ビジネスリーダーに聞く、IT業界に女性を増やす5つの方法

 従業員の多様性によって得られるメリットについて語る経営者は多いが、IT業界の男女比を同等に近づける取り組みは、遅々として進んでいない。

提供:Getty Images/10'000 Hours

調査によれば、米国のコンピューター関係や数学関係の仕事に就いてる女性はわずか28%であり、IT業界の経営層における女性比率は20%未満だという。

では、ITの仕事に就く女性を増やすにはどうしたらいいのだろうか。この記事では、5人のビジネスリーダーに、多様性を高めるための秘訣を聞いた。

1.厳しいアプローチを取る

コンサルティング会社KPMGのグローバル最高デジタル責任者を務めるLisa Heneghan氏は、IT業界により多くの女性を引き込むこと呼びかけており、同社の「IT's Her Future」と呼ばれる取り組みを支援している。

Heneghan氏は幹部職に女性を増やす活動に力を入れているが、IT業界全体がもっと努力すべきだと述べている。

「私はやはり、多様性は大きな問題だと考えている。私たちは、まだあるべき状態にたどり着けていない。性別の多様性を後押しする活動が十分でないだけでなく、ニューロダイバーシティー人材や、より幅広い属性の人々を呼び込む取り組みも十分ではない」

Heneghan氏は、現代企業には積極的にコミュニケーションを行う人々が必要であり、経営幹部には労働力の多様化を後押しする取り組みを進める責任があると主張した。

「IT's Her Futureは、英国でKPMGの目標を達成するのに役立っている。私たちはこの取り組みによって、この5年間で大きく変わり、より多くの多様な属性を持った人々の入社や昇進を支援するようになった」と同氏は言う。

「私はこの取り組みをグローバルに展開しようとしているが、誰もが、多様性を高めるために、日常的に挑戦的な取り組みをしていく必要がある。私は、誰もが、容赦のない厳しい考え方でこの問題に接していくべきだと考えている」

2.人を型にはめない

F1レースのコンストラクターAston Martin Aramco Cognizant Formula Oneの最高情報責任者(CIO)Clare Lansley氏は、IT業界の多様性についてはもっとできることがあると述べた。

「業界が良い方向に変わっているかと聞かれれば、私の答えは『ノー』だ。私が最後に見たときには、女性の採用は前進するどころか後退しており、特に幹部職を増やすことについてはその傾向が強かった。状況が改善しているとは思っていない」

Lansley氏は知名度が高く、週に10~15件、インタビューやカンファレンス出席などの依頼を受けている。

では同氏は、IT業界で成功したい女性のITプロフェッショナルに対してどのようなアドバイスをしているのだろうか。

Lansley氏は、「履歴書に特定の技術や経験が欠けているからと言って、求人への応募をためらうべきではない」と述べた。「質問することにコストはかからないのだから、挑戦すべきだ。先方から何かを言われたとしても、失うものはない」

また同氏は、採用担当者に対しても、候補者に求める条件のリストにこだわるのではなく、もっとオープンな態度で臨むべきだと苦言を呈した。

「これはよく知られていることだが、女性の求職者は、応募するには求人情報に記されている条件の約80%を満たしていなければならないとか、すべての必須条件を満たしていなければならないと考える。しかし、男性はそうではない。彼らは一か八か、履歴書を送ってみる」と同氏は言う。

「多くの採用担当者は、条件のリストを満たすことにこだわりすぎている。『これがこちらが求める完璧な候補者だ』というわけだ。しかし私は、そういう人たちを『完璧な候補者を採用できたことなどあるのか』と問い質したい。採用担当者はいつでもどこかで妥協しているはずだ。私なら、むしろ態度や行動を優先する。結局のところ、スキルは後から教えればいいのだから」

3.自分の声を周囲に届ける

航空会社United AirlinesのDevOps担当シニアマネージャーを務めるRajeswari Koppala氏は、自分は同僚から敬意を払われ、注意を払われるのに値するITプロフェッショナルだと考えている。

「女性が最初に取り入れるべきアプローチは、女性であることを差別化の道具にしないことだと考えている。どちらにせよ、他の人たちがそれをやってくれるのだから」と同氏は語った。

Koppala氏は、女性に自分の意見を無理矢理にでも周囲に届けることを勧めている。注意を払わない人がいれば、注意を払わせるべきだという。

「例えば、会議室で声が小さいと、無視されてしまうことも多い。従って、意見を聞いてもらうためには話を繰り返す必要があるかもしれない」と同氏は話した。

「自分の意見を聞いてもらえるまで話を繰り返すことを、恥ずかしく思ったり、ためらったりしてはならない。言いたいことがあれば、声を上げるべきだ」

またKoppala氏は、他のマネージャーに対して、すべてのITプロフェッショナルが自分の個性や特性を受け入れられるようにすべきだと助言した。

他の人が自分を抑えつけようとするのを許してはならないし、マイクを握って会議の場で意見を言うことを恐れてはならないと同氏は言う。

「もし背が低くて何かが見づらければ、誰でも道具の助けを借りるだろう」とKoppala氏は述べた。「それと同じで、自分の姿を見せ、声を聞かせるための努力をして、自分のやり方で違いを出していけばいいだけだ」

4.求職者が若いうちから魅力を伝える

英国のファッションブランドRiver IslandのCIOを務めるAdam Warne氏は、多様性のあるチームは、新鮮な視点や新たな問題解決方法を持つことができると述べている。

ただし同氏は、多様性を当然のこととして捉えるべきではないと考えている。企業の経営陣はさまざまな属性を持つ人材を獲得しようとしているが、狭い範囲の候補者から人材を得ようとする場合が多いと同氏は言う。

Koppala氏は、「私たちのようなビジネスリーダーが抱えている課題の1つは、問題を解決しようとするのが遅すぎるということだ」と語った。

「誰もがより多様な人材を採用しようと必死になっている。しかし、その取り組みはもっと早くから始めるべきだ」

Warne氏は、その答えの1つは、より多くの人に、もっと若い頃からIT業界について考えてもらえるように働きかけ始めることだと話す。

「私たちは学校に関わっていく必要がある。私たちは、10年後の自分の職業について考え始めた人たちに働きかけるべきだし、IT業界のキャリアがどのようなものかをオープンに、そして正直に伝えなければならない。私にとっては、それは誰にでも開かれているべきものだ」と同氏は言う。

「ITの仕事は、特定の層やゲームが好きな人だけのキャリアではない。誰にでも開かれているべきであり、誰でも入ってくることができるべきだ。私たちは、キャリアを選ぶ前の若い人たちにもっと働きかけ、IT業界のキャリアに関する間違ったイメージを払拭する必要がある」

5.幹部職のロールモデルを作る

EC企業Wayfairの機械学習担当ディレクターであるTulia Plumettaz氏は、多様な立場の人々の声が反映されることは重要であり、企業は幹部職に女性のロールモデルになるケースを作るべきだと述べている。

「当社には、女性の最高技術責任者(CTO)と最高財務責任者(CFO)がいる」と同氏は言う。「これは徐々にしか進まないプロセスであり、本当に良い仕事をすることで実現していく。ただ、誰かが『私はあなたがチャンスを得られるようバトンを渡す』と言えばいい」

Plumettaz氏は、幹部職に女性が増えれば、次の世代の人たちが目指すことができるロールモデルも増えると述べた。

「自分に似た人が経営幹部の中ににいれば、目の前が開け、『私もあのようになれるかもしれない』と考えるものだ」

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