AIを活用して新規事業を立ち上げ–起業家が意識すべき6つのポイント

 人工知能(AI)に関する実践的な知識を持つ技術者には、新しいビジネスを立ち上げる機会が豊富にある。所属企業のためにAIを構築して活用することもできるし、新規事業や副業として自分でAIを使用してもいい。

AIは次世代のスタートアップの中核にあり、新しいビジネスアイデアの創出から市場投入までの時間を大幅に短縮することで、機敏性と破壊的な優位性をもたらす。技術者は、このAIを活用する新世代のビジネスの構築と立ち上げにおいて、重要な役割を果たすことができる。

AIを原動力とするイノベーションが今まさに軌道に乗りつつあり、この変化によって、AIサービスを提供するスタートアップに非常に多くのチャンスが生まれている、とベンチャーキャピタル企業Andreessen HorowitzのSarah Wang氏とShangda Xu氏は語る。

「企業が抱える難題に先手を打ちながら、AI中心の戦略的取り組みを構築し、サービス重視のアプローチからスケーラブルな製品の構築へと移行するAIスタートアップが、この新たな投資の波を捉えて、大きな市場シェアを獲得すると考えられる」。両氏はこのように予測する。

スタートアップが提供できるAI製品/サービスの例には、「微調整を支援するツール、モデルの提供、アプリケーションの構築、専用のAIネイティブアプリケーション」などがあるいう。

ここでは、AIを活用してビジネスを構築したいビジネスパーソンのために、業界リーダーたちが指摘した考慮事項をいくつか紹介する。

1. 顧客理解の深化

AIを活用するスタートアップは、顧客をより深く理解できる可能性がある。製造、健康製品、旅行支援など、より一般的なサービスを提供するスタートアップや新規事業において、AIが極めて重大な役割を果たす最も重要な職務が、顧客理解だ。

何よりもまず、事業を立ち上げるそもそもの理由となった顧客の存在がある。「顧客を理解し、顧客と関わることがビジネスの成功の鍵だ。AIを活用した分析により、顧客の行動に関する深い洞察が得られ、自社の製品やサービスを特定のニーズと成果に合わせてカスタマイズすることが可能になる」。リコーのテクノロジー担当シニアバイスプレジデント兼北米デジタルサービスセンターの責任者を務めるBob Lamendola氏は米ZDNETにこう語った。

「AIは、顧客満足度やロイヤルティーの向上につながる新しいビジネスコンセプトの開発において、重要な役割を果たす可能性がある。これらは競争の激しい市場で関連性を築くための重要な要素だ」

2. デジタル経営コンサルタント

スタートアップは一般的に、経営コンサルタントに高額の料金を支払って、財務、マーケティング、流通に関するアドバイスを受ける余裕はない。AIベースのエージェントなら、さまざまな業界の学習で得た知見を基に、低コストで支援を提供できる可能性がある。

「AIをデジタル経営コンサルタントだと考えてみよう」。米ZDNETにこう語ったArina Curtis氏は、会話型AIツールを手がけるDataGPTの共同創設者で最高経営責任者(CEO)を務める人物だ。「AIは、膨大な量のオンラインデータを調べて、重要な洞察を引き出し、戦略を提案する能力が優れている。この点は、特に確立された業界において価値がある。トップ企業が何をしているのかを、AIを使用して分析し、理解できるからだ」

3. スタートアップ創設者のテクノロジーアシスタント

スタートアップは今や、テクノロジー人材を大勢集めなくてもAIサポートを構築することができる。少なくとも、最初のうちはそうだ。「事業を立ち上げる際の人員やリソースをAIによって抑えられるという面が最も印象的だ」。スタンフォード大学の講師であり、WorkeraのCEOと創設者でもあるKian Katanforoosh氏は米ZDNETにこう語った。

起業家は、技術者であろうとなかろうと、テクノロジー分野の人材やパートナーを探すことなく事業を始められる可能性がある。現在では、製品やサービスの設計を「コードではなく」生成AIによる自然言語処理を使って実行可能だ、とKatanforoosh氏は付け加えた。このアプローチにより、貴重な技術者を獲得する必要性が低下し、製品やサービスを考案して市場に投入する前のシードキャピタルや個人投資の必要性を軽減することができる。

4. 大きな視点で考える手段

AIは生産レベルの制御システムから経営の意思決定まで、あらゆるものを導ける可能性がある。「タスクを自動化するだけではない」とCurtis氏。「新たな機会の創出、役割の再定義、業界の改革が可能だ」

AIは「単なるテクノロジーのアップグレードではなく、戦略的な見直しだ」とCurtis氏は述べた。「AIは業務効率を高めて、顧客体験に革命的な変化を起こしている。これは、AIの登場前には想像できなかった製品、サービス、ビジネスモデルを生み出せるということだ」

5. アイデア生成装置

「ChatGPT」は起業家の間で人気のツールになった。これは「インターネットに精通したビジネスアイデアを生成する能力があるため」だと、TXIの最高イノベーションおよび戦略責任者であるAntonio Garcia氏が米ZDNETに語った。「オンデマンドプリントのTシャツビジネスを始めようと決意した起業家を想像してみてほしい。ChatGPTのようなAIがあれば、アイデアの創出から実行の段階へと移り、デザイン、マーケティング用語、さらには製造の複雑な詳細についての指導を受けることができる」

AIはさらにその先を行く。Garcia氏は米マサチューセッツ工科大学(MIT)の「Supermind Ideator」などの高度なアイディエーションラットフォームを引き合いに出し、次のように説明した。「これは、アイデアを生成するだけでなく、洗練させ、深化させるAIの潜在能力を例証するものであり、初期のビジネスコンセプトや他の課題のためのデジタルインキュベーターとして機能する。この文脈におけるAIは、単なるツールではなく、起業プロセスの共同パートナーだ」

現時点での生成AIは「熱心で能力が高いインターンに似ている。すぐに関与してくれるが、まだ複雑な問題のニュアンスを学習している段階だ」と同氏は述べた。AIの「真の力は、大量のビジネスアイデアを迅速に生成して、既存のコンセプトを批判的に評価し、新しいアイデアを既存の膨大な知識と組み合わせる能力にある」

6. 自動化への早道

自動化は長年にわたり、時間のかかる退屈なタスクの負担を軽減し、人件費を節約する手段を提供してきた。AIはこの能力を新たな次元に引き上げて、スタートアップが大規模組織と同じくらい急速に拡大することを可能にする。

「AIによる自動化は、運用のボトルネックを解消するだけでなく、新進の起業家にとって公平な競争環境を実現する」と5appの最高学習責任者(CLO)のSteve Thompson氏は米ZDNETに語った。「AIは定型的なタスクの自動化や高度なデータ分析の促進などによって、複雑なビジネス環境を乗り切るために不可欠な効率性と適応性という力をスタートアップに与える」

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