2024年の調査で、米国の従業員エンゲージメントが依然として低いことが明らかになった。Gallupが7月に実施した調査では、エンゲージしている(仕事に熱意がある)従業員はわずか32%で、まったくエンゲージしていない(熱意がない)従業員は16%に上った。
Gallupはエンゲージメントのトレンドが重要であると指摘し、その理由として、生産性、従業員の定着率、顧客サービス、事故、仕事の質、収益性など、業績に関わる重要な結果と結びついている点を挙げた。
つまり、成功する企業は従業員が仕事に打ち込む状態を維持している。では、チームのモチベーションを保つ良い方法とは何だろうか。5人のビジネスリーダーがベストプラクティスのヒントを語った。
1. 活躍の場を与える
小売企業EtamでグローバルデータおよびクライアントIT担当ディレクターを務めるSophie Gallay氏は、チームメンバー全員の意見を聞き、各自が存在意義を感じられるようにするのが、優れたマネージャーだと述べた。
「私たちは皆、人間だ」とGallay氏。「トップダウンの指示に従うだけでは、満足感を得られない。自分の意見を聞いてもらう必要がある。最初から議論に参加する必要がある」
この課題を解決するために、戦略についての議論にチームメンバーを関与させている、とGallay氏は米ZDNETに語った。
「重役会での最上位戦略に関する議論には加わらないだろうが、少なくともさまざまなステップを伴う方向性についての議論には参加させる」とGallay氏は述べた。「運用チームを可能な限り関与させるようにしている。そのため、運用チームが会議に参加しない場合も、マネージャー全員にあらゆる意見に耳を傾けるよう伝える。それが非常に有益だからだ」
Gallay氏は、変革を成功させるのは個人ではなくチームだと語る。大規模イニシアチブの名目上の長である同氏のような上級管理職だけでなく、全員が存在感を示し、正当な評価を受けられるようにしているという。
「そのため、社内のコーヒーミーティングでビジネスチームにデータ変革について説明する場合、私は参加しない」とGallay氏。「参加するのは、私のチームでデータ変革に取り組むマネージャーだ。自分が取り組んでいるプロジェクトを紹介する機会を全員に与えたい」
2. 強い目的意識を作り出す
Francis Crick Instituteの最高情報責任者(CIO)であるJames Fleming氏によると、動機付けの最善の方法は、取り組むべき素晴らしいプロジェクトを与えることだという。
「私は良い課題を与えるように努めている。Crickでは、それは問題にはならない」。Fleming氏はこのように述べ、同機関が欧州最大の生物医学研究所の1つであり、病気の治療に取り組む1500人以上の科学者が在籍していることに言及した。
「エンジニアや技術者と長年一緒に働いて分かったことだが、何より彼らのモチベーションを高めるのは、興味深く、革新的で、新しいスキルの習得を必要とし、目的意識も与える良い課題に取り組むことだ」
Fleming氏は米ZDNETに対し、Crickで働く大きな利点は、毎日職場に行き、がんなど人間の病気の治療に貢献していると実感できることだ、と語った。
しかし、そうした長期目標によって素晴らしい目的意識が生まれるものの、その過程で達成すべき短期目標を設ける必要もある、と同氏は述べた。
「その取り組みを小さな塊に分割して、こう言えるようにしなければならない。『これこそが、現在この問題の解決に取り組んでいる理由だ。さらに大きな問題や機会とこのような関連がある』」とFleming氏。「現在行っている取り組みと長期的な目標のつながりがわかれば、モチベーションの創出がはるかに容易になると思う」
3. クリエイティブな手法を使う
Rakuten Advertisingで学習および開発部門の責任者を務めるDebra Bonomi氏は、クリエイティブな状態を維持することが動機付けの鍵だと述べた。
「『予測するのではなく、創造できることは何か。やりたいのに、そのための権限や権力を与えられなかったことは何か』を考えさせる」(Bonomi氏)
マネージャーは、そうした問いに対するクリエイティブな答えを考えさせる新しい方法を見つけるべきだ、とBonomi氏は米ZDNETに語った。
例えば、同氏はクリエイティブな思考を促すために、Safi Bahcall氏のビジネス書「LOONSHOTS<ルーンショット> クレイジーを最高のイノベーションにする」についての講座を開催している。同書はビジネスパーソン向けに、イノベーションの促進に役立つ特定の条件について解説するものだ。
「従業員が楽しいことを始められるように、読書クラブを立ち上げている」と同氏は述べた。「これまでと異なる学習方法であり、従来の講座では必ずしも取り上げられないスキルを強化することを目指している」
全社規模で開催されるこの読書クラブは、各セッションで対象書籍の特定の章に焦点を当てて、ディスカッションで参加者に自分の優先事項について考えるよう促す。
「『どんなルーンショット(一見ばかげているが世の中を変えるような画期的なアイデア)があるのか。何をやりたいのか。そのアイデアを形にして実現するために手伝えることはあるか』といったことを検討する」
4. 大きなパズルを完成させられるように手助けする
JP Morgan Chaseで全社のデータおよび分析製品の責任者とFusion by JP Morganの責任者を務めるGerard Francis氏も、動機付けの最善の方法は刺激的な仕事を与えることだと語るビジネスリーダーだ。
「皆、価値を届けることが好きだと思う」とFrancis氏。「迅速に行動して価値を提供し、自分の仕事がクライアントに及ぼす影響を目の当たりにすれば、聡明な人は刺激を受けるだろう」
自分の担当する個々の要素が大きなパズルの一部分にすぎないとしても、大規模プロジェクトに取り組む仕事を最も興味深いと感じることが多い、とFrancis氏は米ZDNETに語った。
「小さなピースで良い仕事をするのは難しい。成功は多くの場合、大きな問題を解決し、その解決策にさまざまなチームが貢献することで生まれる」と同氏は述べた。「すべてのチームが連携して大きな問題を解決することの価値を理解できれば、自分が正しい道を進んでいると感じられると思う」
5. 専門家になることを奨励する
保険会社Hastings DirectのCIOを務めるSasha Jory氏によると、マネージャーとして成功する人は、新しいこと、特にデジタルトランスフォーメーション(DX)のメリットについて、実地体験を通じて学ぶ機会を与えているという。
「常に新しいテクノロジーを前面に出し、それについて学ぶ機会を提供することが重要だ」とJory氏は述べた。「スキルセットに磨きをかける時間を確保する必要がある。それは大きなモチベーションになると思う。新しいテクノロジーを扱うことは、テクノロジー業界の人間にとって真のモチベーションとなる」
同氏は米ZDNETに対し、その学習プロセスの好例として、Hastings Directがアプリケーションのクラウド移行の際に「Microsoft Azure」を利用したことを挙げた。
「EY(Ernst & Young)やMicrosoftだけでなく、当社の既存のテクノロジーチームとも協力した。彼らは当初、Azureについて何も知らなかったが、当社の全アプリケーションをクラウドに移行できるようになった」とJory氏。「今では絶対的な専門家になったメンバーもいる。これらはすべて独学だ。彼らは勤務中に学習することを許されている。チャンスを与えれば、これほど優秀になるのかと驚かされる」
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