チームの問題解決能力に不満を抱いていないか

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サマリー:意思決定スタイルの相違によりチームの協力が妨げられることは、組織でたびたび生じる問題である。そうならないためには、自己を認識し、チームメンバーのプロファイルを理解することが重要だ。経営者は「問題解決者プロファイル」を活用したうえで、柔軟な意思決定を行う必要がある。本稿では、5つのプロファイルを提示し、リーダーが多様な意見を協力的に取り入れる方法を解説する.

人は同じような考え方の人たちと仕事をしたがる

環境に配慮したホスピタリティ企業のCEOであるエブリンは、コスタリカでの事業を視察するため、上級幹部チームとともに現地に飛んだ。ワンランク上の富裕層市場への参入のチャンスを与えてくれそうなホテルが売りに出されており、現地支社の責任者はその機会を逃したくないと考えていた。

しかし、チームが現地に集合すると、コスタリカ支社の財務データに不可解な点があることが明らかになった。デンバーを拠点とする本社チームはこの点を把握していなかった。そこでエブリンは、CFOに加えてリテール部門と新規事業開発部門のトップも交えた打ち合わせに臨んだ。

このエキサイティングな新しいチャンスをつかむため、財務状況を素早く把握したかった。しかし、自分しか話をしていないことにいら立ちを覚えた。彼女はチームの意見を聞きたかったにもかかわらず、誰一人として口を開こうとしない。大型買収を進める前に、チームは明確な情報を必要としていたにもかかわらず、効果的に協力して問題を解決できていないと、エブリンは感じた。

エブリンのような状況に陥る経営者は珍しくない。これは、チームメンバーの意思決定スタイルが相反することが原因である場合が多い。私たちは自分と同じように考え、問題を解決する人たちと一緒に仕事をしたがる傾向があるため、自分の認知バイアスや盲点が強化され、無意識のうちに真の創造的な問題解決を妨げてしまう。

筆者は、意思決定についての30年にわたる研究で、5つの異なる意思決定の原型を特定し、これを「問題解決者プロファイル」(PSP: Problem Solver Profiles)と呼んでいる。拙著Problem Solver(未訳)で述べたように、PSPは個人の強みと弱みに基づくアプローチである。自分自身とチームメンバーのプロファイルを認識すれば、よりダイナミックで柔軟な意思決定を行えるようになるための策を講じることができる。

5つの問題解決者プロファイル

私たちは、自分の意思決定パターンの長所と、他人の意思決定パターンの短所に目が行きがちだ。しかし、どの問題解決者プロファイルにも特有の長所と短所があり、これらの認知バイアスはコインの裏表のようなものといえる。

当然、問題解決者の複数のプロファイルに当てはまる人も少なくないが、たいていは一つの主軸となるアプローチを持っている。以下に、5つの問題解決者プロファイルと、それぞれの認知バイアスが意思決定のパフォーマンスにどう役立つのか、あるいはどのように悪影響を及ぼすのかを解説する。

冒険家(Adventurer)は、直感に従う傾向がある。楽観的で自信があり、現在よりも未来に関心を持つことが多い。その楽観バイアスは、多くの決断を素早く下すのに役立つが、直面する決断の質に対する評価を歪めることもある。

刑事(Detective)は、データに従うことを好む。証拠に基づき、何かに導いてくれるデータを果敢に探し出す。しかし、研究や事実に引き寄せられ、データが現在の意思決定において最も重要な基準であるという確証バイアスに陥ることもある。たとえば、データを重視するあまり、他者とうまく協働する機会を逃す可能性がある。

傾聴者(Listener)は、他者の意見を求める。協力的で信頼があり、同僚とよい関係を築ける。しかし、好意バイアスに悩まされることが多く、自分の意見に注意を払ったり、他人と対立しそうな視点を表明したりすることが苦手である。

思想家(Thinker)は、複数の道筋と結果を見極めることに長けている。思慮深く、慎重で、選択肢を知りたがる。意思決定の背後にある「理由」を理解したいという欲求が、各選択肢を個別に評価する能力を妨げることがあり、解決しようとしている問題の見方や理解の仕方を制限するフレームブラインドネスに陥る可能性がある。

ビジョナリー(Visionary)は、他の人には見えない道筋が見えることを誇りとする。創造的かつ独創的で、大きなビジョンを持っているが、希少性バイアスに陥る可能性があり、目の前にある明白な解決策ではなく、ユニークな解決策を求めることを好む。

上記のごく簡単な概要から、PSPのさまざまな組み合わせが異なる相互作用をすることがわかるだろう。たとえば、思想家と冒険家は互いの認知バイアスに対し、効果的に対抗できるかもしれないが、問題解決の進め方において摩擦が生じることもある。一方、ビジョナリーと刑事のチームは、一緒に仕事がしやすいかもしれないが、互いの弱点を増幅させることがある。ビジョナリーは、新しいアイデアを思いつくのは得意だが、そのアイデアを吟味するのに苦労する。刑事は、自分の仮定を検証するために多くの証拠を見つけるかもしれないが、データを手に入れると、他のステークホルダーを関与させずに前に進む傾向がある。

エブリンと彼女のチームは、専門能力開発のワークショップを終えたばかりで、それぞれ自分のPSPを特定していた。エブリンは、自分が冒険家であり、アイデアにあふれ、常に先を読み、すぐに前進する用意ができていることを知っていた。一方、コスタリカに集まった面々のうちCFOは思想家であり、リテール部門のリーダーと新規事業開発チーフ、そしてコスタリカの事業責任者の3人は全員、傾聴者だったことを思い出した。思慮深く協働的なチームだったが、比較的スピードが遅く、さまざまな選択肢とその意味を探り、コンセンサス重視の決定に至る時間を必要としていた。

エブリンが最初に発言し、自分が好ましいと思う決定を下してチームの確認を求めるというパターンにチームは陥っていた。冒険者は抵抗なく物事を始められる。彼女は、他のメンバーも冒険者のように、自分のスキルセットに基づいて素早く行動することを期待していた。しかし、チームがデータを掘り下げる必要のある状況に直面した時、エブリンは直感的な反応をした一方で、スピードは遅いものの秩序立った意思決定をするチーム内の思想家や傾倒者と対立することになった。

エブリンは自分の行動を変えることにした。チームの協力する力を高めるために、最初に発言することを控えたのである。その結果、彼女が尋ねようとも思わなかった財務上の疑問が、チームから上がった。

エブリンは、最初はいら立ち、チームに問題があると考えていた。時間をかけて問題解決者プロファイルの知識を利用することで、自身が感じていた緊張の原因を特定することができ、自分の意思決定アプローチが効果的な問題解決の障害になっていたことを認識した。そこで、問題に対する見方を変えることで、摩擦を減らし、チームメンバー全員が積極的に貢献できる方法で意思決定をできるようにした。最終的に、会社は新たな買収を進めず、コスタリカ支社の財務基盤をより強固にすることに集中することにした。

エブリンは、冒険家の特性を買われてこの仕事に就いた。その特性は、物事を成し遂げる人物としての彼女の個性の一部だ。しかし彼女は、経営幹部チームが自分とまったく同じように行動すると期待するのをやめる必要があった。一歩引いて、チームの弱みではなく強みを見ることで、彼女はより効果的に会社を率いることができるようになった。

多くのマネジャーが似たような課題に直面する。エブリンのようにリフレーミングすることで、チームも、仕事上の人間関係も、リーダーシップも改善することができる。PSPを使ってさまざまな意思決定パターンを理解することは、あなた自身の意思決定アプローチを知るだけでなく、チームの意思決定における多様なスタイルやダイナミクスを知るのにも役立つ。この基礎があれば、自分のアプローチを調整し、より効果的に他者と協力して、より良く、大きな決断を下すことができる

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