【特集】2023年の最前線を走り抜いたITベンダー&コンサルに訊く──今年の動向と2024年の展望

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 新型コロナウイルス感染症が“5類感染症”に移行されたことで、「アフターコロナ」に向けた働き方や企業として進むべき道が模索された2023年。一方で、「生成AI」の爆発的な広がりにより、企業ITにも大きな変化が訪れた1年と言っていいでしょう。また、これまで取り組んできたDXやデータドリブン、セキュリティなどにおいても成果がみられた年でした。では、変革を推し進める企業を支えるITベンダーとコンサルティングファームは、この1年間をどう振り返るのか。そして、2024年をどのように見据えているのかを注目の13社に訊きました。

以下、13社の企業および企業代表者にコメントをいただきました。
アクセンチュア/SAPジャパン/NTTデータグループ/キンドリルジャパン/グーグル・クラウド・ジャパン/Snowflake/タニウム/データブリックス・ジャパン/デロイト トーマツ コンサルティング/日本オラクル/PwCコンサルティング/マクニカ/ラック(五十音順)

地方拠点の拡充に注力した1年
(アクセンチュア)

2023年を振り返って

2023年は、お客様企業・団体の全社変革に向けて、デジタル技術を最大限に活用したサービスをさらに強化させたことで、10年連続で2桁の成長を達成した年となりました。また、お客様の売上や収益などの財務的指標を向上させるサービスに加えて、顧客体験、従業員価値、インクルージョン&ダイバーシティ、サステナビリティの向上など、360°で企業価値を高めるサービスの拡大にも注力しました。

また、地方拠点の拡充にも注力した1年でした。2023年5月から7月にかけて、地域ならではの特色や強みを持つ企業、自治体、教育機関や人材との接点となり、デジタルを活用した新たなイノベーションを生み出す新たな拠点として前橋、名古屋、仙台に「アクセンチュア・アドバンスト・テクノロジー・センター(ATC)」を設立しました。4月にはアクセンチュア・インテリジェント・オペレーションセンター福岡がある拠点にATC福岡も開設するなど、国内拠点を中心としたサービス提供体制の強化や、自動化を前提とした次世代業務プロセスの構築にも取り組みました。

2024年の展望

2024年は、あらゆる業界における労働時間の約4割に大きな影響を及ぼすとされる生成AI技術のさらなる活用を進めます。既に当社の日本法人では、社内でセキュアに使える「Accenture Chat」を開発し、すべての社員が利用できる環境を整えています。

AIで出せる価値しか提供できないコンサルタントは早晩淘汰されてしまうでしょう。 AIの答えを待つのではなく、AIを「バディ」として、自らの能力を拡張させる存在にすることが肝要です。デジタルがさらに浸透することによって到来するデータ駆動型社会においては、データを経営から現場の最前線にまでシームレスにつなぐことが欠かせません。

アクセンチュアでは、絵空事のコンサルティングではなく、伴走型でお客様の成果にコミットしてまいります。

中堅中小企業に焦点を当て、クラウドERP導入を加速
(SAPジャパン)

2023年を振り返って

2023年、お客様の成功と変革を支援する年として、SAPジャパンとしての使命を果たしてきました。まず、中堅中小企業に焦点を当てた新たな取り組みを進め、その結果、クラウドERPソリューションの導入において顕著な成果を上げました。特に、「GROW with SAP」の立ち上げや「RISE with SAP」の進展により、クラウドERP導入が加速しました。これらの成果は、私たちの「Fit to Standard」や「クリーンコア」といった戦略がお客様に受け入れられたことが大きな要因です。

AI分野でも重要な進展がありました。SAP Business AIを中心としたAIエコシステムの拡大や、新たなAIアシスタント「Joule」、生成AI開発者向け機能「SAP Build Code」の発表など、技術的なイノベーションを推進しました。

私たちは、SAPのテクノロジーを活用して、日本の企業が抜本的に効率を上げ、革新的になることを支援しています。これにより、生産労働人口減少という社会課題への対応や生産性の劇的な向上に引き続き貢献していきたいと考えています。

SAP ジャパン
代表取締役社⻑
鈴木 洋史氏

1990年4月に日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。2000年8月にi2テクノロジーズ・ジャパン株式会社へ入社、2006年7月にJDAソフトウェア・ジャパン株式会社へ入社し、営業本部長を経て2010年2月より同社代表取締役社長に就任。2012年5月からはJDA Software Inc.のアジアパシフィック地域副社長を務め、日本を含むアジアパシフィック地域を統括。2013年4月に日本アイ・ビー・エム株式会社へ入社、理事・スマーター・コマース事業担当。2015年1月にSAPジャパン株式会社へバイスプレジデント・コンシューマー産業統括本部長として入社、2018年1月より常務執行役員インダストリー事業担当。2020年4月1日から現職。

2024年の展望

2024年は、真の意味でAI元年になると考えています。

経営に役立つAIの技術をデータも含めて提供できるようになるのがまさにこの1年だと考えています。SAPジャパンとしても、2023年に発表した製品のローカライズと施策の具体化に注力し、実際の経営においてAIの分析した結果が使えるようにするための基盤固めを加速します。そして、引き続きSAPクラウドソリューションによって、お客様のインテリジェントエンタープライズ化を支援していきます。

また、社会課題への取り組みと持続可能な企業変革の支援にも注力します。日本の生産労働人口減少などの課題に対応し、クラウドを活用しながらAIとの“協業”による効率化策を推進することで日本企業の競争力強化につながると考えています。さらに、サステナビリティを重視し、企業間取引の効率化や環境問題への取り組みを強化します。

最後に、我々のお客様が成功するためには、SAPジャパン自身も一人ひとりの生産性を上げる必要があると受け止めています。そのため、社内でもAIをはじめとする最新技術を取り入れ、実践し、お客様の先例となれるよう、取り組んでいきます。

機動性のある経営に向けグローバル経営体制をスタート
(NTTデータグループ)

2023年を振り返って

2023年は、NTTデータグループにとって大きな変化の年でした。7月には、持株会社体制に移行し、NTTデータの持株会社(株式会社NTTデータグループ)、国内事業会社(株式会社NTTデータ)、海外事業会社(NTT DATA, Inc.)の3社からなるグローバル経営体制がスタートしました。

本体制への移行は、事業規模の拡大にともない、変化のスピードが速いデジタル時代にふさわしい機動性のある経営を推進するために行ったものです。これにより、国内・海外各地域のニーズ、商習慣、法規制などを踏まえて、お客様やビジネスの現場に近いところで、スピーディーに様々な意思決定ができる体制となりました。また、持株会社においては、グループの全体最適を図るため、グローバル戦略の策定、グローバルシナジーの創出、グローバルガバナンスを強化しています。

NTTデータグループ
代表取締役社長兼CEO
本間 洋氏

1980年 日本電信電話公社(現 日本電信電話株式会社)入社。1988年より、エヌ・ティ・ティ・データ通信株式会社(現 株式会社NTTデータグループ)。金融分野での企画・開発・スタッフを経て、金融分野・コーポレート部門・法人分野の組織長を歴任。2016年 代表取締役副社長執行役員。強み・価値にこだわった経営を推進し、法人・ソリューション分野のビジネス拡大に大きく貢献。2018年 代表取締役社長。2023年7月より現職。

2024年の展望

2024年は、中期経営計画を着実に進めながら、日本・海外含めたグローバルにおいて、コンサルティングからアプリケーション、データセンターやネットワークに至る広範なソリューションをフルスタックで提供することにより、さらなるビジネスの拡大を目指します。持株会社、国内事業会社、海外事業会社の3社それぞれが強みを磨き、グローバルレベルのベストプラクティスを数多く作り出すとともに強連携していくことで競争優位性を高め、お客様や社会全体に向けた提供価値を最大化していきます。

これらを実現するために、持株会社では、グローバル戦略の策定、グローバルシナジーの創出、グローバルガバナンスを引き続き強化していきます。特に、技術の領域はグローバル共通言語であり、グループ全体で足並みを揃えて戦略的に取り組んでいきます。国内では、社内ベンチャー制度の復活や人事制度改革、社内外のパーセプションチェンジを目指した取り組みなどの変革のアクションを推進し、海外においては2024年度から新たなオペレーティングモデルに移行します。リージョナルユニットとグローバルユニットの両機能が始動し、海外事業の構造転換を進めていきます。

ITインフラを「未来の社会基盤」と捉え、より大胆な決断を
(キンドリルジャパン)

2023年を振り返って

高品質なサービスで安心・安全・安定にお客様のシステムを稼働させることをご支援するとともに、キンドリルジャパン・グループとして新しい価値を作っていくという「進化」に取り組んだ1年でした。

ミッションクリティカルなシステムを長年にわたり支えてきたキンドリルは、豊富な実績によるスキルや知見と、国内に加えてグローバルでの経験を活用し、お客様を支援しています。データセンターやメインフレームのモダナイゼーションを進めるにあたり、今後数年間で1億ドルを投資することを発表し、日本のお客様や日本社会への貢献を明確にしました。

キンドリルでは「人」を価値の中心と考え、The Kyndryl Wayと称したカルチャーの醸成やID&Eの推進に向けて意欲的に活動しました。また、グローバルで9万人規模の社員が利用する基幹システムをシンプルで標準化されたシステムに刷新し、ここで得た知見をお客様のご支援に役立てていきます。

キンドリルジャパン
代表取締役社長
上坂 貴志氏

キンドリルのビジネス開始から日本のプレジデントとしてリーダーシップを発揮。安心・安全・安定が求められる金融サービス事業向けシステムのプロジェクトマネジメントの豊富な経験に加えて、中国・上海のグローバル・デリバリー・センターでの駐在経験やIBMで培ったグローバルなビジネススキルを持つ。1994年4月日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。一般社団法人プロジェクトマネジメント学会 副会長。

2024年の展望

日本社会が成長し続けるためには、意欲的に大胆な決断を行い、日本の未来を作っていくべきと考えます。大胆な決断とは、決してこれまで検討もしていなかったことを決めることではなく、いつかやるべきだと既に検討していることを実行に移すことだと考えています。加速するDXの根幹はITインフラであり、サステナブルな成長を目指す鍵です。2024年は今こそもっと大胆に踏み込んで、ITインフラを未来の社会基盤と捉えた変革をご支援し、お客様そして日本の未来に価値を届けられるよう、決断と実行力で前進していきます。

システム運用は共創が重要ですが、その一員としてリーダーシップを発揮し、自動化・高度化と活気ある魅力的な環境になるよう努めます。また、Kyndryl Bridge、Kyndryl Consult、Kyndryl Vitalの強化、アライアンス戦略の拡充、社会貢献にも注力し、キンドリルが掲げる「社会成長の生命線」を目指します。

マルチモーダルなAIモデルで生成AI活用を促進
(グーグル・クラウド・ジャパン)

2023年を振り返って

2023年は世界中で生成AIブームが巻き起こりました。Googleも5月に新たな大規模言語モデルの「PaLM 2」を、そして12月にはこれまでで最大かつ、最も高性能、かつフレキシブルなAIモデルの「Gemini」を発表しました。これにより、マルチモーダルと呼ばれる言語や画像、音声などと複数のデータ種別を同時に取り扱う事が可能になります。

2023年は、生成AIを「触ってみた」方が多くいる一方で、課題が見つかった年だったかと思います。たとえば、生成AI活用によって増加する非構造化データの効率的な活用方法や、間違った情報が生成されるハルシネーションを防ぐ方法についてもっと知りたいというお声を沢山頂いています。

Google Cloudは、お客様がこれらの課題を解決しながら生成AIを活用したアプリケーションを開発できるよう、長年検索で培った技術と経験をもとに様々な製品、ツールを提供し、パートナー様と共にお客様を支援してきました。

グーグル・クラウド・ジャパン
日本代表
平手 智行氏

1961年生まれ。87年、日本IBMにて、アジア太平洋地区経営企画、米IBM戦略部門を経て、2006年、日本IBM執行役員と米IBMバイスプレジデントに就任。国内では通信、メディア、流通、公益などの業種別事業やサービス事業を担当。11年末に退職し、米ベライゾンのエリアバイスプレジデント、ベライゾンジャパン社長に転身。15年7月、米デル バイスプレジデント兼デル代表取締役社長に就任。19年8月、デルとEMCジャパンの代表取締役会長に。同11月から現職。

2024年の展望

2023年にGoogle Cloudが発表した様々な製品やツールを、お客様が実際に活用してアプリケーション開発し、自社のビジネス変革につなげていくことを支援します。たとえば、ハルシネーションを避ける対策として、お客様が指定する、信頼できる情報ソースから回答を参照する「グラウンディング」という技術を推進していきます。

また、生成AIを活用していくために、様々なアプリケーションや環境からのデータがすべてクラウド上にある、クラウドネイティブ環境の構築や、構造化データと非構造化データを組み合わせて分析できる、BigQueryを活用した「AIレイクハウス」の重要性が注目されると考えています。昨年公開した、AIが様々なアシスタントを行う「Duet AI」が今後Google Cloudのすべての製品に順次導入されるため、AIの民主化は劇的に加速するでしょう。

Google Cloudは、2024年も大胆かつ責任あるAIの基本理念を守りながら、生成AI推進に向けて、引き続き新たな技術、製品を提供してまいります。

AI時代、高まるデータ戦略のカギは「データクラウド」
(Snowflake)

2023年を振り返って

2023年は、大規模言語モデルに代表される生成AIの登場によって変革の年となりました。テクノロジー各社は様々な言語モデルをリリースして新しい使い方を提案する一方、企業側もこれらの言語モデルを社内の生産性向上のため、日常業務の効率化や、顧客向けサービスに組み込み、満足度の向上を図るなど様々な動きが見られました。

Snowflakeはデータクラウドを推進し、企業のデータ基盤としてそのDX戦略を支えてまいりましたが、こうした技術動向をふまえ、コンテナサービスの実装により生成AIなど高度な技術をSnowflake上で直接動かせるようにしたり、Streamlit社の買収によりPythonを使ったアプリケーション開発機能もリリースしたりと、Snowflake上で一元管理されたデータの更なる活用を促進させる機能拡張が進んだ1年でした。

また、Snowflake マーケットプレイスで提供されるデータやアプリケーションも増加しており、企業による外部データの取り込みにより、これまでは実現できなかった解像度でデータ分析が進みました。

こうした取り組みは、お客様を中心に据えた「Mission Alliment(お客様のミッションとビジネスの成長と共に)」というSnowflakeのコア戦略に基づく行動であり、今後も続けて参ります。

Snowflake
社長執行役員
東條 英俊氏

2019年9月、Snowflakeに第1号社員として入社し、国内ビジネスの立ち上げと成長を牽引。Snowflakeのデータクラウド推進により、4年間で500社以上のお客様のDX推進とデータドリブン経営を支援。前職はGoogle Cloud、日・米マイクロソフトなどで営業、マーケティング、アライアンスを歴任。2013年米ワシントン大学でMBA(経営学修士)を取得。

2024年の展望

引き続き生成AIを中心としたAIの活用が企業内で大きく進み、生産性の向上や省人化に寄与すると考えられます。確かな成果を上げるためにも、自社データや信頼できる外部データに基づいた言語モデルのチューニングやカスタマイズが重要ですが、同時に安心安全に利用するためにセキュリティの担保、データガバナンスへの取り組みは急務と言えるでしょう。これは堅牢なインフラ基盤があって実現できることです。「AI戦略」を進めるためにも土台となる「データ戦略」を見直し、サイロ化を解消しデータを一元管理できるデータ基盤の構築を目指すお客様をSnowflakeは全面的に支援していきます。

一旦整備されたデータ基盤の上では、生成AIの実装や、関連会社とのデータ共有、データによる収益化など幅広い施策が可能になります。我々Snowflakeは、引き続きお客様のミッションに寄り添い、ビジネス価値を最大化する施策を、スピード・コスト、セキュリティを犠牲にすることなく支援していきます。

多くの企業が「サイバーハイジーンの徹底」を重視
(タニウム)

2023年を振り返って

5月にコロナが第5類に移行し、多くの企業で「オフィスに人をどのように戻すのか」「ハイブリットワークで社員の生産性をどう確保するのか」また「そのIT環境のセキュリティの担保は?」といった議論が多くあった1年だったかと思います。

サイバー攻撃に目を向けると、当社が選考会メンバーと参画している2023年度の「IPA 10大脅威」でもランサムウェア感染が一位でした。名古屋港の事案のように犯罪者がシステムの脆弱性を悪用し、実際に業務システムを停止に追い込むようなケースは増加の一途を辿っています。当社が創業当初から提唱している「見えない物は守れない」「サイバーハイジーンの徹底」が多くの企業/自治体で検討、導入された1年でもありました。

また、日本国内でのタニウム導入端末も300万台を超え、多くのお客様がSaaS型での導入にシフトした年でもありました。海外からの観光客も戻ってきている昨今、口を揃えて「日本はとても衛生的で綺麗な国だった」と帰っていかれます。サイバーの世界でも日本が最も衛生的な国になる日が近いと感じております。

タニウム
アジア太平洋日本地域プレジデント 兼 日本法人代表執行役社長
古市 力氏

アジア太平洋日本地域のプレジデントとして、タニウムの成長をリード。2017年に北アジアのVPとしてタニウムに入社し、以来日本と韓国のビジネスの成長をけん引。タニウム入社前は、VMwareのバイスプレジデントを務め、グローバルアカウントと戦略的アカウントの営業組織を一から作り上げた。また、BrocadeやComputer Associatesで複数の営業管理職を歴任。また、中央大学理工学部情報システム工学の学士を取得し、シンガポール国立大学でエグゼクティブプログラム、戦略的マーケティングおよびアカウンティングの資格を取得している。

2024年の展望

多くの組織が2025年の崖に落ちない為に、残り続けるレガシーシステムがもたらす様々な課題に取り組みつつ、生成AIなどを活用したDX推進といったITイノベーションとの両立をIT部門は担っていくことになるかと思います。これらの両立に向けて、“脱オンプレミス”の戦略に舵取りを変える組織がより一層増加することが見込まれ、ITインフラはクラウド側(ゼロトラスト)とエンドポイント側の二つに大きく集約されると考えられます。

既にコロナ禍の影響により、クラウド側の実装は前進しつつありますが、エンドポイント側はいまだ手付かずの企業も多いのが現状であり、これらの実態を打開する上で、グローバルでは動的なエンドポイント管理が政府関連機関から強く示唆されていきます。

タニウムも、オートノマス(自立型)エンドポイントマネージメントの新ビジョンを発表し、お客様のエンドポイント管理の効率化や社員の生産性を向上するための新規製品群(DEX/SBOM/ベンチマークなど)の浸透が大きなチャレンジになる年と考えています。

「AIの民主化」へ大きく前進した年
(データブリックス・ジャパン)

2023年を振り返って

2023年は、AI技術の進歩とともに、人々のAIに対する関心と意識に変革があった画期的な年でした。Databricksにとっては、独自の大規模言語モデル(LLM)を開発するMosaicML社を買収したことで、「AIの民主化を推進する」というビジョンの実現へ大きく前進した年となりました。今後、両社の強みを融合させていけば、あらゆる企業が独自データを使って安全にコスト効率よく、LLMを含む生成AIモデルを構築・所有・保護できるようになるでしょう。

また、11月に発表した「データ・インテリジェンス・プラットフォーム」は、従来のデータ・プラットフォームに革命をもたらすものです。データレイクハウスの上に構築され統合化されたプラットフォームは、生成AI技術を活用して運用・管理といった課題への対処をよりシンプルかつ容易にし、企業の業務効率やコスト削減に貢献できると考えています。

当社は引き続き、品質、スピード、アジャイル性を備えた次世代のデータ・AIアプリケーションの開発を通じて、データとAIを活用する企業を支援し、AIの民主化を推進していきます。

データブリックス・ジャパン
代表取締役社長
笹 俊文氏

2023年1月、データブリックス・ジャパン 代表取締役社長に就任。エンタープライズテクノロジー領域にて、20年超のリーダーシップの経験を有する。データブリックス入社以前は、セールスフォース・ジャパンに10年以上勤務し、直近ではデジタルマーケティングビジネスユニットの専務執行役員兼ジェネラルマネージャーを務めた。また、インフォアジャパン、JD Edwards(現・日本オラクル)、日本アリバ(現・SAP Ariba)などのテクノロジー企業でも重役を歴任した経験を有する。

2024年の展望

日本企業のAIへの投資は増加の一途を辿り、2024年以降は日本語を理解できるAIモデルの進化を含め、生成AIの活用事例がより多くなると予想しています。日本企業は、LLMや生成AIの活用方法に加え、どのようなモデルが必要で、どのように展開するべきかの経営判断を迫られることになるでしょう。

生成AIは「ローコード/ノーコード」による開発の動きが活発になり、Databricksの「データ・インテリジェンス・プラットフォーム」のような統合プラットフォームの必要性が高まると見ています。データ・プラットフォームに生成AIが組み込まれれば、コーディング能力を持たない企業でも、自社が持つデータに新たな価値を見出すことができるようになります。

AI利活用の鍵となるのが「AIのガバナンス」です。今年は、世界的にAIのコンプライアンスや説明責任、透明性などに関する関心が高まり、議論が始まりました。今後、AIの効果的かつ安全な利用法に関する規制や政策が急がれることになるでしょう。

「エンドツーエンド」での実装力強化で飛躍の1年に
(デロイト トーマツ コンサルティング)

2023年を振り返って

2023年はパンデミックの終息、国際関係の変化や技術競争などにより、社会・ビジネス環境に大きな変化がありました。特に生成AIの急速な進展は、企業に新たな機会をもたらすだけではなく、我々コンサルティング会社も含め、価値創出の在り方の再考を迫るものとなっています。

不確実性が高まる中で企業の課題は複雑化し、テクノロジーの組み合わせによる価値創出が競争の源泉になりつつあります。企業のニーズは、データやソリューション活用による高度化・効率化に加えてクラウド、サイバーセキュリティ、サステナビリティなどをキーワードにしたものが増えました。また生成AIは、リスクを適切に管理しながら創造や判断を支援するツールとして、いかに使いこなすかを模索する取り組みが多く見られました。

デロイトも先進技術研究、テクノロジーのビジネス・社会実装、また導入や保守運用も含めたエンドツーエンドでの実装力強化に取り組み、飛躍した1年になりました。

デロイト トーマツ コンサルティング
執行役員(Offeringsリード)
信國 泰氏

全社的な組織再編・業務改革や、経営管理、営業改革などバリューチェーン全体に及ぶ経験を有し、システム導入まで含めたフルライフサイクルでのプロジェクトに強みを持つ。現在は各種サービス全般を統括するリーダーとしてニアショア・オフショア活用も推進する。またスポーツ関連事業や教育機関との連携、デジタル人材育成など社会課題解決に関わる活動もリードする。

2024年の展望

2024年も不確実性が高い状況は続き、テクノロジーによるイノベーションと差別化、自動化と効率化がますます進むと考えます。特に生成AIは、その活用を前提にした社内オペレーション構築や外部向けサービス開発が加速すると考えます。また、これまで検討が進んできたサステナビリティ関連のIT投資も、AIやデータ基盤を中心に本格化の元年になるのではないでしょうか。

企業は先進技術を活用した新たな企業運営の在り方を作り、それを専門性の高い組織とエコシステムを形成しながら実行していくことが必要になっています。そして我々には、それをロングテールでサポートしていくことが、より一層求められているのだと考えています。そういった変化に合わせ、デロイトはクロスインダストリー、クロスオファリングに加え、フィナンシャルアドバイザリー、リスクアドバイザリーや税務も含めたAll Deloitteをこれまで以上に強化する施策を講じ、企業の課題解決を支援してまいります。

モダナイゼーションを推進し、最高水準のエンタープライズAIを提供へ
(日本オラクル)

2023年を振り返って

日本企業が直面するITコスト構造の変革とデジタル化による競争力の強化のため、企業はトランスフォーメーション実現をますます加速させていく必要があり、当社はそれを支えるソリューションを提供してきました。業界を代表する多くの新たな企業がミッション・クリティカル・システムへの「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」採用や本格稼働を開始した年でもあります。間接業務の省人化・自動化、人的資本経営を推進する「Oracle Fusion Cloud Applications」も多くのお客様に採用いただき、稼働を支援しました。

また、生成AIが広く注目を集めた年でもあり、オラクルも企業向け生成AIを開発するCohereと提携するなど、「Oracle Cloud」全体にわたる生成AIサービスを発表しました。オラクルでは、エンタープライズ生成AIの需要拡大を見据え、IaaS、PaaS、SaaSにおいて、AI/生成AIへの取り組みを進めてきました。圧倒的な高コスト・パフォーマンスを発揮するAIインフラストラクチャ、エンタープライズ向け生成AIサービス、最新のAI技術を組み込んだクラウドネイティブSaaSアプリケーションを提供しています。

日本オラクル
取締役 執行役 社長
三澤 智光氏

1964年4月生まれ。横浜国立大学卒。87年、富士通に入社。95年、日本オラクルに入社。専務執行役員テクノロジー製品事業統括本部長、副社長執行役員データベース事業統括、執行役副社長クラウド・テクノロジー事業統括などを歴任。2016年、日本IBMに移籍。取締役専務執行役員IBMクラウド事業本部長などを務める。20年12月に日本オラクル執行役社長に就任。21年8月より取締役を兼務。

2024年の展望

新しいビジネスモデルや環境の変化、セキュリティリスクへの対応、エンタープライズITの技術進化を主導すると考えられる生成AIの活用のためには、レガシー・システムのバージョンアップが日本企業にとって喫緊の課題です。

2024年度の日本オラクルの事業戦略は「日本のためのクラウドを提供」と「お客様のためのAIを推進」の2つの方針を掲げています。引き続き、日本市場においてレガシー・システムのモダナイゼーションを推進し、エンタープライズ向けの最高水準のセキュリティ、パフォーマンス、効率性を持つAIを提供します。そして、ガバメントクラウドへの取り組みについても、デジタル庁、自治体、パートナーと連携し、「Oracle Cloud」の提供のみならず人材育成にも注力していく予定です。

これらにより、日本の企業のレジリエンス向上を支援し、安定的で信頼性の高い社会公共基盤の構築に貢献する「TRUSTED TECHNOLOGY ADVISOR」としての役割を果たしていきます。

グローバルの新経営ビジョンに向け改革を推進
(PwCコンサルティング)

2023年を振り返って

コロナ禍が落ち着きを見せる一方、世界で発生する紛争、景気の先行き不安、消費者の価値観の変容、サステナビリティ経営への要請、生成AIの台頭など、企業の経営環境は目まぐるしく、かつ猛スピードで変化を続けています。

企業は、自社の方向性を明確に定め、それを今まで以上のスピードで具体的な戦略やオペレーションなどに落とし込んでいくことが求められています。こうした変化に対応して、PwCはグローバルの新たな経営ビジョン「The New Equation」を策定しました。多くの企業が求めているのは「Trust」(信頼)、「Sustained Outcomes」(持続的な成長)の2つです。この2つの実現を支援するため、我々自身の組織やサービスを抜本的に見直そうというのが狙いです。

日本のPwCコンサルティングでは、「The New Equation」を定める以前から、自らの変革に関する議論を始め、2021年7月に2023年までの3ヵ年計画を策定し、自らの変革を推進してきました。

この結果、組織やサービスの再編と、クライアントのために最適なサービスをより速く提供できる体制を作り上げ、想定を超える大きな成果をとげることができました。

PwCコンサルティング
Technology & Digital Consulting リーダー
上級執行役員
パートナー
荒井 慎吾氏

長年に渡り、デジタルやIT技術を軸とした企業変革の戦略策定やアーキテクチャ策定からその実現まで、広範な業界の企業に対しEnd-to-Endでの支援を行っている。特に、デジタル戦略、デジタルトランスフォーメーション、新事業、新技術戦略や、企業買収にともなうテクノロジーデューデリジェンスからPMIに関わる支援経験が豊富。

2024年の展望

2024年は、PwCはグローバルの新たな経営ビジョン「The New Equation」を引き続き強力に推進していきます。

クライアントが抱える真の課題は、1つの業界知見や、1つのソリューション、国内だけの視点ではもはや解決できません。こうした現状認識のもと、PwCコンサルティングでは様々な業界知見、ソリューション、グローバルな視点を組み合わせ、組織を横断して意識的にインダストリーやソリューションをつなぐストーリーを作り、Integrated OfferingやIntegrated Solutionとしてまとめています。これらを活用しながら、PwCの専門家が有機的につながりながら、機動力やスピードをもってクライアント企業の変革を支援していきます。

当社は、これまでも様々な先端技術を企業の競争優位の確立や社会実装のために活用してきました。現在注目されている生成AIについては、当社が掲げているAIを活用した経営である「AI経営」をより推進していきます。

また、自分たちだけではなく、大学をはじめ様々な専門機関と協力して多角的な視点から議論や分析を深めていきます。今後は、あらゆる場面で必要に応じて産官学との連携を一層進めつつ、クライアントと一緒になって大きな企業の変革や未来づくりを実現していきたいと思います。

官民を挙げて「CPS」活用サービスを社会実装へ
(マクニカ)

2023年を振り返って

2023年は昨年に引き続き、当社の掲げる6つの新事業テーマに基づき、NEXTAGEとの資本業務提携による植物工場事業への参入、また仏GAUSSIN(ゴーサン)とのゼロ・エミッション自律型モビリティ開発の為の新会社Gaussin Macnica Mobility設立など、CPS(サイバーフィジカルシステム)の社会実装に向けた展開をさらに加速してまいりました。

合わせて、CPSの社会実装の重要性がますます高まっているサイバーセキュリティ分野においても、OTセキュリティ分野でのセキュリティインテリジェンスに関する世界的な企業であるDragosとの契約を行い、安全、安心なDXによる社会課題の解決、持続可能な社会実現に向けての取り組みを着実に進めてまいりました。

マクニカ
代表取締役社長
原 一将氏

1995年、マクニカに入社。世界中の最先端半導体を日本市場に展開するプロダクトセールスを経験したのち、2011年、半導体カンパニーのプレジデントに就任、同時期に車載営業本部長を兼任。2018年にイノベーション戦略事業本部長を務めたのち、2019年に代表取締役社長就任。2021年にネットワーク・セキュリティ事業を担う子会社のマクニカネットワークス株式会社を吸収合併し、事業領域を多岐に広げながらサービス・ソリューションカンパニー実現に向け、グループを牽引している。

2024年の展望

2024年はインバウンド需要の回復に象徴される、人の移動によるさらなる経済活動の活性化が期待される一方で、2024年問題などで顕在化する人口減社会への対応を待ったなしで迫られる年になると考えています。スマートモビリティ、スマートマニュファクチャリングといったCPSを活用したサービスの高度化・効率化が、社会課題を解決する一丁目一番地となり、官民を挙げた社会実装の実現が急務です。

当社は、これまで取り組んできた独自のサービスソリューションの開発および国内外の先端テクノロジー企業とのアライアンスを通じ、実装にこだわり、CPSソリューションとそのセキュリティを確保するためのテクノロジーの提供をすることで持続可能な社会、企業環境の実現に貢献してまいります。

サプライチェーンの強靭化により一層注力した年
(ラック)

2023年を振り返って

2023年は、経済安全保障を基軸にサプライチェーンのありさまが経済活動の維持と発展に直結し、国の発展に欠かせないもの、国力を支えるものであるとの認識が高まりました。その背景のもと、一般企業においてもこの観点での取り組みに拍車がかかるものとしてとらえ、サプライチェーンの強靭化を念頭にお客様の成長を支え、国の発展に寄与できるように事業推進を行ってまいりました。

また、社会のデジタル化の浸透にともない、金融犯罪の蔓延を阻止すべくAIを活用した金融犯罪対策にも本腰を入れてきました。

ラック
代表取締役社長
西本 逸郎氏

サイバーセキュリティ対策のリーディング企業「株式会社ラック」代表取締役社長。プログラマーとして数多くのシステム開発や企画を担当。2000年より、サイバーセキュリティ分野にて新たな脅威への研究や対策に邁進。わかりやすさをモットーに、講演や新聞・雑誌などへの寄稿、テレビやラジオなどでコメントなど多数実施。2017年3月から現職。福岡県出身。

2024年の展望

2023年には、ランサムウェア攻撃によってデータを失った「組織の記憶喪失」と言える事象によって、事業停止という恐怖を体験しました。また、年末には内部不正による大量個人情報持ち出しが原因と推測される「組織的記憶喪失」とも言える苦い経験をしました。2024年は、この2つの「組織的記憶喪失」に対して、セキュリティ企業として改めてしっかり対応できるように推進してまいります。

さらに、国家が背後にいるとされるAPT(標的型攻撃:Advanced Persistent Threat)が発展して起きると考えられる“シン・APT(AI捕食型攻撃:AI-Predator Threat)”や、より巧妙化する“金融犯罪やフェイク”をはじめとする“偽情報”などによる脅威への態勢を構築してまいります。

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