企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)への多額の投資を続けている。最高情報責任者(CIO)はそれによって大きな利点を得られる役職の1つだ。企業は投資対効果を最大限に引き出すために、豊富な知識を持つデジタルリーダーの専門的なアドバイスを必要としている。
コンサルティング会社Deloitteが実施した調査では、CIOという役職の地位が上がりつつあることが示されている。テクノロジーリーダーの約3分の2(63%)が最高経営責任者(CEO)の直属になったと回答しており、Deloitteはこの状況をCIOの「黄金」時代と評した。
1. ビジネスリーダーとして頭角を現す
Deloitte Consulting LLPのマネージングディレクター兼CIOプログラムエクスペリエンス担当ディレクターのAnjali Shaikh氏によると、CIOにとって今ほど刺激的な時代はないという。
「この数年でビジネスにおけるテクノロジーの役割が拡大したが、CIOがもたらす影響と価値はかつてないほど明白になった」とShaikh氏。
「テクノロジーは組織の中心にあり、この変化のペースに遅れずについていくことは、CIOの要件の1つにすぎない」
Shaikh氏は、テクノロジーの役割に対する認識が高まったことで、多くのCIOが待ち望んでいた機会が訪れている、と述べた。
しかし、同氏は米ZDNETに対し、価値の提供とは「難しい仕事」であると語り、デジタルリーダーを目指す人に複数の重要な分野でスキルを磨くようアドバイスした。
「CIOに対して、純粋な技術職という居心地の良い場所から抜け出すよう迫るプレッシャーが強まっているが、これはテクノロジーの価値のさらなる証明だ。CIOはその技術的基盤を発展させて、ビジネスリーダーとして頭角を現すことを求められている」とShaikh氏は語る。
「CIOは、コミュニケーションスキルの向上、組織全体での強固な協力関係の構築、業界と組織のニーズや目標に対する十分な理解に重点を置いて、あらゆるビジネス領域に価値をもたらす必要がある」
2. 強力な人間関係を築く
聡明なデジタルリーダーはビジネスを変えることができるが、適切な領域に集中する必要がある、と語るのは、テクノロジー専門企業CyberArkでグローバルCIOを務めるOmer Grossman氏だ。
Grossman氏は米ZDNETに対し、あまりに多くのテクノロジーマネージャーが未だにITに重点を置き、CIO職の根幹をなす情報の部分と同氏が呼ぶものには注力していない、と語った。
「CIOの立場を最大限に活用して、情報に対する説明責任を全面的に引き受けているなら、正しい道を歩んでいる。そうしなければ、生き残ることはできない」(Grossman氏)
テクノロジーを最大限に活用することは今もCIOの役割の大きな部分を占めているが、デジタルリーダーとしての長期的な成功は対人スキルにかかっている、とGrossman氏は述べた。
「関係を築かなければならない。信頼されるアドバイザーやパートナーになる必要がある」とGrossman氏。
「人間関係の管理と構築が必要だ。優れたソリューションを購入することはできるが、ユーザーに受け入れられなければ、導入を成功させることはできない。成否を分けるのは人間関係だ」
3. 多様性と持続可能性について見識を深める
グローバル人材紹介会社Nash SquaredのCEOであるBev White氏によると、デジタルリーダーシップの役割はほぼ常に変化しており、それは好ましいことであるという。
「過去10~15年におけるCIOの役割の変化は、おそらく他のどの上級職よりも大きい」。White氏はこのように述べ、クラウドコンピューティングが初めて導入されたときから、テクノロジーの進化のスピードが上がり続けているとの考えを示した。
「CIOは、急速かつ絶え間なく変化する状況への対処を迫られてきた。近年は人工知能の登場によって、その変化のペースがさらに上昇している」
White氏も他の専門家と同様に、CIOにとってこれほど刺激的な時代はなかった、と米ZDNETに語った。
しかし同氏は、CIOとして成功するには現代のデジタルリーダーシップの課題に立ち向かう必要がある、とも述べている。Nash Squaredの調査では、CIOが対応を強化すべき重要な分野として、多様性と持続可能性の2つが挙げられた。
「当社の『Pulse』調査では、両方の分野で多数のCIO(それぞれ72%と68%)が、進捗状況は6カ月前から変わっていないと回答している」。White氏はこのように述べた。
「しかし、2つの重要な戦略分野において、停滞は後退を意味する。CIOがこれらの分野で気運を高めて、基準を打ち立て、他部門の人々にインスピレーションを与える余地がある」
4. 同僚との連携を密にする
保険会社Hastings DirectのCIOであるSasha Jory氏は、デジタルリーダーの成功の定義が変わり、新進気鋭のITプロフェッショナルは共同作業に集中する必要がある、と述べた。
「以前は、テクノロジー戦略を知る上級幹部がいて、その人が手を振ると、大勢の従業員が物事を実行に移し、アイデアを現実のものにしていた」とJory氏は語る。
「現在では、ビジネス、顧客、テクノロジーを理解したCIOにならなければならない。また、モチベーションが高く、俊敏で、成果を出すことができる者を自分の周りに置く必要がある」
Jory氏は米ZDNETに対し、信頼できるデジタルリーダーになる人のタイプがこのように変化したため、ITプロフェッショナルがビジネス部門の同僚と対等な立場で関わる新たな機会が生まれている、と語った。
「孤立していては、成功は勝ち取れない。CIOとして成功するには、誰とでも協力して関わり合い、皆が適切な成果を出せるようにする必要がある」とJory氏。
「ビジネス部門と密接に連携しなければ、テクノロジートランスフォーメーションを主導することはできないと考えている」
5. 新しいテクノロジーを常に把握する
テクノロジーを専門とするExpereoでCIOを務めるJP Avelange氏によると、CIOの役割が拡大するにあたり、キャリア志向のITプロフェッショナルは新しい分野に踏み込む覚悟をしなければならないという。
「CIOの役割と責任が変化したが、その要因はイノベーションのペースと、テクノロジー支出に影響する、または直接的に支出を促すビジネス部門の役割の拡大だ」とAvelange氏は語る。
「この新しい文脈において、CIOはビジネスパートナーとみなされるべき存在だ。自らの重要性を維持するには、役割の範囲を拡大して、新たな要求に適応していくしかない」
CIOは、デジタルトランスフォーメーションの主導やIT予算の効果的な管理など、基本的な部分への対応を引き続き求められている、とAvelange氏は米ZDNETに語った。
しかし、CIOは価値をもたらして、新しいテクノロジーやプロジェクトへの投資の正当性を証明することも求められている。
「CIOが重点を置くべき対象が拡大し、人工知能や機械学習などの新しいテクノロジーを常に把握しておくとともに、それらのテクノロジーを既存のシステムやプロセスに統合する必要がある」とAvelange氏。
「多くのCIOがサイバーセキュリティ対策を指揮して、データの急激な増加に対処し、それらのデータをビジネスの洞察や意思決定に活用している」
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