2025年のIT市場はAIの話題で持ちきりだった印象だが、そのAIの活用を支える存在として改めて注目しておきたいのが、クラウドの動きだ。これからは「AI駆動型クラウド」とも呼ばれそうな最新のコンピューティングの活用における成功の要件について、Gartnerの話から探ってみる。 これから企業に求められる「スタイルチェンジ」 「AIの活用が広がるにつれ、クラウドの捉え方も変化しつつある」 ガートナージャパン ディスティングイッシュトバイスプレジデントでアナリストの亦賀忠明氏 こう語るのは、Gartnerの日本法人であるガートナージャパンでディスティングイッシュトバイスプレジデントおよびアナリストを務める亦賀忠明氏だ。同社が12月2~4日に都内ホテルで開いた「ガートナーIT インフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」でクラウドとAIの最新動向をテーマにした講演で、こう切り出した。アナリストとしてクラウド分野を長年見てきた同氏は、今のクラウドの動きをどう捉えているのか。また、変化しつつあるクラウドをユーザーが活用する上での成功の要件とはどんなものか。 同氏はまず、クラウドの捉え方の変化について、図1を示しながら次のように説明した。 (図1)クラウドの捉え方の変化(出典:「ガートナーIT インフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」亦賀氏の講演資料) 「2020年ごろまではオンプレミスからクラウドへの移行の動きが目立っていたが、それ以降はハイブリッドモデルをはじめとしてクラウドがさまざまな形態で利用されるようになってきた。そして、AIの台頭とともにクラウドもこれからは『AI駆動型クラウド』としての役割を担っていくことになるだろう。従って、私たちもクラウドの捉え方をそのようにアップデートする必要がある」 「AI駆動型クラウド」という言葉が広く使われるようになるかどうかは分からないが、大量のデータを扱うAIにとって、クラウドはその実行基盤として欠かせない存在となっていくだろう。 次に、図2を取り上げておこう。図2のグラフは同社が定期的に調査している日本企業のクラウドの形態別導入状況を示したもので、2025年の最新データが入った結果を公表したのは、これが初めてだ。 (図2)日本企業のクラウドの形態別導入状況(出典:「ガートナーIT インフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」亦賀氏の講演資料) このグラフについては日本企業のクラウド普及率の目安とも見られているので、直近の普及率として「SaaSは36%」「IaaS・PaaSは22~24%」といったところを把握しておくのがよいだろう。亦賀氏はこのグラフから「クラウドは着実に導入されている」と述べていたが、普及率としてもう少し高いイメージを持っている向きも少なくないのではないか。ただ、これからAI駆動型クラウドとしての役割を担っていくので、加速度がついていくものとみられる。 こうした普及率の話の一方で、亦賀氏はかねて「クラウドからオンプレミスへ回帰するという現象はあるのか」との質問をよく受けてきたという。これに対しては次のように答えているそうだ。 「そうした現象は見られない。オンプレミスかクラウドかを問うのはもはや過去の話だ。重要なことは『スタイルチェンジ』ができるかどうかだ。スタイルチェンジができなければ、オンプレミスだろうがクラウドだろうが、それほどの差はない」 ここで言う「スタイルチェンジ」は、「企業や個人が持つ仕事のやり方や考え方、リーダーシップの在り方そのものを変える必要がある」ことを指す。すなわち、「経営スタイルのチェンジ」を意味していると捉えていいだろう。 ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料) Original Post>
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Gartner、2026年に向けた企業進化の鍵となる「4つのマインドセット」を発表
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「Windows 10」のサポートが2025年に終了するため、ユーザーは「Windows 11」への移行や新しいPC購入、またはLinuxなどの代替OSを検討する必要がある。記事では、Linuxの適切なディストリビューションとしてKDE NeonやLinux Mintなど8種を紹介し、それぞれの利点を説明している。
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リーダーシップには、試練や困難の克服が不可欠であるという意見が多くのビジネスリーダーから示されている。成功するためには、レジリエンスを高め、流れに身を任せ、教訓を学び、意識的に対処し、正直に議論し、全力を尽くすことが重要である。
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SalesforceはAIエージェントと共に働く「エージェンティックエンタープライズ」を提唱し、Agentforceを活用して顧客対応を向上させている。Joe Inzerillo氏は、AIエージェントの導入で顧客満足度の向上や業務効率化が実現できると述べている。
AIブラウザーに潜む落とし穴–ガートナーが企業に利用停止を求める理由
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アクロニス・ジャパンは2026年のサイバーセキュリティ予測を発表し、AI駆動の攻撃や防御の拡大を示唆した。CEOのヤン=ヤープ・ヤーガー氏は、IT業界の変革とAIの影響を強調。TRUの杉山氏はAI自動攻撃やサプライチェーン攻撃の脅威を指摘し、防御策を提案した。
Colt、次世代ネットワークの競争力強化–大阪~福岡の長距離インフラ構築へ
ColtテクノロジーサービスはNextradeと連携し、量子セキュリティ、XaaS、エッジコンピューティングを重視した戦略を推進する。特に日本市場は魅力的で、データセンターや金融機関向けのネットワーク拡張などを計画し、既存顧客の支援を強化する。
