組織変革を社員から支持してもらう方法 – オンライン

サマリー:組織変革を行う際、リーダーはどうすれば周囲からの支持を得ることができるのだろうか。本稿では、変革を受容する組織が持つべき6つの要素を提示する。社員が変革を支持すれば、変革の実行が容易になり、社員と組織… もっと見るの間に継続的な互恵関係が生じる。そうした関係が存在しない企業は、変革に乗り出すたびにゼロから社員のエンゲージメントを引き出して、抵抗を克服するプロセスを繰り返さなければならない。 閉じる

変革を受容する組織に必要な6つの要素

リーダーは、どうすれば社内で組織変革の取り組みへの支持を得ることができるのか──。この点について唱えられているアドバイスの大半は、ありきたりの内容に終始している。変革が必要とされる理由を社内にしっかり説明し、さらにはリーダー自身も変革にのめり込むべし、といった具合だ。

しかし、筆者がこれまで何百社もの企業の組織変革を支援してきた経験から言うと、このアプローチだけでは十分でない。実際、研究によれば、こうしたことしか実行しないと、しばしば、社員のシニシズム、疑念、不信感、ネガティブ思考が強まり、変革の取り組みは、苦痛を伴いながら緩慢な死へと向かうプロセスに変わってしまう。

あまりにも多くのリーダーたちが見落としていることがある。変革に対して社内である程度の疑念が持ち上がるのは自然なことだが、疑念に対抗する方法は、そもそも疑念が生まれないようにすること以外にない、という点である。では、社内で疑念を生まないためには、どうすればよいのか。

筆者が関わってきた中でとりわけ大きな成功を収めている企業は、変革を受容する文化を育むことができているために成功を手にしている。実際に変革へ乗り出すより、はるか前の時点で、そのような文化を築いているのだ。具体的には、文化の6つの要素に働きかけている。その6つの要素とは、正当性、当事者意識、現実とのつながり、達成可能性、真正性、公平性である。

正当性:社内のインフルエンサーを取り込む

変革に乗り出そうとする組織は概して、リーダー層の力にばかり依存する。リーダーの肩書は持っていなくても、自社の組織文化に対して大きな影響力を持つ社内のインフルエンサーたちの存在が見落とされがちなのだ。

そうした社内のインフルエンサーは、ミドルマネジャーの場合もあれば、営業部門の中核的メンバーの場合もあるし、時にはオフィスの受付係の場合もある。いずれにせよ、変革の取り組みが成功するかどうかのカギを握るのは、このような人たちかもしれない。非公式のインフルエンサーたちは、社内での影響力、知性、人的ネットワークづくりの能力、そして一般社員から尊敬されていて、正式なリーダーの役職に就いている人たち以上に、社内での変革の受容度を大きく左右する力を持っている場合が多いからだ。

社内のインフルエンサーたちを早い段階で変革のプロセスに取り込むことは、社員に信頼されている非公式のリーダーたちの力を借りて変革への信頼を育む効果が期待できる。さらに、信頼を集めている人たちの言葉を通じて変革の土台を築くことにもつながる。

当事者意識:すべての人がテーブルに着けるようにする

はっきり言っておきたい。リーダーが方針を決定した後で社員集会を開催して、自由に発言してよいと言っても、社員の本当の考えを知ることはできない。そればかりか社員は、自分たちの意見を真剣に受け止めてもらえていないと感じる可能性が高い。このような会合を行うと、変革への取り組みにむしろ支障をきたすケースが多いのだ。

対照的に、人は変革のあり方を形づくるプロセスに主体的に関われる場合、変革を受け入れる可能性が大幅に高まるという研究がある。したがって、社員集会で一方的にリーダーの方針を伝えるのではなく、小規模な双方向型の対話を重ねたほうがうまくいく。

そのような話し合いの場では、変革を妨げる潜在的な障害を部署ごとに洗い出し、どうやって変革を実現すればよいかを各部署に決めさせればよい。これにより、それぞれの部署特有の環境や条件、制約に合わせて、変革の進め方を調整できるようになる。

現実とのつながり:まだ手をつけられていない懸案に目を向ける

変革の課題には、いま組織が目標として掲げているものと、ずっと後回しにされ続けているものがある。後者は、あまりに手ごわく複雑で、政治的な性格が強いために、敬遠されているのだ。意外に感じられるかもしれないが、この後者の課題にも目を向けることこそ、前者のタイプの変革に対する支持を獲得するうえで一番の近道になるかもしれない。

現在の変革の取り組みを、ずっと放置されている未解決の課題と結びつけることができれば、成功は確実だ。誰もが認識している懸案と目の前の変革を組み合わせることにより、単に仕事が増えたと人々に感じさせるのではなく、変革を重要で不可欠なものと感じさせることができる。しかも、それを通じて、リーダー層が現場の課題から目を逸らさず、しっかり向き合っていると印象づけることもできる。

達成可能性:小さな変革を積み重ねる

長く手つかずになっている懸案に目を向ける一方で、変革を達成可能なものと感じさせることも重要だ。実際には、変革があまりに難しく、達成不可能に思えている場合が多い。たとえば、IT部門が複雑で入り組んだテクノロジーインフラを擁していれば、変革により大きな混乱が生じたり、ことによると大惨事が起きたりするのではないかと、恐れているかもしれない。

その点、多くのケースで有効なアプローチは、変革の取り組みをいくつかの小規模な課題に分割するというものだ。課題を細分化することにより、変革を取り組みやすく、達成しやすく、マネジメントしやすいものにすれば、抵抗が弱まるだろう。長期的な達成感を味わえると同時に、短期的にも成果が上がりやすくなるためだ。

真正性:リーダー自身が変革に向けた行動を取る

ロゴ、ポスター、ステッカー、Tシャツなどのグッズ類はすべて、変革に対する社員の支持を獲得し、変革の機運を盛り上げるために有効な道具ということになっている。しかし、リーダーの本気度が足りなければ、そのことは人々にすぐに伝わる。その結果、社員は、最初の盛り上がりが落ち着くまで待てば、変革を行わずに済むだろうという発想になりやすい。

変革の取り組みのうわべだけを取り繕うのではなく、リーダーは実際の行動を通じて、どのような変革が求められているのかを示すべきだ。たとえば、変革の目標が「地域コミュニティにさらに貢献する」ことだとすれば、その目標を直接的な行動に転換しよう。社員向けの有給にボランティア休暇制度を設けたり、社員が寄付を行った場合に、会社が同額の寄付をするようにしたりすればよいだろう。このように実際の行動で示すことにより、変革は言葉だけでなく、行動を伴うものになる。

公平性:中立のファシリテーターを用意する

変革を目指す過程では、対立が生まれることを覚悟しておくべきだ。CEOや最高幹部たちだけが変革を主導する場合、一人ひとりの懸念や疑問には直属の上司が対応することになる。それに、部署間の対立が持ち上がった場合は、それぞれの部署が自分たちの主張に上層部の支持を取りつけようとして競い合う。その主張が変革の取り組み全体にとって有益かどうかは、しばしば考慮されない。

変革のプロセスに第三者を介在させれば、社内政治や牽制、足の引っ張り合いによる悪影響をなくせるかもしれない。モデレーター、カウンセラー、そして社員のエンゲージメントを引き出す旗振り役を果たす人物の力を借りることにより、意思決定におけるバイアスとえこひいきを取り除くことが可能になる。この役割を担うのは、信頼できるコンサルタントでもよいし、経験豊富な業界専門家でもよいが、社外の人物であることが望ましい。

社員が変革を支持すると、何が起きるのか

変革はどのようなケースでも簡単ではないが、リーダーがどのような姿勢で臨むかによって、その取り組みが社内で受け入れられるか、拒絶されるかが大きく変わってくる。変革が受け入れられやすい環境をつくれれば、抵抗と停滞を乗り越えて前進することが格段に容易になる。変革への道がお仕着せのアプローチではなく、その会社の現実に基づいて形づくられるようになるからだ。

社員が変革を支持すれば、変革の実行が容易になるだけでなく、社員と組織の間に互恵的な関係が恒久的に築かれる。その恩恵は計り知れない。そうした関係が存在しない企業では、将来も変革に乗り出すたびに、再びゼロから社員のエンゲージメントを引き出して、抵抗を克服するプロセスを繰り返すことになる。忘れてはならない。信頼を築くには長い歳月を要するが、壊れるのは一瞬だ。

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