サマリー:多くのミドルマネジャーは、過剰な業務を抱えているにもかかわらず、与えられている時間やリソースが少なすぎるため、バーンアウト(燃え尽き症候群)を感じている可能性が高い。燃え尽きの問題には、魔法の特効薬のような解決策も存在しない。しかし、本稿で紹介する多面的なアプローチを実行すれば、あなたも、部下であるミドルマネジャーたちが燃え尽きから回復するための後押しができる。
ミドルマネジャーを襲う燃え尽き症候群
あなたの下で働くマネジャーたちは、バーンアウト(燃え尽き症候群)を感じている可能性が高い。ミドルマネジャーたちは、大きな重圧の下で仕事をしている。何しろ、上層部から言い渡された戦略を実行しつつ、チームメンバーにコーチングを行い、成長させなくてはならない。彼ら自身の多くは、上司から育てられたり、エンパワーメントされたりした経験がないにもかかわらず、だ。
しかも、十分なリソースを与えられていない状況で、ミドルマネジャーたちはやむなく、みずからも腕まくりをして、チームのメンバーと一緒に現場業務を片づけるはめになることも珍しくない。近年、従業員の退職率が高まっていることも、この傾向に拍車をかけている。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、ミドルマネジャーの中には、マネジメント業務に加えて、週2日相当の時間を現場業務に、週1日相当の時間を事務作業に割いている人もいるという。過剰な業務を抱えているにもかかわらず、与えられている時間やリソースが少なすぎるため、多くのマネジャーが疲弊している。マイクロソフトの調査によると、そのような状況にあるマネジャーたちは、そうでないマネジャーたちに比べて退職する確率が2倍近くに達することがわかっている。
燃え尽き症候群は、単に疲れたり、ストレスを感じたりするだけでは済まない。そのため、燃え尽き状態から手っ取り早く回復することはできない。時間をかけて、意識的に、そして組織のサポートを受けつつ、言わば平衡感覚を取り戻し、さらには活力とエンゲージメントとモチベーションを再び高めることが必要になる。
燃え尽きの経験がどのようなものかは、一人ひとり異なり、どのような対応策がどのような効果を生むかも人によって異なる。また、燃え尽きの問題には、魔法の特効薬のような解決策も存在しない。しかし、本稿で紹介する戦略を含む多面的なアプローチを実行すれば、あなたにも部下であるマネジャーたちが燃え尽きから回復する後押しができるだろう。
正しく認識する
正しく認識するという戦略には、2つの側面がある。一つは、部下が燃え尽き状態にあると認識し、その人物に対して心配する姿勢を見せること。それにより、その人物は、自分が気遣われて理解されていて、さらには大切にされていると感じることができる。加えて、燃え尽きの問題が存在することを認めれば、その問題を俎上に載せて、対処すべき課題として位置づけることにつながる。
もう一つの側面は、部下であるマネジャーが努力を続けていて、自社の事業に好ましい影響を及ぼし、貢献していると認めることだ。ワークヒューマンとギャラップが1万2000人以上の従業員を対象に実施した調査によると、従業員が評価されることと従業員のウェルビーイングとの間には、強い相関関係があるという。そして、従業員は評価されることにより、自分が会社に貢献していると実感できる。従業員を評価することは、その人物の貢献が目に見えにくい場合にとりわけ大きな意味を持つ。自分が会社に貢献できていると感じている従業員は、無力感を克服し、仕事に対する冷めた感情が弱まり、もっとやりがいを持って仕事に臨めるようになるかもしれない。
「時間を割いてほかの人たちを評価すれば、その人たちに好ましい影響が及ぶだけでなく、評価する側にも好ましい影響が及びます」と、従業員評価と職場文化の専門家であるクリストファー・リトルフィールドは言う。「うまくいっている点に目を向け、進展をほめ称え、部下の貢献に関する情報を広めれば、従業員がやりがいと希望、そして帰属意識を抱く一助になります。これらの要素はすべて、ウェルビーイングを向上させる効果があるとわかっています。具体的には、5分間時間を取って、気持ちのこもったお礼のメッセージを書いたり、手短に称賛の言葉を述べたり、後で振り返って評価を伝えたりするだけでも効果があります」
人と人とのつながりを取り戻す
マネジャーたちがグループでつながる機会(対面とバーチャルの両方)をつくり出すことにより、燃え尽き状態に陥っている人たちがしばしば経験する孤独感を和らげられる可能性がある。リモートワークを実践している人の間では、孤独にさいなまれる人が特に多い。コミュニティの意識を育んで、マネジャーたちが互いに試練と成功について語り合えるようにすれば、マネジャー同士の助け合いを促せるだけでなく、燃え尽きに伴う孤独感を和らげ、連帯感も生み出せる。
また、目の前の業務とは関係なく、同僚同士が一対一でつながることも、時に大きな効果を生む。一部の人たちにとっては、グループでのつながり以上に大きな意味を持つ場合もある。「同僚に電話をかけて近況を尋ねるだけでも、あなたがその人のことを気にかけていると伝えることができます」と、職場への帰属意識に関する講演を行っているアダム・スマイリー・ポスウォルスキーは言う。「しばらく言葉を交わしていなかった同僚と連絡を取れば、あなたが彼らにエネルギーとインスピレーションを与えられるかもしれません。特にストレスや燃え尽きで苦しんでいる同僚は、その恩恵に浴せるでしょう」
ポスウォルスキーは、さらにこう述べている。「ちょっとした親切な行為、たとえば、同僚の誕生日を覚えておいてお祝いを言うとか、同僚が好きなコーヒーをおごってあげるといったことをするだけでも、帰属意識が高まります。職場で人と人のつながりを育むために時間と空間を費やせば費やすほど、私たちの抱くあらゆる感情について話題にしやすくなります。燃え尽きはそうした感情の代表格です。燃え尽きやストレス、孤独について話すことが当たり前になれば、人々の孤独感が和らぎます。孤独感が和らげば、その人の心理状態はかなり改善するでしょう」
業務を再検討し、優先順位を見直し、業務の割り振りを変更する
マネジャーが燃え尽き状態に陥る大きな原因に、あまりに膨大な量の仕事を課されていることがあるだろう。しかも、新しい優先課題が登場しても、既存のプロジェクトの優先順位が下がることはない。すべての課題が重要業務と位置づけられて、課題リストに留まり続ける。その結果として、マネジャーたちは持続不可能な量の業務を抱えるはめになるのだ。
一人ひとりのマネジャーがどのような業務を担当していて、どの業務に多くの時間を費やしているのか点検すべきだ。そして、組織としての目標を達成するうえで特に重要な領域を3つリストアップし、その3つの領域にマネジャーの活動を集中させ、それ以外の課題の優先順位を引き下げればよい。どの課題を後回しにできるか、どの締め切りを延長できるか、どの課題を打ち切りにできるかを決めるのである。また、ある成果を上げるためにどれくらいの水準の品質や緻密さが必要とされるのか、成功の度合いを評価するためにどのような指標を採用すべきかを再検討することも重要だ。
このような再検討の一環として、一人ひとりの業務量と能力を把握し、必要であれば業務の割り振りを見直すことも必要になる。こうした作業を定期的に行い、マネジャーたちが継続的に優先課題を再検討して管理するのを助けることも忘れてはならない。
1日の時間を24時間以上に増やすことはできないが、リソース(人材、時間、予算)に適合した範囲内に業務量を調整したり、リソースの追加を主張したりすることはできる。たとえば、せめて繁忙期に対処するための一時的な措置でもよいので、新しく人を雇ったり、社外に業務委託したりするための予算を求めてもよいだろう。
チーム内の約束事を見直す
部下であるマネジャーたちへのエンパワーメントを推し進めることにより、燃え尽きの問題を解消する後押しをしよう。そのためには、メンバーの働き方に関するチーム内の約束事を修正する必要があるかもしれない。チーム内で、どのような形で公私の線引きを尊重するのかを検討すべきだろう。
たとえば、夜間や週末にメールを送らないようにしたり、そのほかの「マイクロストレス」を生まないように努めたりするといったことに留意する必要がある。新しいルールを形づくり、みんなで前に進むための方法をよりよいものに改善していけば、メンバーの自己効力感が高まるだろう。これは、燃え尽き状態に陥っている人にしばしば欠けている要素だ。
また、チーム内で、一人ひとりが自分の担当業務に関してどのように責任を持つのか、ほかのメンバーの意見に異論を唱えたり、反論したりすることをどのように認めるのか、どうやって仕事に集中するために会議を行わない日を設定するのかといったことも決めればよい。そのような新しい約束事を決めれば、時間やエネルギーの浪費を少なくし、いら立ちの原因を減らす一方で、メンバーに自分たちがエンパワーメントされているという感覚と、これ以降の自分たちの経験を形づくるうえでの主体性を持たせることができる。
定期的に近況確認を行う
部下であるマネジャーたちと定期的に一対一で話すように心がけるべきだ。特に、燃え尽きの兆候が見られる人物には、そうした対応が重要になる。そのような機会には、近況を尋ね、どうすればその人物をサポートできるかを確認し、どのような点で行き詰まりを感じているかを尋ねるとよい。そして、業務量が多すぎて手に負えない時は、安心してそう言えるような環境をつくることも必要だ。マネジャーたちが声を上げるようになれば、話し合いを通じて、障害を取り除いたり、業務量を減らしたりするなどして、苦しんでいるマネジャーの負担を軽減する道を探ることが可能になる。
リラックスとリセットを促す
まとまった休息を取り、緊張をほどくことは、それだけで燃え尽き状態からの回復を果たせるわけではないにしても、心身両面でマネジャーたちがエネルギーを補充し、リセットするためには欠かせないステップだ。また、マネジャーたちが休暇をすべて取得するのが当たり前だという雰囲気をつくる必要もある。膨大な量の業務に忙殺されていると、休暇の取得を先延ばししたり、休暇を取ることを控えたりする人が少なくない。しかし、現実には、処理しなくてはならない課題はけっしてなくならない。たまっている仕事をすべて片づけるまで休暇を先延ばししようとするのは、ゴールラインのないマラソンを走るようなものだ。
また、休暇の取得を義務化すれば、組織文化に根を張る「戦士のメンタリティ」に対抗できるかもしれない。そのような心理は、燃え尽きを生む原因の一つになっている可能性がある。チーム内で時期をずらして休暇を取って、事業の中断を避けてもよいし、時期を決めて全社で休業し、いっせいに休暇を取れるようにしてもよい。
どのようなアプローチを実践するにせよ、業務時間外にはメンバーが完全に業務を離れられるようにすべきだ。あなた自身がチーム内でそのお手本を示そう。研究によると、業務時間外に仕事をすると(残念なことに、米国人の3人に2人が業務時間外に仕事をしている)、内発的なモチベーションが弱まるという。燃え尽き状態にある人はそもそも内発的なモチベーションが極めて弱いことを考えると、その弊害はあまりに大きい。
燃え尽きを解消するためには、目先の対策を取るだけでは十分でない。また、あらゆるチームで有効な方法論が存在しないことも知っておくべきだ。その点、長期にわたって腰を据えて、本稿で紹介した戦略を組み合わせて実践すれば、燃え尽き状態に陥ってしまったマネジャーたちをサポートし、エネルギーを補充できるだけでなく、今後は燃え尽き症候群を寄せつけない状況をつくり出すことができるだろう。
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