職場で道徳心が傷付けられた時、どのように行動すべきか

職場ではさまざまなストレスを受け、精神的に動揺したり、怒りや苦痛を感じたりすることも少なくない。自分の道徳観に反するような行動を目撃したり、みずから関与したりすることで、深刻な影響が及ぶことがある。これは「道徳的傷害」と呼ばれるトラウマの一種だ。本稿では、上司や同僚など他者による逸脱行為、自分自身が犯した違反行為や裏切り行為などで生じる道徳的傷害の悪影響について掘り下げ、それらに対処するための6つの戦略を提案する。


 筆者らは、最近の論考「Employees are Sick of Being Asked to Make Moral Compromises」(従業員は道徳心が傷付けられることに辟易している)に対する読者の反応に、とても驚かされた。自分も嫌というほど知っている経験について、ようやく適切な言葉で表現してもらえた、と多くの人から言われたのだ。そして、それ以上に、「道徳的傷害」を経験した時にどうすればよいかについて、多くの人が助言を求めてきた。

簡単に説明すると、道徳的傷害とは、自分が高いリスクを伴う状況で、みずからの道徳観に反するような行動を職場で目撃したり、関与したりすることで抱えるトラウマのことだ。道徳的傷害をもたらす出来事(傷害的事象)には、上司や同僚など他者による逸脱行為、自分自身が犯した違反行為、裏切り行為などがある。

本稿では、道徳的傷害の定義と、それがもたらしうる悪影響について掘り下げたうえで、それらの問題に対処するための戦略を提案したい。

傷害の連続性

注意しなければならないのは、職場で精神的に動揺しても、多くの場合は道徳的傷害のレベルに至らないということだ。

道徳的傷害をもたらすのは、自分自身が高いリスクを伴い、他者に身体的・精神的・社会的・経済的被害を与える可能性がある状況だ。たとえば、職場のいじめを容認することで従業員の健康を損なうこと、立場の弱い顧客を巧みに誘導して過剰な支出をさせ財政難に陥れること、患者の救命処置を拒否することなどだ。

さらに、あらゆるストレス反応と同じように、道徳的事象(例:嘘をつくことを強いられる)と道徳的反応(例:罪悪感を覚える)を、しっかりと区別しなければならない。

道徳的事象に対する反応を表す用語はさまざまに存在する。それらの整理を行った新たな研究は、道徳的障害の連続性を示している。当然ながら、道徳的状況は複雑かつ多様なため、どのような分類も完璧ではない。

自分が道徳的な逸脱行為を犯す状況は羞恥心や罪悪感を招きやすく、裏切り行為の被害者になれば怒りや悲しみを覚えやすい。さらには、道徳的苦痛をもたらす出来事に対する感受性にも個人差があり、それは生物学的条件と過去の経験によって決まる。とはいえ、本稿ではその大枠を理解できるよう、いくつか要約する。

・道徳的課題は、比較的リスクが低く、発生する頻度の少ない逸脱行為である。たとえば、労働者が製造過程で品質の低い材料を使うよう指示される(例:有機栽培の製品が足りない時、有機栽培ではない製品で代用する)ことや、例外的に残業を命じられることが挙げられる。その結果、多少の苦痛を伴う一過性の「道徳上のフラストレーション」が生じ、ある程度の怒りや罪悪感が生まれる。

・道徳的ストレッサー(ストレス要因)は、さらに重大な道徳的苦痛を引き起こしかねないものだ。より深刻な道徳的逸脱行為が繰り返される時に生じやすい。

たとえば、従業員が毎月何回も残業を強いられること、あるいはHR担当者がモラルに関する実態調査を行っても、それまでの調査と同様、その結果が活かされることはないとわかっていることが挙げられる。歯科医院が、施術の必要はないが害もない高額治療を患者に売り込むような状況も該当する。

その結果、ネガティブな道徳感情が生じる。煩わしい感情は消えないかもしれないが、日常生活に大きな支障はないだろう(ただし、いくつかの看護研究では、「道徳的苦痛」と呼ばれる経験は極めて強い影響をもたらすと見なされ、道徳的傷害の基準を満たす可能性がある)。

・傷害的事象は、最も苦痛を伴う。経営幹部がマネジャーに圧力をかけて、バーンアウト(燃え尽き症候群)に苦しむ従業員の休暇とウェルビーイングを常に犠牲にしながら、組織は意図的に何カ月も人員補充を行わないかもしれない。医療従事者は、患者の治癒が可能であるにもかかわらず、さらなる治療につながる医療行為を指示されるかもしれない。

このような状況は、ネガティブな道徳的感情を引き起こし、それが頻繁に生じることで日常生活に支障をきたすような、重度の道徳的傷害をもたらす可能性がある。特に、強烈な羞恥心から自己隔離や自傷行為に走ったり、何もかも嫌になって仕事を辞めたりするかもしれない。このレベルの道徳的ストレスは、心的外傷後ストレス障害 (PTSD) に酷似する、あるいは少なくとも部分的に重なる

https://www.dhbr.net/articles/-/8677

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