「Azureエッジ」で船に乗ったAI、人間を超えた機能とは

全4222文字 船舶用機器のJRCSが人工知能(AI)で航路を監視するシステムを開発した。AI機能を持つクラウドのエッジサーバーを採用し、航海時も使えるようにした。開発のためIT人材を採用し、デジタル変革(DX)を推進している。 (写真提供:JRCS) [画像のクリックで拡大表示]  「実証実験に参加した阪九フェリーの船長5人全員から、安全運航に役立つとの評価を得た」。山口県を拠点に船舶用制御システムを手掛けるJRCSの空篤司執行役員最高デジタル責任者(Chief Digital Officer)は、海上の危険を察知する人工知能(AI)システムの手応えをこう話す。  阪九フェリーとの実証実験は2020年8月に実施。同年11月16日、既存の船舶に後付けで導入できる製品として、状況認識システム「infoceanus command(インフォシアナス コマンド)」の提供を始めた。 図 JRCSが構築した状況把握システム「infoceanus command」 AIで海上の危険を察知(写真提供:JRCS) [画像のクリックで拡大表示]  infoceanus commandは航海士による海上監視を支援する。一般に航海士は航行中、常に双眼鏡で漂流物や漁網など海上の障害物を監視する。小型船舶も監視対象になる。船舶同士が互いの位置を知らせる「自動船舶識別装置(AIS)」を搭載していないからだ。監視業務は大きな負担となっている。  infoceanus commandは船上のカメラが捉えた映像をAIで解析し、物体を検出するとカメラ映像上でハイライト表示する。これにより監視業務の負担を軽減すると同時に、目視による見落としを防ぐ。  目視よりも物体検知の精度が高いという。特に夜間は海上の光点を検出・識別する技術により、赤外線カメラやLiDAR(ライダー)などの高額なセンサーを使わずに検出する。GPS(全地球測位システム)による自船の位置、AISによる他の船舶の位置、風向風速や潮流といった気象・海象の情報を取り込み、航海地図の画面に表示する機能なども備える。 図 infoceanus commandの「航路ナビ」機能 自船・他船の位置、気象・海象を海図に表示(写真提供:JRCS) [画像のクリックで拡大表示]  JRCSは2018年4月にデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進組織「JRC Digital Innovation LAB(DIL)」を設立し、海運業のDXを支援するプロダクトを開発してinfoceanusというブランドで展開している。米マイクロソフトのMR(複合現実)ゴーグル「HoloLens」を活用した船舶機器の操作の仮想訓練システム「infoceanus training」を2019年4月から、船舶のトラブルシューティング支援システム「infoceanus assist」を2020年6月からそれぞれ提供している。infoceanus commandは第3弾のプロダクトだ。 この記事は有料会員限定です。次ページでログインまたはお申し込みください。 次ページ 米国でのワークショップが契機に

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