先延ばしにしているタスクを進める5つの方法

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サマリー:「先延ばし」は人間の性質である。しかし、タスクを継続的に先延ばしにすることは、将来の目標達成にとってのリスクとなる。多くの人は、どこから取り組んでよいかわからない漠然としたタスクよりも、単純ですぐに完.了できるタスクに優先して取り組んでしまう。本稿では、重要なタスクの先延ばしに打ち勝つための5つの戦略を紹介する。

なぜタスクを先延ばししてしまうのか

プロフェッショナルでも時折、気が進まないプロジェクトになかなか取り組めないことがある。経費報告書の作成などの退屈な仕事や、従業員に対するネガティブな業績評価を書き上げるといった精神的に疲弊する仕事は後回しにしやすい。実際、先延ばしにするのは、道徳的な欠点や怠惰の表れではなく、否定的な感情を避けるための無意識の手段であることが研究で明らかになっている。

先延ばしにする最も一般的な理由の一つは、プロジェクトが曖昧、あるいは漠然としていると感じられることである。何をすればいいのか、どこから手をつければいいのかわからず圧倒されてしまい、「タスク麻痺」に陥ってしまうのだ。拙著The Long Game(邦訳『ロングゲーム』)でも論じているように、比較的些細なことに時間を使っているうちに、長期的な目標を達成しようとする努力を妨げてしまうことがある。To Doリストの中に、将来の成功のために重要なのにもかかわらず、何度も先延ばししている項目があったら、以下の5つを実行してほしい。

ビジョンを明確にする

「この助成金の企画書を書いて」「これについてリサーチして」と上司や同僚からプロジェクトを任された場合は特に、相手が実際に何を求めているかが不明確なことがある。20ページ分の詳細な調査が必要なのか、1ページ分の概要なのか。取締役会に提案できるような分析なのか、簡単な見解が求められているのか。「フリーズ反応」に陥っている時は、求められる範囲が不明確である点にさえ気づいていない場合もあるため、基本に立ち返ることが重要だ。正確に何を求められているのか。望まれているアウトプットはどのようなもので、どれくらい時間がかかりそうか。相手の意図を明確にすると、行き詰まりを解消できることが多い。

具体的なステップを特定する

ビジョンが明確だったり、自分のビジョンを追求したりしていても、最終的な目標までの道のりが明白でないことがある。特に、これまでに経験のないこと(新商品の立ち上げなど)に取り組む場合、To Doリストは考えうる限りの活動であふれていても、どれが最も重要なのか、どのような順序で進めればいいのかわからないかもしれない(フォーカスグループの実施や、プロトタイプの開発、マーケティング計画の立案、あるいは価格戦略のテストなど)。

そのような時は、過去に似た経験のある同僚に話を聞くことが有効だ。それが難しい場合は、関連する専門知識を持つコンサルタントを雇うか、同じ業界で過去に行われたことを入念に調べ、リバースエンジニアリング(逆算)することも検討できる。それらを完全に模倣する必要はないが(あなたのイノベーションは過去の例を改善することになるかもしれない)、過去のベストプラクティス(およびワーストプラクティス)を意識することで、初期の計画を立て、どこでそこから逸脱するかを意識的に選択できる。

小さな行動を起こす

曖昧なプロジェクトは、それが不明瞭であるがゆえに大きなもののように感じられ、しばしば後回しにされることが多い。しかし、スタンフォード大学教授のBJ・フォッグが指摘しているように、小さな行動を起こすことでポジティブな勢いがつき、そのタスクのすべてを完了させやすくなる。たとえば、歯を1本フロスすると、歯全体をフロスするのも大した労力ではないと気づくように、進捗報告書を1段落書くと、それを完成させる力になる。最も重要ではない達成可能なタスクを特定することで(メールの送信やプレゼン資料のレイアウト修正など)、惰性がなくなり、その後重要なタスクに戻るのが容易になるかもしれない。

強制機能を作る

先延ばしにしている時は、「今週の木曜日には絶対にやろう」というような意志の力だけではモチベーションが上がらないことは明らかだろう。それよりも「強制機能」を自分に組み込むと、確実に遵守できる。パーソナルトレーナーを雇えば、エクササイズの実施がある程度保証されるのと同じように(すでに料金を支払っているので、トレーナーに待ちぼうけを食わせるのは失礼になる)、上司や信頼できる同僚と週次のチェックインの予定を組むなど、自分の責任を果たす仕組みをつくる。

ほかの人とバーチャルで「共同作業」をして、特定の日における進捗に責任を持つこともできる。参加者は、セッションの開始時に何に取り組むかを発表し、完了時に報告する。また、前進し続けるための独自「ルール」をつくることもできる。筆者は過去に締め切りに追われた時、カフェにこもり(空腹やのどの渇きを言いわけにできなくなるからだ)、仕事が終わるまで帰らないようにしていた。

気が散るものを制限する

私たち人間は、届いたメッセージを読んだり返信したり、ソーシャルメディアの新しい投稿をスクロールしたりする「スリル」を含め、ドーパミンの刺激を求めるようにできている。それが実際に生産的だと思う人はいないが、たいていの人にとってそれを我慢するのは非常に難しい。プロジェクトに取り組みやすくするために上述のステップを踏んでいたとしても、誘惑に負けるのは簡単なため、気を散らす要因を積極的に制限することが重要だ。さもなければ、意味のあるやっかいな(そしてより漠然とした)仕事に注力するよりも、To Doリストの些細な項目(ランチミーティングのためのサンドイッチの注文や、リンクトインのつながりリクエストの数をチェックするなど)を完了させるという即効性のある満足感をいつも選びたくなる。

携帯電話を別の部屋に置く、特定のウェブサイトへのアクセスを制限するソフトを使う、込み入った執筆を進めるためにインターネットに接続していないPCを使うなど、自分にとってどのような方法が有効か試してみよう。

先延ばしにするのは人間の性だが、そのリスクはさまざまだ。メールがたまったり、管理上の書類の記入を遅らせたりするのは最善とはいえないが、重要でも緊急ではないプロジェクトを先延ばしし続けると、将来の目標に打撃を与えかねない。曖昧でも必要不可欠な仕事の先延ばしを克服するために上述の戦略を実践すれば、より長期的な思考の持ち主になり、行動する人になることができる。


“5 Ways to Actually Move Forward on That Task You've Been Avoiding,” HBR.org, September 12, 2023.

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