リクルートの「データ組織」を統括する阿部直之氏:多様性進化のためのデータマネジメントの方法論とは

リクルートのデータ組織は、複数の事業領域に対峙し、データの運用に関しての課題に取り組む。8月に開催された「デタマネFES」で、専門性マネジメントを統括する阿部氏は、実践的な見解を披露した。事業領域ごとのデータ管理コンフリクトの解決のために、「トップアップ」、「ベースアップ」、「ボトムキープ」の3つのアプローチを組み合わせている。

データドリブンな企業に変革するための3つの教訓

Yuji Sakai/Getty Images サマリー:デジタル・トランスフォーメーションに取り組む企業は、技術よりも文化が最大の障壁であることを認識している。そのため、変革を成功させるためには組織全体での行動が必要であり、他社の取り組みから学ぶことが重要… もっと見るだ。クウェートのガルフ・バンクはデータプログラムを導入し、2年間でデータを受け入れる企業文化を構築した。本稿はその取り組みから得られる3つの教訓を紹介する。 閉じる 銀行のデジタル・トランスフォーメーション データサイエンス、AI(人工知能)、デジタル・トランスフォーメーションに取り組む人の多くは、自分たちの努力を阻むものはたいていの場合、技術ではなく文化であることを痛感している。 そして、この問題を解決するには、組織の高いレベルで行動を起こす必要があることも彼らは知っている。人々の考え方や会社のデータ活用方法を変えるために、注意を払い、資金を投じなければならない。しかし、企業やリーダーがその細部に踏み込むと、実際にどのような行動を取るべきなのか、わからなくなりがちだ。 企業文化を変えて、デジタルのマインドセットを育むために必要なことを理解したい時は、ほかの企業が実際に取り組んでいることから学ぶとよい。どの戦略が成果を生み、どの戦略が行き詰まるのか。どのようなメッセージが従業員の心を掴むのか。そもそも実際にが、どこから始めればよいのか。 本稿では、企業やリーダーの戸惑いに対処するために、クウェートのガルフ・バンクが、新しいデータプログラムを導入して、筆者らとともにデータを受け入れる文化を構築した2年間の概要を振り返る。2年という期間でこの取り組みが完遂したとは言い難いが、多くの人がこれまでとは違うやり方で仕事をしながら、新しい刺激的な方法でデータを活用するようになった。 筆者の一人であるアル=オワイシュは、2021年2月にガルフ・バンクの初代の最高データ責任者として採用された。銀行業務の全面的なデジタル・トランスフォーメーションを目指す戦略的な計画におけるその任務は、データ主導の顧客体験の構築と提供だった。具体的には計画を整理して、小さなチームをつくり、実行することだった。アル=オワイシュは技術者として成功を収めていたが、この役割を引き受けるために成長しなければならないと考え、もう一人の筆者、レッドマンをプロジェクトに加えた。 新しい仕事を始めるに当たり、アル=オワイシュはよくあるアドバイスについて考えた。顧客データベースを整理する、データレイクを構築してアクセスを改善する、規制当局への報告を改善するなどで、これらは短期的な成果を示すものだった。 アル=オワイシュの上司で副CEOのラグー・メノンは業界のベテランで、短期的な成果に意味がないことを知っていた。なぜならこのような取り組みの立ち上げ時に、短期的な成果を追求して失敗する例を数多く見てきたからだ。メノンは、まず「基本を固める」ように助言した。 私たちはメノンの洞察から2つのメッセージを受け取った。1つ目は、データ品質の向上から始めるということだ。奇妙な選択だと思う人も多いだろう。しかし、データ分野において、特にデジタル・トランスフォーメーションやデータ主導の顧客体験構築において、品質は基本中の基本である。質の悪いデータは存在する。また質の悪いデータは破壊的な影響を及ぼし、日々の仕事に莫大なコストを費やしながら、マネタイズやアナリティクス、AIの使用をはるかに困難なものにする。 2つ目のメッセージは、どのようにみんなを巻き込むのか、どのような文化をつくりたいのか、どのような組織の構造が効果的か、慎重に考えるということだ。 私たちの場合、2つの核を強調したいと考えていた。すなわち、すべての人が自分の仕事をするためにデータを必要としていることと(データカスタマー:データを利用する人)、下流で使われるデータをつくること(データクリエイター:データを作成する人)だ。これらの役割分担をして連携させることによって、悪いデータが生じる原因を見つけてそれを排除し、データの質を急速に向上させることができる。また、このようにデータの品質改善に取り組むことが、人々がデータに関心を持って主体的に動くことにつながる。 プロジェクトに着手する前に、さまざまなレベルの勤続年数の長い従業員に意見を求めた。人々はデータ品質への取り組みを魅力的に感じるだろうか。データカスタマーまたはデータクリエイターとしての新しい役割に魅力を感じるだろうか。 これらのフィードバックから、納得してもらうために説明が必要な人もいれば、新しいやり方が気に入りそうな人が多いこともわかった。また「簡単に始めやすい」課題を用意する必要があった。新しい役割がうまく機能すれば銀行を変えることができるという意見もあり、私たちを勇気づけてくれた。 幅広いデータチームを構築する アル=オワイシュの小さなチームが、1800人が働く銀行全体を巻き込むにはどうすればよいか。私たちは「データアンバサダー」プログラムを考案した。これはデータ品質の向上という考えをチームに導入する取り組みを先導する人々のネットワークだ。 アル=オワイシュは銀行の経営委員会に出席して、メノンの責任について説明し、データ品質を重視する意義や、求める人材のプロフィールを明確にした。また、トレーニングやサポートを提供し、その過程で銀行全体が学んでいくことを強調した。そして、13人の経営委員が140人のアンバサダー候補を推薦した。 シニアリーダーが推薦したアンバサダー候補ではあったが、予想通り多くの人が懐疑的だった。そこでアル=オワイシュのチームは人材部門と協力し、次の3つの方法で、アンバサダーの仕事を興味深く、やりがいがあり、楽しいものにした。 ・世界水準のトレーニング:アンバサダーには、彼らのキャリアを通じて役に立つことを学んで実行するのだと説明した。新型コロナウィルス感染症の影響で、困難もあった。しかし、5つの対面式セッションによるトレーニングでは、データカスタマーおよびクリエイターとしての役割と責任を探求し、最初のデータ品質測定の方法を説明して、問題の根本的な原因を発見し、排除する方法を提示した。 最終セッションは、セルフサービス型のアナリティクスとデータビジュアライゼーションに焦点を当てた実践的なトレーニングを行った。各セッションでは、アンバサダーが現場ですぐに始めやすい課題も提示した。 ・メディア:社内報やソーシャルチャネル、地元紙などでアンバサダーの活躍が紹介され、大きな話題となった。 ・ブランディング:データチームはマーケティングチームと連携し、データアンバサダー・プログラムのロゴを作成して、ロゴ入りグッズを提供して認知度を高めた。

グローバル展開する企業が抱える「最大の脆弱性」への解決策

ここ最近は、ランサムウェア被害を中心に日系企業のセキュリティインシデントが後を絶たない。中でも顕著なのが、海外子会社での被害や海外子会社を経由しての国内での被害だ。グループ全体でのシステムやデータ連携が行われる中で、サプライチェーンリスクや地政学リスクを背景に、これまで以上に懸念が高まっている。今回は、日系企業の“最大の脆弱性”とも言える海外拠点におけるセキュリティの問題点と解決に向けたヒントを考察する。

創業から約140年変えてこなかったビジネスモデルの変革に着手。東京ガスがDXで掲げる「3つの戦略」

2023年6月に開催された「Intel Connection 2023」。東京ガス 常務執行役員 CDO カスタマー&ビジネスソリューションカンパニー 副カンパニー長の菅沢伸浩氏が登壇し、「東京ガスグループの3つの主要戦略と実現に向けたDX」と題してセッションを行った。1885年の創業時から様々な事業を展開してきたが、ビジネスモデルは大きく変えていなかったという。しかし「22-25年中期経営計画」ではビジネスモデルも含めて大きく変革していきたいとし、3つの主要戦略と、それぞれの取り組み事例について説明した。

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