データマネタイゼーション

データの外販や協業など「データ流通」が本格化–PwCが示すデータマネタイゼーションの実態と今後

 PwCコンサルティングは3月14日、「データ流通本格化時代を見据え、日本が今取り組むべきこと」と題したメディアセミナーを開催した。「データマネタイゼーション実態調査2023」の内容を振り返りながら、データ流通の本格化に向けて、企業や国に求められるアクションを提示した。

同社 上席執行役員 パートナー データ&アナリティクス リーダーの藤川琢哉氏はまず、データ流通が世界的に注目を集める背景として、国際的なデータ流通を促進するための新組織設立の動きを挙げた。欧州・北米はデータ流通を国家戦略レベルで推進し、日本もそれに追従している状況であり、データ流通は「Society 5.0」に代表される社会課題解決の手段として期待されているという。

また同氏は、日本企業の最高経営責任者(CEO)の多くは既存ビジネスからの変革の重要性を認識しており、既にデジタルトランスフォーメーション(DX)の延長として既存事業の枠を超えた新たな事業の立ち上げに着手しているとの見解を示した。

その上で藤川氏は、データの利用/活用の取り組みは今後、データの外販や協業ビジネスなど高付加価値化を目指した「データ流通」の時代に突入すると語った。

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続いて、同社 マネージャーの宿院享氏が「データマネタイゼーション実態調査2023」の内容を紹介した。調査は、企業におけるデータマネタイゼーションやデータ流通の認知・検討・実行状況と課題を把握することを目的に実施。期間は2022年12月23~26日にインターネットで行われた。売上高500億円以上の企業に勤務し、データマネタイゼーションやデータ流通に対する意思決定、方針検討、企画・検討・立ち上げ、情報収集・アドバイスを行う国内在住者を対象に、528件の有効回答を得た。

宿院氏はまず、データマネタイゼーションの定義について「データの外販やビジネス創出など『データの利用/活用による事業活動への付加価値の創出』を目指す取り組み」であると説明。その上で、回答者の半数超(59%)が既に「データマネタイゼーション」検討に着手しており、そのうち約57%が外部データ購入・活用などのデータ流通を伴うデータマネタイゼーションを検討しており、データ流通に対する企業の関心は高まっていると話した。

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加えて、異業種間のデータ流通は、業界ごとの慣習や企業文化などの違いから難易度が高いと考えられていたが、実際には同業種間のデータ流通と比べても見劣りしないほどに多く取り組まれていることも明らかになった。

データ流通プラットフォームについては、「現状は一部回答者の利用に限られているが、利用者の64.5%が効果を実感。データ流通を促す場として機能しており、今後の普及・利用拡大が期待される」と宿院氏。データ流通プラットフォームの主要機能であるデータの購入・販売だけでなく、販売状況の情報収集といったデータ流通市場の調査やアライアンス形成などを目的とした利用も目立つという。

また、データマネタイゼーションやデータ流通に関する業界団体やコンソーシアム活動には半数以上(51%)の回答者が参画しているが、実際に効果を実感できているのは34%程度にとどまる。活動に対する期待と現実との間にギャップがあることが明らかになったとしている。

宿院氏は「特に『アライアンスやパートナー候補企業の選定』を目的とする回答者において、期待と現実の間に大きなギャップが存在。企業間マッチングの施策は多くの団体で行われているが、十分に機能しているとは言い難い」と指摘した。

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データマネタイゼーションに取り組む上での課題感については、「スキル・知見がない」「どのデータがマネタイズできるか分からない」「アイデアがない」など検討の初期段階における課題が上位に挙がっており、初期の企画立ち上げや具体化に最も苦心している様子がうかがえた。

最後に、同社 パートナーでディレクターの河野美香氏が、データ流通の本格化に向けて企業や国に求められるアクションについて解説した。

同氏は、データ流通・マネタイゼーションを加速させるために最も重要なのは「ユースケースの創出」だといい、(1)企業間のコラボレーション促進・外部知見の積極活用、(2)各業界・領域の要望の集約とそれを後押しする必要な枠組み・ルールの整備、(3)各業界・領域と国との橋渡しを行う組織横断的なイニシアチブの存在――の3つを提言した。

「国と企業が一体となり、ユースケースの創出と具体化ができる土台を作り上げることで、日本のデータ流通は成功する。PwCはデータマネタイゼーション実現に必要なアプローチ・方法論を提供し、企業のデータ流通・マネタイゼーション実現を支援していく」(河野氏)

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