人工知能(AI)を中心として生まれている新しいタイプの仕事が、よく聞く技術職やデータサイエンス職であるとは限らない。AI技術と直接関係のない仕事も、AIによって形を変えつつある。
AI時代には、テクノロジーを専門とする人にとって興味深い職務が新たに生まれているが、実績あるコーディングや統合のスキルをまだ捨て去るべきではない。むしろ、「従来型」のテクノロジー活動とされているものが、AIによって高速化し、生産性が向上する可能性がある。ビジネスユーザーにとっては、AI活用能力が極めて重要になるが、ヒューマンスキルをより重視することも求められる。
もちろん、進化する多数のテクノロジー関連職の中心には、AIがある。
「現在、AIに注力する役割の需要が拡大している」とAccenture OperationsのグループチーフエグゼクティブであるYusuf Tayob氏が語った。その需要拡大により、IT部門の内外でトレーニングのニーズが継続的に生じているという。「たとえばAccentureでは、現在までに60万人の従業員がAIの基礎に関するトレーニングを受けた。また、AIを導入したプロセスで効果的に作業し、AIを偏見なく公平に使用するためのトレーニングも実施している」
業界リーダーらは、AIとの連携によって得られる幅広い機会について、よく理解するように助言している。「AIの統合と応用、そして持続可能な利用方法に関して、企業の意思決定に役立つスキルを習得するには、今が絶好のタイミングだ」とJPMorgan Chaseの最高情報責任者(CIO)のGill Haus氏は述べた。「AI、ML、生成AIの仕事が増える見込みだが、その一方で、AIによって退屈な作業がなくなり、既存の役割の有効性や効率が向上することにもなるだろう」
最高経営責任者(CEO)にAIスキル開発に対する見解を聞いた最近の調査において、AIの台頭に関連のある多数の新しいスキルが取り上げられた。この調査はNada Sanders氏とJohn Wood氏が実施したもので、Harvard Business Reviewに掲載されている。「技術スキルが大きく注目されているが、企業に必要とされ、現在の市場で供給不足が明らかなのは、人間特有のスキルだ」と両氏は指摘する。
最も重要なヒューマンスキルは、「文脈を理解する能力だ。AIツールにはこの能力がない」と両氏は述べた。特に、リーダーらがAI集約型環境で重要視するヒューマンスキルには、2つのカテゴリーがある。「1つは、単純な対立の解決、コミュニケーション、感情を切り離すスキル、マインドフルネスの実践など、効果的な対人スキルだ。もう1つは特定の分野の専門知識であり、経験豊富な人材の間でその知識を維持し、経験の浅い若年労働者の間で知識を育むことに重点が置かれている」
技術的な見識とビジネスの知識の融合が、多くの場面で必要になりそうだ。Sanders氏とWood氏によると、これには「水平的コミュニケーションとイネーブリングレイヤーとしてのAIを用いた企業の全部門にわたる統合、すなわちサイロの排除」を実現する取り組みが含まれるという。
既存のタスクや役割が強化されるとともに、新しいタイプの仕事が生まれつつある、とMomntのプレジデント兼最高技術責任者(CTO)で共同創設者のBrian Lanehart氏は語る。「すべてが、データ、データ探索、データ分析と何らかの関連を持つ傾向にある。データ中心の役割を強調する職種が増えて、最新のAIツールやテクノロジーに精通した従業員が求められるようになると思う。たとえば、製品チームに入るのは、『ChatGPT』を理解して効率性の高いユーザーインターフェースを作り出せる人かもしれない」
Lanehart氏はさらに次のように語る。「この分野の人は、『Copilot』を使いこなしてコード作成の高速化と効率化を図らなければならない。今後登場する他のツールでは、ソリューションアーキテクトが問題(あるいは問題の解決方法のアイデア)をAIプラットフォームに説明すると、弾力的な拡張や実装が可能な略図が作成されるようになるだろう」
AIアプリケーションを構築する能力だけでなく、AIベースのツールを使用して作業を遂行し、成果を出す能力も重要だ。
「AIを日々の業務で使用し、そのようなツールを有効活用して、品質やチームの効率の向上に貢献できるエンジニアを求めている」とLanehart氏。「その理解の深さと使用経験の豊富さこそが、中級レベルのエンジニアと上位の役割を分けるものだ」
しかし、経営者は、かつては盤石だったテクノロジースキルの先を見据えている。「われわれが求めている現代のスキルセットは、過去に求めていたものと大きく異なる」(Lanehart氏)
以前の技術職の採用基準は、「その人は『Python』でコーディングができるのか。コードをコミットできるか。コードをプルできるか」だったとLanehart氏は説明する。「現在知りたいのは、Copilotのようなツールを使用してコードを改善できる人か、あるいはコード作成の高速化や効率化ができる人かどうか、という点だ。チームには、AIツールを使って多様なテストケースを生成してもらいたい。品質保証エンジニアには、AIによってさらに徹底的な評価をしてほしい」
ビジネススキルと基本的なテクノロジースキルの組み合わせが、経営者にとって極めて重要だ。「コーディングスキル、モバイル、デジタル、バックエンド、機械学習を切り捨ててはならない。これらには引き続き需要があるだろう」とJPMorgan ChaseのHaus氏は述べた。他にも次のようなスキルの需要があるという。「データ、クラウドコンピューティング、ソフトウェアエンジニアリング、顧客体験、デジタルデザイン、製品管理などだ。AIと生成AIには、それらのスキルがさらに必要になる」
AI時代の仕事には、実績あるビジネススキルとキャリアスキルも求められており、これには「好奇心、共同作業、顧客の問題解決への取り組み」などがある、とHaus氏は続ける。また、Chaseでは「ソフトウェアエンジニアリングの経験を持つテクノロジストの雇用」を実践しているという。
しかし、Chaseでソフトウェアエンジニアリングの仕事に就くために、大学のコンピューターサイエンスの学位が必要というわけではない。「決断力、回復力、適応力など、多種多様なスキルを評価している」とHaus氏。「顧客固有のニーズに応える解決策を生み出すというチームの能力が、拡大したことがある。それは喜ばしい経験だった」
重要なことだが、AIだけでは解決策を提供できない。それが可能かどうかは、AIを使う人間次第だ。「アプリケーションに関する要望をChatGPTのようなものに余さず伝えて、すべてのコードを生成させるには、ツールとその機能をある程度理解していなければならない」とLanehart氏は述べた。「それを達成するには、テクノロジーを全面的に受け入れて、身を投じ、学習してビジネスに応用するしかない」
JPMorgan Chaseは、このような新しい要件の一部に2つのイベントで対処している。その1つが、エンジニアによるエンジニアのためのカンファレンス「DEVUP」であり、これは「職務横断、アイディエーション、知識共有を重視している」とHaus氏は述べた。2つ目のイベント「AI Summit」では、「従業員が集まって、新しい研究やAIとMLのユースケースについて議論し、イノベーションを全社で推進する」
AIの導入を成功させるには、「人材がAIの機能を熟知し、最も効果的な活用方法を理解しなければならない」とSanders氏とWood氏は指摘する。「だが、AIは進化するテクノロジーであるため、システムに余裕を持たせて、学習の機会を確保する必要がある。導入の際には、『深い仕事』と『浅い仕事』を区別して、後者をAIに割り当てることも必要だ。ただし、深い仕事に関しては、従業員をトレーニングして人材リテラシーを開発しなければならない」
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