リアル5G元年に考える、次世代の体験価値とユースケースの「つくり方」

2020年3月に日本でも商用サービスがスタートした第5世代移動通信システム(5G)だが、現在は4Gから5Gへの移行期にあり、その真価はまだ十分に発揮されていない。本格的な5Gが浸透した先には、どんな未来が待っているのか。

Deloitte AI Institute所長の森正弥氏が、人工知能(AI)分野をリードするトップ人材と語り合うシリーズ対談の第6回は、楽天モバイルで5Gを活用した新しいサービスの創出に携わる益子宗氏と田中由紀氏を迎え、5GとAIをはじめとした先端技術、そして共創的パートナーシップによって創出される新しい体験価値について議論した。

ネット企業と通信企業のカルチャーの違い

 まず、お二人のこれまでのキャリアについて紹介いただけますか。

益子 5Gを活用した新しいサービスを企画したり、ユーザー体験を研究したりする立場で、楽天モバイルの5Gビジネス本部 ビジネスソリューション企画部で活動しています。5Gはまだ商用化されて間がなく、それを使ってどういったサービスができるのか、どんなユーザー体験を創出できるのかといったことを考えています。

もともとは楽天(現楽天グループ)に新卒で入社し、楽天技術研究所で主にコンピュータビジョンやヒューマン・コンピュータ・インタラクションの領域を研究してきました。同研究所は、事業部門に出向いて研究するというコンセプトを掲げており、私自身も楽天のフリマアプリ「ラクマ」の事業部の一員として、AIによるカテゴリー推奨機能「もしコレ!」などの企画・開発に携わりました。

また、楽天市場ともコラボレーションする機会があり、筑波大学とともに「未来店舗デザイン研究室」を立ち上げ、コミュニケーションデザインや新しい消費体験の創造についても研究してきました。その縁もあって現在、筑波大学の芸術系の教授として「5G体験デザイン特別共同研究事業」を推進しています。

田中 私は転職組で、前職ではSIer(システムインテグレーター)で組み込みのエンジニアをやっていました。楽天にはアプリケーションエンジニアとして入社し、2011年ぐらいまで、楽天のコンシューマー向けのサービス開発・運用、プロダクトマネジメントに携わりました。産休・育休を経て2013年に楽天技術研究所に移り、益子のチームの一員として研究コーディネーターを務めました。

現在は、楽天モバイルで5Gのプロジェクトに参画しています。AIは技術的に成熟化し、マネタイズを考えるフェーズに入ってきましたが、5Gはこれからユースケースを創出していく段階であり、新しもの好きの私には非常に興味深いテーマです。

 同じ楽天グループ内とはいえ、インターネット企業から、楽天モバイルという通信企業に移られたわけですが、カルチャーの違いを感じることはありますか。

益子 国内「第4の携帯キャリア」として参入するにあたり、社内外からさまざまなバックグラウンドを持つ人財が集結しており、少し違う雰囲気、カルチャーがあると感じます。関わっている社員数も多く、これまでの新サービスと比べても組織構造がしっかりしていて、業務範囲が明確で、ガバナンスが効いています。ネット企業は一般的に、立ち上げ期は特に自身の期待役割をも超えて、「一緒にやろうぜ」みたいな空気がありますね。

 たしかに、ネット企業はプロセスの定義や組織の縦割り構造ががちがちではなくて、有機的につながっているイメージがあります。個人と個人がダイレクトに組織を超えてつながっていき、いろいろな業務プロセスを回していったり、新しい企画を進めていったりすることがよくあります。

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