもしれない。一方で、アメリカズ・プロミス・アライアンスの研究では、有色人種と低所得世帯の若者は、キャリアの進展には人脈とソーシャルキャピタルが不可欠だと考えているが、その構築に苦労していることが示された。

インターン生が、社内で人脈を形成するためのスキル、マインドセット、自信を身につけたら、サマーインターンシップ終了後も維持される貴重なソーシャルキャピタルを獲得することができる。的を絞った人脈構築や関係構築のトレーニングは有益だ。

社会企業のソーシャル・キャピタル・ビルダーズは、社会に出る若者に対して、金融リテラシーならぬソーシャルキャピタルリテラシーに焦点を当てた「ファンデーションズ・イン・ソーシャルキャピタル・リテラシー」というプログラムを提供している。

また、若者のメンタリングに取り組む団体のメンターは、インターン生とスーパーバイザーのために、関係構築とネットワーキングのスキルを高めるコネクト・フォーカス・グローというカリキュラムを生み出した。

このような取り組みを実践すれば、あなたの会社のインターン生が実際にどのように人とつながっているかを把握するために、積極的な手段を利用できる。データを収集し、インターン生のバックグラウンド別に分類することは、彼らにとって何が功を奏し、何がそうでないかに関する前提をチェックするうえで不可欠だ。

人間関係を構築できたインターン生は誰か、その関係がどれだけサポートやアドバイス、フィードバックといったリソースを提供できているかは、とてもシンプルな方法で把握できる。インターン生と交流があった人物を毎週チェックすることで、スーパーバイザーは、インターン生が人とのつながりを持てているか、孤立していないかを見極めることができる。

より深く追求したい経営者は、インターン生が新しいつながりを記録し、振り返ることができるよう、インターンシップ期間中のネットワークマップの作成を求めてもよい。また、すでにインターン調査を利用している場合は、社会学でいうネームジェネレーターやポジションジェネレーターを活用した調査項目を組み込むこともできる。それによって、インターン生がサマーインターンシップを体験した前と後で、どのような人脈を構築できたかを測定することができる。

企業は人材パイプラインを多様化するための戦略として、これまで以上にインターンシップ(あるいは「プレインターンシップ」)に目を向けつつある。インターンシップが労働市場における不平等を永続化させるのではなく、インクルージョンを推進するエンジンとして機能するためには、金銭とソーシャルキャピタルの両面でインターン生に報いることが重要だ。

インターンシップへのアクセス、とりわけ有給インターンシップへのアクセスを拡大しようとする呼びかけは、善意によるものだ。それが十分に効果を発揮するためには、インターンシップの過程で、学生が誰と知り合うかを注視することが重要である。

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