心身ともに疲れ切っている時、新たな習慣を身につける方法

新しい習慣を身につけるのは、物事が順調な時でも一苦労だ。心身ともに疲れ切っている状態であれば、現状を変えることにエネルギーを投じるのは容易でない。筆者は、睡眠、栄養、運動というセルフケアの基本を忘れないことが、新たな習慣を身につけるうえで重要だと指摘する。


 物事がすこぶる順調に進んでいる時でさえ、新しい習慣を身につけるのに苦労することがある。ましてや疲労困憊している時に、何かを変えようとするのは容易ではない。

この2、3年、ほぼすべての人が限界までストレッチしてきた。気づけば消耗し、いまの状況を立て直せるという確信も持てなくなっている。あるいは単純に、どこから手をつければいいのかわからなくなっているのかもしれない。

活力を取り戻すには習慣の改善が必要だが、それを試みるだけの意志力もモチベーションも湧いてこないという悪循環に陥った時、どうすればよいのだろうか。

時間管理のコーチである筆者のもとを訪れる人々の多くは、すでに疲れ切っている。なかにはバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥っている人もいる。彼らは変わりたいのだが、どこから着手すればよいのかわからずにいる。それならば、彼らの現状を尊重しつつも、現状のまま放置することがないように、回復への道を探る必要があるだろう。

前進をサポートする時に大切なのは、非難しないことだ。彼らはすでに十分、自分を責めている。そうではなく長期的に最も効果があるのは、おだやかで全人格的なアプローチを取ることだ。睡眠、栄養、運動というセルフケアの基本を忘れないことが、時間管理の他の領域で前進するための土台になる。

疲れ果てている中でも変化を求める人のために、新しい習慣を持続的に確立していく方法を紹介しよう。

●まず睡眠を取ることから始める

疲労が極限の状態にある時、生産性を向上させるカギは、さらに頑張ることではなく、頑張らないことだ。十分な睡眠を取ることが習慣になると、身体はあなたの足を引っ張るのではなく、日々の目標を達成できるよう支えてくれるだろう。

疲労が溜まっている時の睡眠の習慣づけについて、筆者はある具体的な手順を推奨している。まず休息に必要な睡眠時間を基準にして、就寝時間を早める。もし8時間の睡眠が必要で、午前7時に起床しなければならないのなら、午後11時に消灯する。スマートフォンのリピートアラームを消灯の30分か45分前ぐらいの時刻に設定し、それを合図に、徐々にリラックスして眠りにつく準備に入る。

早めにベッドに入ることが身についたら、すみやかに入眠できるよう就寝前のルーティンを定める。就寝1時間前に電子機器を消す、夜遅くに刺激の強い番組等を見ない、単純に照明を暗くするなど、いろいろな方法を試してほしい。

睡眠の質を高めるための次のステップは、いつも同じ時間に起きることだ。ほとんどの人はそれを最初のステップにするが、実は後にしたほうがよい。

筆者がこの順序を推奨するのは、時間通りにベッドに入り、すぐ眠りにつけるようになれば、起きることがずっと簡単になるからだ。さらに付け加えるなら、いつも早起きしていれば、出社しなければならない日も苦労しない。

●栄養について考える

休息の時間を十分に取ると、他の領域の物事に取り組む余裕が出てくる。エネルギーを回復するために、睡眠の次に有効な習慣は、栄養補給に関してシンプルな戦略を実行することだ。

効果的な習慣の一つは、もっと水を飲むことである。水の摂取量が増えると、エネルギーが高まり、集中力が増し、疲労や不安が低減する。水の入ったコップか水筒を常にそばに置く習慣をつけよう。筆者は朝食時にコップに水を入れ、仕事中はデスクの上に置いて、飲むたびに補充する。補充が大変ならば、大きな水筒を用意して1日1回、満タンにするといいだろう。

次に、栄養を十分に摂れているかどうか考えてみよう。筆者のコーチングのクライアントの中には、仕事に没頭しすぎたり、ひっきりなしに会議が続いたりして食べる時間がない、あるいは単に食べるのを忘れてしまう人がいる。

あなたがそのような状態なら、栄養補助バーやプロテインシェイクなど、デスクに常備できる簡単な栄養補助食品を買っておこう。最低1日1個か2個食べることを目標にする。この習慣が身につくようカレンダーやスマホにリマインダーを設定したり、視覚的な刺激として健康によいスナックをデスクに置いたりしてもよい。

食事をすることを優先事項に定めたクライアントは、1日を通してエネルギーが高まり、仕事後の疲労感が軽くなったと言っている。

●体を動かす

睡眠と栄養という基本要素を整えたら、身体活動を取り入れることを考えてほしい。

直観に反するようだが、運動はエネルギーを消耗させるのではなく、最終的に1日を通してエネルギーを供給する。そのうえ、気分や睡眠の質、集中力を向上させるというメリットもある。ADHD(注意欠如・多動性障害)を持つクライアントは、運動は1日を通して集中力を保つのに欠かせない要素だと言っていた。

25分以上の強度の高い有酸素運動を最低週3回行うと、全体的なウェルネスが向上する。筆者は、「月、水、金の午前7時から7時30分まで、ジムでトレーニングする」というように、いつどこでその運動をするか具体的に定めることをお勧めする。

なかなかモチベーションが上がらなければ、友人と一緒にトレーニングする、クラスに入る、トレーナーにつくなどしてサポートを求めよう。疲れてやる気が出ない時は、他人のエネルギーやモチベーションを借りるという手もある。

最初からその強度の身体活動を行うのは大変だと思うなら、まず軽いストレッチやウォーキングから始めると、正しい方向に踏み出すことができる。「起床後に5分間、ストレッチをする」というように、運動を日課と結び付けると、習慣をライフスタイルに無理なく組み込むことができるだろう。

●新しい習慣を身につける

健康的な習慣を取り入れて疲労が大幅に低減したら、別の新しい習慣を選び抜き、生活の中に織り込んでいくことができる。睡眠、栄養、運動という基本を大切したことで日中のエネルギーと集中力が向上し、ほかのことにも取り組める力がついているはずだ。

ただし、過度の負担にならないよう、1度に1つだけ選んで取り組むことをお勧めする。たとえば、時間に遅れない、1週間の計画を立てる、プロジェクトを細かな作業に分解する、メールをためずにチェックするなど、取り入れたい習慣に的を絞るといいだろう。

そして、少しずつ変化を起こしていくことだ。たとえば、時間に遅れないことを習慣にしたいなら、1種類のミーティングを選んで、必ず数分前に到着するよう努力する。それから徐々に、プロフェッショナルや個人として生活を送る中で、他の活動へと範囲を広げていく。

習慣を変える時に大切なのは、特に疲れ切っている時はそうだが、ゆっくりと着実に進めることだ。前に進む一方で、自分にプレッシャーをかけすぎないよう常に心がける。

たった1日で自分の習慣のすべてを変えることはできない。しかし時間をかけることで、エネルギーを回復し、疲労を回避して、持続的な成長と発展への弾みになるような、新しい習慣を確立することができるだろう。

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