だから事業目標を達成できない――適切な目標設定に不足している情報とは

事業目標を立てたものの成果を得られないと感じたとき、事業目標の何を再検討する必要があるのか。事業目標を設定する上で把握すべき情報について、専門家たちの見解は。

いまさら聞けない、事業目標の役割とは?

 事業目標とは、組織が一定期間内に獲得しようとする成果を明示したものだ。目標の具体的な到達点と期限を設け、その達成度合いを評価する。

「事業目標は各事業の足並みをそろえるために存在する」。こう語るのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院でプリンシパルリサーチサイエンティストを務めるジョージ・ウェスターマン氏だ。同氏は米国若年層の就労支援を目的とする団体Global Opportunity Initiative(GOF)の発足メンバーでもある。最高情報責任者(CIO)やIT部門の経営幹部を対象とした年次イベント「MIT Sloan CIO Symposium」では共同議長を務め、ITを革新的な方法で導入して自社に大きな事業価値をもたらしたCIOを表彰する「MIT Sloan CIO Leadership Awards」のモデレーターも務めている。

事業目標を適切に設定するに当たっては、まずミッションやビジョンを持つことが重要だ。ミッションやビジョンを具現化し、顧客や市場にいかに価値をもたらすかを示すのが行動指針(ミッションステートメント)だ。

「ビジョンとは、企業の将来像だ」。こう語るのは、調査会社Gartnerでディスティングイッシュトバイスプレジデントアナリストを務めるアービング・タイラー氏だ。同氏によると、一般的な企業では経営層がビジョンを策定して全社に伝達し、マネジャー層がビジョンの実現に向けて事業目標を定める。

コンサルティング企業UST GlobalでCTO(最高技術責任者)兼データサービス責任者を務めるニランジャン・ラムサンダー氏は、「事業目標は具体的で現実的なものであるべきだ」と語る。

コンサルティング企業/国際会計事務所KPMGでアドバイザリー部門のナショナルマネージングプリンシパルを務めるアーテフ・ゼイム氏は、事業目標を「自社の方向性を定めるために導入する多層構造の一部」だと表現する。「どういうビジネスなのか、何をしようとしているのかを洗い出す。その次に事業目標を定め、進捗(しんちょく)や達成度合いを計測するための手法を決めることで、目標の実現をより現実的なものにする必要がある」とゼイム氏は主張する。

大切なのは「具体的な目標とスケジュール」

事業目標は幾つ掲げてもよい。企業全体の目標だけでなく、部門ごとの目標も設定してよい。短期や中期、長期に分けても構わない。

「ただしどのような事業目標であっても、具体的な目標と目標達成までの具体的なスケジュールを明示する必要がある」。こう語るのは、IT調査会社Info-Tech Research Groupのインダストリープラクティスでシニアリサーチアドバイザーを務めるジェニファー・ジョーンズ氏だ。例えば「今後3年間で製造部門を20%成長させる」というのは効果的かつ具体性がある事業目標だ。

事業目標には「企業が何を達成したいのか」を書くが、「それをどのように達成するか」までは書かない。事業目標の達成に向けたアクションを具体的に記載するのは、事業計画だ。

企業によっては、事業目標とOKR(目標と成果指標:Objectives and Key Results)を別物だと見なしていることに注意が必要だ。こうした企業はプロジェクトの中間目標を意味する「マイルストーン」を事業目標と見なし、事業目標の達成までのプロセスをOKRと見なしている場合がある。


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