Coltテクノロジーサービスは12月9日、韓国の代替取引所(ATS)であるNextradeとの協業を発表した。併せて、インフラストラクチャーの拡充やNaaS、量子暗号技術を活用した次世代のネットワークサービスへの取り組みについて説明会を開催した。
Colt Technology Services 最高執行責任者(COO)のBuddy Bayer(バディ・ベイヤー)氏は「私たちは、世界40カ国で事業を展開し、50万kmを超える自社ファイバーを保有している。ネットプロモータースコア(NPS)は競合他社より高く、業界最高水準の品質とケアを提供できる」と自社を紹介した。
Colt Technology Services 最高執行責任者(COO)のBuddy Bayer(バディ・ベイヤー)氏(左)、アジア太平洋地域社長の水谷安孝氏(右)
「現在の市場は非常にダイナミックで常に変化している。そして変化のスピードはかつてないほど速い」(Bayer氏)と現状を捉えた上で、同社が現在主要分野と位置付けるのは(1)量子セキュリティ、(2)XaaS、(3)エッジコンピューティング――の3つ。
(1)は、サイバー攻撃が増加の一途をたどる中、セキュリティはほとんどの人にとって最大の懸念事項になっているとし、同社は量子暗号化の分野に積極的に投資する。Bayer氏は「最も安全な状態でサービスを提供することに注視し、サービスを提供する」と準備を整える。
(2)のXaaSは、「さまざまな業務がクラウドに移行することに伴い、柔軟性、セキュリティ、そして利用に応じた支払いが可能なNaaS(Network as a Service)の需要が高まっている。NaaSの導入率は今後数年間で50%に達する見込み」と、高い期待を寄せる。
(3)のエッジコンピューティングについては、「ハイパースケーラーだけでなく、地域のクラウドプロバイダーなども、エージェント型AIや推論機能をユーザーにより近い場所に置きたいと思っている。私たちは、ユーザーに近い場所で実行できるよう支援する通信基盤を提供できる」とし、3つ全ての分野において、「非常にいいポジションに付けている」と現状を分析する。
3つの重点分野を定めた上で、同社では「InfraCo.」「NetCo.」「ServeCo.」という3つの戦略を推進する。これにより、通信事業者としてだけではなく、企業を包括的に支援するデジタルインフラストラクチャー企業を目指すとした。
Coltの戦略
日本については、「世界的にデジタルインフラが変わっていく中、日本市場は特にその動きが顕著に出ている。市場としては中立的で、詳細までしっかりと把握できており、投資がしやすい。英国の本社から見ても、魅力的な市場になっている」(アジア太平洋地域社長の水谷安孝氏)と位置付けを明かす。
国内においては、(1)ハイパースケーラー、(2)エンタープライズ、(3)キャピタルマーケット――の3つを成長領域に定める。
日本国内における注力エリア
(1)では、クラウド、AIのけん引役であり、ネットワーク帯域の使用量が加速度的に増加する中、データセンター間接続、海底ケーブル陸揚げ局向け接続など長距離ネットワークを提供する。(2)については、拠点間接続ネットワークを中心に展開する。NTT東日本・NTT西日本と協業し、両社が提供する「Interconnected WAN」をColtサービスのアクセス回線として活用することで、サービスエリアを日本全国に拡大する。
NTT東日本、NTT西日本との協業
(3)については、「金融機関が必要とするネットワークに熟知している」(水谷氏)とし、日本取引所グループ(JPX)の海外取引参加者の80%以上をサポートしている実績を紹介した。
併せて、同日日本でも発表した韓国企業Nextradeとの連携では、機関投資家の取引を支援することを目的にしたもの。取引時間の拡大や低コストの取引実行に対する機関投資家の高まる需要を反映し、香港やシンガポールの投資家が抱える、両地域のビジネス時間内に韓国株式市場へ競争力のある価格で柔軟かつコスト効率良くアクセスできないという課題を解決する。
事業を拡大する一方で、西日本へのネットワーク拡張も進める。大阪~福岡間の長距離ネットワークを展開し、関西以西で22拠点を新設。地域インフラを強化する。
この西日本ネットワークは2026年1月から正式にスタートする予定だ。水谷氏は「日本は地震が多い国なので、太平洋側に何かあった場合、どのようにデータを逃がすかは大きな課題の1つだった。東京だけでなく、大阪、福岡まで自社のネットワークをつくり、提供していく」とし、既に引き合いもきていると述べた。
西日本へのネットワーク拡張
発表会では、Coltテクノロジーサービスの導入事例として、テレビ朝日とジェイ・スポーツの2社の取り組みも紹介した。いずれも現在同社が注力している映像・放送業界になる。
テレビ朝日では、オンデマンドのNaaS導入により、収録がない期間は回線切断でコストを削減し、低遅延・高品質な映像伝送と高いコストパフォーマンスを両立。一方のジェイ・スポーツでは、複雑化していたネットワークをシンプルにすることで運用コストを低減し、ネットワークと機器の運用・保守をColtに一任することで運用負荷を軽減できたという。
水谷氏は「こうした事例を築けたのは、日本の回線事業をしっかりと熟知した上で提供できているから。これを日本だけでなく、フランスやドイツ、英国など各国で提供できることが私たちの強み。お客さまがその国の事情を知らなくても、各国に精通したスタッフがお客さまのネットワークを支えられる。どの国でも同じことができる。日本企業が海外に進出する際の良きパートナーになりたい」とネットワーク面でのサポート体制を整えていることを強調した。
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