リーダーは自社サービスを顧客の立場からチェックしているか – オンライン

サマリー:カスタマーエクスペリエンス(CX)の責任は、カスタマーサービスの担当者や、ユーザーインターフェースを構築するテクノロジー担当者が負うものではない。優れたCXを実現するために、組織をまとめる全社的なビジョン… もっと見るを示し、それを阻む障害物を取り除くことができるのはリーダーである。本稿では多くの企業が課題として抱えているCXの向上を図るために、リーダーはどのような考え方を持つべきか、またそのための5つの方法を提示する。

顧客の立場で自社のCXを評価しているか

言わば消費者の第六感だ。売り場で、電話で、オンラインで、購入や質問をするために企業とつながる時、人はその企業の環境を直感的に察する。顧客や地域社会を大切にする革新的な職場なのか、それとも顧客を尊重せず、企業文化が停滞しているひどい職場なのか、感覚的にわかるのだ。もちろん、直感など必要なく、企業文化がひと目でわかる場合もある。従業員が見るからに無気力で正しい情報を持っていない、オンラインのインターフェースがわかりにくいといったケースである。それがカスタマーエクスペリエンス(CX)だ。

CXは長年、カスタマーサービス担当者が最初の責任を負うと考えられてきた。最近はデジタルやバーチャルのインターフェースをデザインするテクノロジー担当者の責務と見なされている。いずれにせよ、経営幹部や意思決定者は主体的に関わってこなかった。CXの取り組みに十分な注意を払わず、よくて当然のものと考えているのである。多くのリーダーは自社のCXがいかに優れているか(あるいは劣っているか)を経験したことがなく、優れているか、少なくとも合格点だと思い込んでいる。

このように自社のCXに対して距離を置くことは、もう許されない。まず、CXとは、洗練されたユーザーインターフェイスを提示したり、カスタマーサービスのスタッフに最新かつ最高の分析プラットフォームを提供したりする以上のものであることを認識しなければならない。CXとは取引やエンゲージメントの仕組みだけでなく、その企業と接した時間に対する顧客の感情にも焦点を当てた包括的なものだ。その感情とは驚きなのか、喜び、失望、あるいは不満なのだろうか。顧客はこの会社と取引することに不満を感じていないだろうか。

多くの組織では、階層的なマネジメント構造とサイロ化された情報源、およびレベルの低いトレーニングや不十分なキャリア開発が、レベルの低いCXを生んでいる。そこで経営幹部と管理職は、顧客のニーズにより敏感に反応し、より共感する組織を構築する必要がある。

いまは顧客の知覚価値に基づいて成長と収益が変化する時代であり、価値の高いCXの提供は企業にとって戦略的な関心事だ。特に、顧客とのやり取りがデジタル化され、顧客との関わりがコモディティ化して非人間的なものになるにつれて、価値の高いCXの提供がよりいっそうの重みを持つ。

優れたCXを実現するために、組織をまとめる全社的なビジョンを示し、それを阻む障害物を取り除くことができるのは、ビジネスリーダーだけだ。人、プロセス、テクノロジーがCXを提供する方法について、ビジネスリーダーには次のような新しい考え方が必要になる。

・優れたCXの支援もしくは実現のために、全従業員および管理職のコミットメントを確保すると同時に、トレーニングを実施し、必要に応じてツールや顧客知識へのアクセスを提供する。

・共感と、優れた成果への揺るぎないコミットメントに報いる寛容な企業文化を構築する。

・人間の能力を補う人工知能(AI)ツールを活用した、高度につながり、統合されたインテリジェントなインフラを用意する。

多くの組織は、これらの領域で取り組みが不十分である。経営をつかさどるCレベルのエグゼクティブ300人を対象とした最近の調査では、積極的なデジタルでの対話、オンラインおよびモバイルのセルフサービス、チャットボットによるやり取りなど、高品質のデジタル体験を自社が顧客に提供できていると確信している人はわずか半分だった。筆者のジョー・マッケンドリックがインフォメーション・トゥデイとNICEの依頼で実施したこの調査では、過半数(59%)の人が自社顧客のファーストコンタクト・リゾリューション(FCR:初回解決率)を「悪い」または「十分ではない」と評価している。

企業が顧客との最初のコンタクトでつまずく理由の一つは、顧客との対話の「意図」を十分に理解していないからで、これが顧客サービスの低下につながり、最悪の場合は解約に至る。最近は対面だけでなく、オンラインでの顧客との接点が大量かつ多様になり、ゲームやソーシャルメディアアプリ経由の顧客からの期待も考えると、優れたCXの提供は特に難しい。

これからのCXのカギは、データを実用的なインサイトに変える力だ。一連の調査対象のうち、18%の先進的な企業は、完全に統合されたエクスペリエンスモデルをもとに、将来を予測する積極的なサポートを可能にしつつ、従業員チーム全体でインサイトやデータを共有できるようにしている。顧客とのコンタクトの段階で何かうまくいかないことが起きれば、CEOにもそれを共有する。こうした組織では顧客の行動やニーズの予測に役立つAIの活用も進んでおり、33%が自分たちはこの分野で「最大限に機能している」と考えているのに対し、後れを取っている組織で同じように考えているのはわずか5%である。

対話型のチャットボットや、顧客のアカウントに関連することを(決められた範囲内で)自律的に判断するシステムなど、CXを強化するAIアプリケーションは多岐にわたる。それらを駆使することで、カスタマーと接する担当者はより高度なタスクに集中できる。高度なタスクとはすなわち、製品の不具合やサービスの欠陥についてのフィードバックという重要な情報を事業部門と一貫して共有することである。ここからが、経営幹部の出番である。現場の最前線から上がってきた情報に製品開発、財務、ロジスティックスなどすべての関係者が確実にアクセスし、問題に対処できるように組織を適切に再構成することで、消費者からつくり手へと常にフィードバックが届くような仕組みを構築する。それができるのは経営幹部だけなのである。

たとえば、一定額の返金で特定の不満が解決できるなら、そこに人間が介在する必要はない。自動的に処理して即座に返金を承認すればよい。顧客満足度が低下する大きな理由は、問題を解決するまでのプロセスが長く、時間がかかることだ。AIのシステムやチャットボットで解決できない問題ならば当然、「折り返しご連絡します」という不可解なメッセージで対処するのではなく、状況を改善できる担当者へと即座につなげるべきである。

ウーバーやリフトに対して配車に関する揉め事を連絡すると、自動化されたチャットボットが問題解決を試み、実際に多くのユーザーに対して最初の連絡から数分以内に解決策を提示しており、ブランドの信頼感を高めている。問い合わせや問題の迅速な解決はブランドを構築し、不満を覚えた顧客を呼び戻す努力よりはるかにコストがかからない。

ここでもコンタクトセンターの担当者やチャットボットの管理者だけでなく、企業全体がCXのプロセスに関与することが重要になる。優れたCXに適した、オープンで前向きな文化を持つ企業は、先のNICEの調査ではわずか18%だった。予測に基づく積極的なサポートを可能にする、完全に統合されたエクスペリエンスモデルや、従業員チーム全体でインサイトやデータを共有することに重点を置いた企業文化は、組織の上層から現場まで、あらゆるレベルで顧客に焦点を合わせている。さらに、CXの卓越性だけでなく、業務の効率も追求している。CXの担当者が十分な権限を与えられ、データ解析やAIに基づくツール、トレーニング、コーチングにリアルタイムでアクセスできるのだ。

企業は、組織のあらゆるレベルで顧客に焦点を合わせ、既知および予期された問題と起こりうる未知の問題の両方に注目する必要がある。成熟していない組織は特に、顧客と現場でどのような問題に直面するかわからないため、既知の問題だけに取り組むようなスクリプトは逆効果になりかねない。さらに、CXだけでなく事業の効率化にも取り組む必要がある。AIや解析システムから得られる知見に基づいた行動が取れるよう、必要なツールやトレーニングを従業員に提供するのである。

テクノロジーの進化が今日のデジタルファーストでのCXを再構築しているとはいえ、重要なのはどこで最もインパクトを与えるか、ビジネスリーダーがチャンスをどう活用できるかである。AIは、インテリジェントなバーチャルアシスタント、センチメント分析、顧客の履歴と意図の分析など、優れたCXを提供するための選択肢を与えてくれる。

AIを用いることで、特定の顧客に関する膨大なデータを分析できるだけではない。顧客がカスタマーサポートに連絡した最新の問題や、そこでの提案や会話の内容をAIは理解して、顧客やその問題に対処している従業員に直接、円満な解決策を提案できるだろう。AIがなければ、問題を理解して、顧客が納得するような解決策を考えるために、文字通り数分から数時間かかるかもしれない。

経営幹部はCXに関するインサイトを磨いて、高度に統合された先進的なエクスペリエンスを形にすることができる。よりよいエクスペリエンスを提供するには次のような方法がある。

顧客重視の文化を構築する。多くの企業がこのような取り組みを行っていると主張し、あるいは目指しているが、ビジョンと現場の現実はかけ離れているものだ。経営幹部と管理職には、CXに技術や予算、リソース、トレーニングをより多く投じるだけでなく、会社が従業員やコミュニティにどのように接したいか、従業員自身がどうしたいかというビジョンを共有することが必要になる。

説明責任を求める一方で、優れたCXを戦略的に必要なものとして扱い、すべての従業員の仕事の重要な一部と見なす。前述のように、CXの課題は、コンタクトセンター、営業、ITの領域で完結していることだ。CXを「最高顧客責任者」「最高顧客経験責任者」など新しい正式な役職として確立させて、経営幹部に対して説明責任を負わせよう。企業のサイロを越えて取り組みを統一、または統合できる戦略家が説明責任を果たすことも重要だが、CXの責任と管理は、すべてのエグゼクティブ機能の一部に組み込まれる必要がある。CX担当という正式な職務をつくったとしても、従業員全員が最高顧客責任者として振る舞い、顧客に対して説明責任を果たさなけらばならない。

AIおよび関連するデータ解析を駆使して顧客のニーズや嗜好を予測し、より深く理解する。高性能の解析ツールやプラットフォームは、今後のCXの核となるパーソナライゼーションや個別対応を大規模なスケールで展開することができる。AIは市場からの需要や顧客のニーズの一部を予測し、ときには顧客の問題を先回りして予見する。チャットボット、自然言語処理、感情分析、予測分析、セルフサービスツールの組み合わせは、CXを次のレベルに引き上げる。

優れたCXのためにインセンティブを与える。報酬制度は、経営幹部の行動や意思決定を促す最も強力な動機付けの一つになる。多くの経営幹部にとって、報酬制度は特定の事業部門の業績や年間の成長に連動している。さらに、報酬や褒賞は、顧客満足度指数、カスタマー・エフォート・スコア(顧客努力指数)、ネット・プロモーター・スコア(顧客ロイヤルティを測る指標)など、従来の顧客サービス指標の狭義の側面と結びついている場合もあるだろう。CXは、デジタルのインターフェース、コンタクトセンターの従業員の対応、営業チームの統合、サービスのフォローアップなど、幅広い活動領域から生まれる。

顧客の立場に身を置く。高性能のデータ解析と同じくらい有益なのが、人間の知性である。従来のカスタマーサービスの指標は、顧客エクスペリエンスについてある程度のインサイトをもたらすが、ストーリーの一部しか語っていない。あらゆる部門の経営幹部は折に触れて顧客と直接対話し、自社を通した経験の何を顧客が好み、何が好きではないかをより深く理解する必要がある。カスタマージャーニー(顧客がたどる一連の経験)を経営幹部みずからがたどることも重要になる。みずから製品やサービスを購入し、さまざまなチャネルを通じて外部から自社にコンタクトを取ることで、実際のCXを肌で感じるのである。

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カスタマーエクスペリエンスは、経営の意思決定の中心に据えられるべきである。優れたCXを提供するためには企業全体での取り組みが必要であり、事業の成功がかかっている前提でCXに注力して、優れたエクスペリエンスを実現させよう。実際、企業の成功はCXにかかっているのだから。

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