ひとり情シス・少人数情シスがブラックボックス化しない方法

 私は、ブラックボックス化という言葉を聞いたとき違和感を覚えることがあります。私自身が、「ブラックボックス化している」、「属人化していて、一人はリスクである」と言われることがありますが、一人になって放置されたサーバーで苦労した経験から、自分はそうしないよう心がけて環境を作ってきました。つまり、ブラックボックス化や属人化という言葉は、その状況を表すだけでなく、言葉を発する人から見た主観的状況を示すこともあるのです。主観が入ると、その人の情報量やスキルによって状況が違って見えるため、それが私の違和感になっていたようです。

実際に、ブラックボックス化していると言われていたシステムを覗いたとき、別に難しい状況ではないこともあれば、誰にも気づかれぬままブラックボックス化が進行している場合もありました。また、ブラックボックス化は、ひとり情シスだから陥りやすいというわけではなく、少人数の複数名情シスであってもブラックボックス化が発生する可能性はあります。そのあたりを理解しておかないと正しい対処ができませんので、まずはブラックボックス化という状況を正しく認識して、それを防ぐにはどうしたらよいかについて考えてみたいと思います。

ブラックボックス化によって何に困っているのかを把握する

ブラックボックスという言葉は、一般的に仕組みがわからないときに使う言葉です。そして、わからないが故にネガティブなイメージで使われることが多々あります。一方、技術が進歩して複雑化すればするほど、それを理解しやすくするためにブラックボックス化の発想が必要になります。極端なことを言えば、最近のシステムはブラックボックス化したモジュールを組み合わせて作っていると言ってもよいかもしれません。

重要なことはブラックボックス化によって何が困るのか、対策が必要なのか、対策が可能なのかを見極めることです。経験上、ブラックボックス化を指摘する状況の多くは、詳しい人がいなくなって不安であったり、経営層から有事の際に復旧できるかとの問いに明確に答えられなかったり、情シスから安心できる情報を得られない場合など、不安と情報不足と信頼不足に原因があります。状況調査不足や上司や経営者への報告を怠っていること、報告の仕方に問題があることといった、情シスの姿勢が情シスやシステムへの信頼低下につながり、ブラックボックスと表現されているのかもしれません。

ブラックボックス化したシステムや属人化した人そのものが問題視されがちですが、実際のところは、そのような状況を作りだしてしまう組織運営や文化、マネジメントに原因があることも少なくありません。システムの運営管理責任者が不明確であることや、ベンダー丸投げ体質によってもブラックボックス化しやすくなるでしょうし、職務記述書もなく課題や効率化などを現場担当任せにしていれば属人化しやすくなります。

しかし、企業文化や組織運営の問題だとしても、ひとり情シスがどうにかできることではありません。まずは今の状態のまま運用し続けられる(何かあっても復旧できる)環境を整え、安心と信頼を得ることを目指しましょう。私の環境にも、何をやっているのかわからないシステムはいくつもあります。しかし、状況の変化や機能追加の要望がない限り、その中身に手を入れる必要も構造を知る必要もないため、仮想化によってOS丸ごとバックアップをして、もしもの時にすぐに元に戻せる状態に留めています。

これまでの経験から、ブラックボックス化したシステムの中を紐解いて対処するよりも、業務との関わりや目的、入出力、必要な機能などを洗い出して、新しく作り直した方が長期的なコストも抑えられます。何より、新しいシステムを作る方が情シスのモチベーションも高まります。しかし、作り直しが容易ではない場合は、情報を集めて情シス側の見解とともに経営層に判断を委ねた方が良いでしょう。その際注意したいことは、何をやっているのかわからないままベンダーに丸投げして解決しないことです。見えなくなることで安心感は得られても、ベンダーに主導権を握られて多大なコストを強いられ、突然撤退されるなど、私はそれで苦労した経験があります。

ブラックボックスの環境を任されてしまったら

コロナ禍でITの重要性を経営者が認識したことで、突然ひとり情シスを任命される人もいるかもしれません。そのような状況では、全てがブラックボックスに見えることもあるでしょう。

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