札幌医科大学と富士通、個人の健康データの活用推進で合意

 札幌医科大学と富士通は、個人が健康や医療に関するデータを主体的に管理するヘルスケア領域のデータポータビリティーの実現に向けて、同大学の附属施設である札幌医科大学附属病院において電子カルテシステムに蓄積された患者の診療データ(Electronic Health Records、EHR)を含む個人の健康データ(PHR:Personal Health Records)を活用する取り組みについて合意した。

具体的には、医療機関が持つEHRを患者がスマートフォンから閲覧できる仕組みを構築し、2023年4月から運用する。これにより、患者自身による健康管理や病気の予防、医療機関による治療や予後管理における患者の健康状態の把握、さらには地域医療間連携の強化や患者エンゲージメント向上などを目指す。

取り組みの全体イメージ

取り組みの全体イメージ

アプリ画面イメージ

アプリ画面イメージ

札幌医科大学附属病院は、システム設計や運用を監修し、個人の健康データの活用に向けた環境整備を進める。EHRやバイタルデータなどの個人の健康データを活用することにより、患者の健康状態を詳細に把握できるようになる。また、北海道内の連携医療機関が同附属病院のEHRおよび患者が同意した個人の健康データを共有し、相互利用できるようになることで、北海道全体の医療の質向上も期待される。

富士通は、患者本人がEHRを個人の「iPhone」で閲覧できるアプリケーション、患者の健康データをクラウド環境で管理するヘルスケアデータ基盤を開発する。EHRの外部保存に際しては、次世代医療情報標準規格「HL7 FHIR」の国内における実装ガイド「JP Core」(FHIR JP Core 実装ガイドV1.1.1)に沿った形式に変換した上で保存する。

アプリケーション上では、個人情報や健康データの外部保存および利用範囲に関する同意を患者自身が選択できるようにする。富士通は、この同意取得管理に基づいてEHRと患者本人のiPhoneや「Apple Watch」で測定されるバイタルデータなどをヘルスケアデータ基盤へ集約する。

これにより患者は、自身の健康状態と併せて検査結果や薬の処方内容といった、これまで紙で病院から受け取っていた診療に関する情報をアプリケーションから時間や場所を問わず確認できる。

今後、札幌医科大学附属病院は、地域医療の基幹病院として道内の病院間によるデータ連携をさらに拡大していく。また、患者個人の健康データは札幌医科大学で実施している糖尿病治療に関する人工知能(AI)の研究開発や、これまでEHRを用いて実施していたAI研究への活用を検討していく。

富士通は、ヘルスケア領域のデータポータビリティーで集約した幅広い個人の健康データを最新のデジタル技術で有効につなげ、ライフサイクル全般にわたってパーソナライズされたヘルスケアの提供を目指す。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

Original Post>