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街づくりにおけるWeb3領域の可能性--センサーやブロックチェーン技術が果たす役割
 2022年12月にNFT_Tokyoが行われ、DeNAもスポンサーをさせていただきました。このカンファレンスは、日本発のグローバルWeb3コミュニティとして、企業のNFT、Web3事例を共有することを目的としており、海外からはキューハリソン・テリー氏や、国内から、伊藤穰一さんなどWeb3関連の人たちが多く参加しました。私も「デジタルとフィジカルが交差する街と人が繋がるWeb3領域の役割」というテーマで登壇させていただきましたので、今回は「街」をテーマとしたWeb3の可能性について考えてみたいと思います。 視覚情報としてのデジタルとフィジカルの掛け合わせ デジタルとフィジカルの掛け合わせによって、街づくりに繋げていくというコンセプト自体は目新しいものではなく、ドイツ政府が2011年に産業政策として発表したIndustry 4.0や、Society 5.0のなかで、仮想空間と現実社会を高度に融合した社会というものが語られてきました。そのなかで登場するCPS(サイバーフィジカルシステム)は、センサーなどを使い、現実空間から収集したデータをサイバー空間で分析し、創出した情報により社会問題の解決を図っていくものと定義されています。現実の空間をそっくりそのまま、デジタル空間に移すような手法は、街など都市の3Dモデルなどのイメージが分かりやすいでしょう。 国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデルオープンデータ「PLATEAU」では、精度の高い3Dデータが提供されていたり、オーストリアのスタートアップ企業がつくるBlackshark.aiでは、衛星データとAIをベースに、3Dシミュレーション環境を世界規模で利用できるプラットフォームが構築され、MicrosoftのFlight Simulatorにも活用されています。 [link VIDEO] コンセプトとしては、早くから登場していたCPSのような概念が、技術の進化によって現実化される様子は、前回記事にしたDAOといった分散化された組織などが、ブロックチェーン技術の登場により具現化したことに似ているように思います。 PLATEAUのデータを3Dプリンターで印刷。渋谷や新宿の街並み(筆者所有の3Dプリンターで書き出し) 最近、私が注目しているのはVPS(ビジュアル・ポジショニング・システム)という技術です。2022年春以降、GoogleやAppleなどテック企業などで積極的に研究が行われており、GoogleはGeospatial API、AppleはLocation Anchors、NianticはLightship VPSなど、各社呼び方は異なりますが、いずれも同様の技術です。簡単に説明すると、カメラなどから得られる風景などの特徴を目標にすることで、現実世界にCGなどを正確に重ね合わせる技術です。 これまでも、拡張現実によって街にバーチャルのコンテンツを配置するユースケースは考えられてきました。例えば、2009年に考案された「セカイカメラ」において、ユーザーが特定の場所に写真や文章を投稿できる世界観は、検索を不要にするという期待がありました。しかしながら、これまではGPS精度の問題により、ピンポイントで重ねることが技術的に難しい状況にありました。ですが、GPSとVPSを併用することにより、自分の向いている方角と位置をセンチメートル単位の精度で合わせることが可能になりました。 私自身もこの仕組みを使って、CGを実景に重ねる実験を行なっていますが、ロボットや恐竜など、大きなものを重ねる様子は圧巻です。もちろんSFだけではなく、バーチャル店舗をつくりだし、服や靴などを陳列して、気に入ったものがあればバーチャルフィッティング(試着)を行うなど、デジタル技術を駆使した店舗運営もできそうです。地方などの空き地に期間限定ショップなどを立ち上げ、送客するような仕組みができれば、地域創生などに一役買うことができるかもしれません。 このようなVPSグリッド上でさまざまなコミュニケーションが発生する様子を、Nianticはリアルワールドメタバース(現実世界でのメタバース)構想と表現しています。 [link VIDEO] さらに、ブロックチェーン技術も絡めることによって、最近ではNFTのスニーカーはじめ、物理的なプロダクトとの連携が話題になっていますが、リアルとデジタルがより密接に絡み合う世界観をつくりだすことができます。 そこに住む人の情報を管理するためのブロックチェーン技術 デジタルとフィジカルの接続というと、先に述べたようなARやVRなどのような技術が注目されますが、そこに住む人たちの情報管理基盤としてのデジタルとフィジカルの関わりがあります。2022年末からマイナンバーカードの申請件数が増え、徐々に我々の生活にも浸透していくことを期待されていますが、このようなデジタル施策などの参考にもされているのは、エストニア政府のe-Estoniaと言われるデジタル政策です。 2012年頃からブロックチェーン技術などを用いてデジタル化が推進されており、Guardtime社が開発したKSIブロックチェーンという技術によって、個人のデータなどが管理されるなど99%の行政サービスがデジタルで行えるようになっているそうです。e-Residencyとよばれる、エストニア政府が発行するデジタルIDとステータスを管理する仕組みは、世界中どこからでも住民となることを可能にしており、ある記事によると、2014年12月の開始以来、約8万5000人を迎え入れ、企業も1万8000社以上が設立されているそうです。 行政の仕組みをブロックチェーンで管理する必要があるのかと疑問に思われるかもしれません。この背景には、ロシアとの国境沿いにあるエストニアにとっては、国が万が一なくなったときに、デジタル基盤に国民が集まっていることで、国を立ち上げ直せるという意味があるそうで、分散技術というものは重要であることが分かります。Continue reading
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