LIXIL、現場社員3963人がノーコード開発で1万7007個のアプリケーションを開発

住まいの水まわり製品と建材製品を開発・提供するLIXILは2022年6月24日、Google Cloud Japanが開催した会見に登壇し、ローコード開発によるアプリケーション開発の民主化の取り組みを説明した同社は、社員みずからGoogle AppSheetを使ってアプリケーションを開発している。全社展開から9カ月で全社員5万5000人のうち3963人が1万7007個のアプリケーションを開発し、このうち680個のアプリケーションを実運用している。

 LIXILは、ノーコード開発ツール「Google AppSheet」を使って、現場の社員みずから業務を効率化するアプリケーションを開発している。2021年10月の全社展開から9カ月で、全社員5万5000人のうち3963人が合計1万7007個のアプリケーションを開発。このうちCoE組織の申請を通過した680個のアプリケーションを実運用している。

現場で作ったアプリケーションの1つが、アルミサッシの型材の個数を画像認識でカウントするアプリケーションである(図1)。現場で型材の写真を撮影し、アップロードすることで、画像認識AIを使って個数をカウントし、個数を表示するアプリケーションである。このほか、IT部門に依頼していたものの優先度が低いために作ってもらえなかった業務をみずからIT化した例として、見積もりの管理と分析ができるアプリケーションなどがある。

図1:現場で作ったアプリケーションの1つ、アルミサッシの型材の個数を画像認識でカウントするアプリケーションの概要(出典:LIXIL)
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AppSheetの導入にあたっては、使い始めるために必要なスキルをどのくらいで習得できるかを実験で確かめた。YouTubeで見られるノーコード開発の教材を何日間視聴すればAppSheetを使えるようになるのかを、実際の社員に視聴してもらって調べた。この実験の結果、1~2日視聴するだけで簡単なコードが書けることが分かった。この結果を受けてAppSheetを全社員に展開した。

図2:AppSheetを全社に根付かせるプロセスとして、まずは経営陣を巻き込んだ。経営陣向けのワークショップを開催し、経営陣全員がAppSheetでアプリケーション開発を経験した(出典:LIXIL)
図2:AppSheetを全社に根付かせるプロセスとして、まずは経営陣を巻き込んだ。経営陣向けのワークショップを開催し、経営陣全員がAppSheetでアプリケーション開発を経験した(出典:LIXIL)
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同社は、AppSheetを全社に根付かせるプロセスとして、まずは経営陣を巻き込んだ(図2)。2021年夏に経営陣向けのワークショップを開催し、経営陣全員がAppSheetでアプリケーション開発を経験した。その後、現場部門を代表するノーコード開発の先行人材「ノーコードチャンピオン」(250人で構成)を置き、2021年10月から全社展開を開始した。ノーコードチャンピオンはトレーナーとしての役割を持っており、部門でのAppSheetの利活用を促進する立場である(図3)。

図3:現場のAppSheet推進リーダーとして「ノーコードチャンピオン」(250人)を配置した(出典:LIXIL)
図3:現場のAppSheet推進リーダーとして「ノーコードチャンピオン」(250人)を配置した(出典:LIXIL)
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背景には、現場業務をIT化する上で、同社のIT部門である「デジタル部門」がボトルネックになっていたという事情がある。これを解決するため、会社全体のマインドセットをアジャイル型に切り替え、現場の非デジタル人材みずから業務アプリケーションを開発する文化を形成した。デジタル部門が依頼を受けていた開発案件も、簡単なものが多かったので、現場で開発可能と判断した。

LIXILは従来、ツールが乱立するリスクから、現場社員によるアプリケーション開発を禁じていた。このマインドを今回改めた。ある程度のリスクを受け入れることで、現場の社員がもっと自由にアプリケーションを開発できるようにした。「自分たちで開発しても構わない」という考えを全社に根付かせた。

なお、LIXILは、基幹システムもGoogle Cloud上で稼働させている(関連記事LIXIL、基幹システムを刷新し、全社データ分析基盤も構築)。

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