LinkedInがクリエイターモード、動画プロフィール機能、MSとの提携による新しいキャリアトレーニングツールを導入

世界中に7億4000万人のユーザーを持つソーシャルネットワークLinkedInは、プロフェッショナルが自身の職業をリストアップしたり、他の仕事のヘッドハンティングを受けたり、仕事を探したりするオンライン上の場としてのアイデンティティを確立している。しかしLinkedInは、そのポジションをさらに有効活用してトレーニングや教育、専門能力開発、人脈作り、ニュースなどの関連分野に進出する方法を数年にわたって模索してきた。そして米国時間3月30日、LinkedInはプラットフォームへのエンゲージメントを高めるために今後数カ月のうちに順次展開する一連の新機能を発表した。

同社はユーザーのプロフィールに動画を追加できるビデオ「Cover Story」をローンチする。ユーザーが自身について語り、自分のホームページ上で公開できる簡易動画の機能だ。また、LinkedIn上での自分の描写について誰もが正確に表現できるよう、性別の代名詞機能も追加される。

これと並行して、同社は新しく「Creator」モードを正式にローンチする。これは同社のインフルエンサーネットワークの、より洗練されていながらいっそう一般化されたバージョンとなる(選択すれば誰でもクリエイターになれる)。また、プロフィールに新機能のService pageを追加し、フリーランサーのためのプラットフォームとしての地位も確立しようと試みている。

LinkedInの教育およびトレーニングへの取り組みもいくらか強化されている。このプログラムは元々、新型コロナウイルスの影響による世界的な経済状況の変化を受け、LinkedInを所有するMicrosoftとともに2020年6月に開始された。同プログラムでは10の専門分野で無料のオンライントレーニングを提供しており、企業のトレーニングサービスの利用者が249カ国で3000万人を超えたため、サービス提供期間が2021年末まで延長されることになった。LinkedInとMicrosoftは、同プログラムを通じて人材を採用する企業の数が25万社に達することを期待している。

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Microsoftとの新たな提携として、LinkedInはTeamsを使用する学生を対象とした新しいTeamsベースのアプリ「Career Coach」も発表した。このCareer Coachは、LinkedInのAIツールを利用してユーザーが職業として何に興味があり、何を追求したいのかを特定するのを支援し、LinkedInやMicrosoftの学習コンテンツへのリンクを通じてその過程をサポートする。

総合すると、一見したところ共通点のなさそうな一連の発表はすべて、LinkedInにとっての大きな進展につながるものだ。ソーシャルメディアは、コンテンツの投稿者であっても、自分が共感できる投稿を閲覧するだけの人であっても、個人のエンパワーメントという意味で非常に大きな影響力を持っている。LinkedInは、こうした多様な機能や製品を通じて、個人のアイデンティティや声、自己向上といったものを独自の方法で自社のプラットフォームに取り入れようとしているのだ。

以下では、こういった新領域についてのより詳細な感想をご紹介しようと思う。

動画ベースのCover Storyは、より消費者向けのソーシャルメディアプラットフォームであればステータスとして投稿するような、自身についての短い動画を作ってみてはという発想から生まれている。経歴や学歴のリストは人物像の一部を物語るが、自撮りの動画によってその人の別の側面を伝える事ができ、情報のギャップを埋める事ができるという考えだ。

LinkedInのチーフプロダクトオフィサーであるTomer Cohen(トマー・コーエン)氏によると、このスペースを使って履歴書には通常載せることのない興味や願望を伝え、より人間らしい角度から自身を説明することができるという。これは人々がプロフィールを訪れたときに自動再生されるものだが、コーエン氏はこれを魔法世界の動く新聞「Daily Prophet(日刊予言者新聞)」になぞらえ「ハリー・ポッター」効果と呼んでいる。現時点ではユーザーのプロフィールに表示されるだけだが、将来的には検索結果に動画が表示されるようになるかもしれない。

かなり魅力的に思えるが、実際にリクルーターの注意を引くものを作り出すというより、フォーマットを上手く整えようとする人向けに偏っている印象だ。

皮肉なことに、就職活動の際に人々を過度にプロファイリングしたり型にはめてしまうようなものを排除する傾向があるにも関わらず、こうした動画を追加することによりその種の判断材料が再び生まれてしまうかもしれない。結局は動画がどのように適用され、活用され、評価されるかという部分が重要視されてしまうからだ。

LinkedInが動画に力を入れているのは、ここ数年の同社のメディアへの取り組みの一環であり、例えばライブ配信などのサービスをタイムラインに追加している。TikTok、Snapchat、Facebook、Twitterなど、ソーシャルメディアの幅広い領域で動画がどれほど定着しているかを考えれば当然である。

LinkedInや同社の事業と関連する分野でも同様の展開が顕著になりつつあるようだ。同社が実施した調査によると、求職者の約61%が、今後動画が従来のカバーレターの代わりになる可能性があると回答しており、人事担当者の80%近くが、候補者の審査で動画は重要な位置を占めると述べている。したがって、この新たな傾向は単なる可能性には留まらず、確実に必要なツールになっていくのだろう。

動画はプロフィール機能だけでなく、さらに大きな役割を果たしつつある。その一環としてLinkedInはCreatorモードをローンチし、すでにLinkedIn Liveの動画やその他のコンテンツを作っている人々が、プロフィールを一般のLinkedInユーザーではなくCreatorsに移行できるようにした。これはLinkedInが少数のソートリーダーに提供するインフルエンサータグとは異なり、ユーザーが自分で選択するものであり、LinkedIn上で「フォロー」されることで、他の人々が投稿内容を見たり、最新の情報を入手したりすることができる。

クリエイターをフォローするためにInstagramに行くのと同じ感覚で、エンターテインメントを求めてLinkedInを訪れるというシナリオは想像し難いものの、LinkedInのコンテンツを作ること自体が、見る側にとっても見られる側にとっても最終的な目的になるのだろう。

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LinkedInがDan Roth(ダン・ロス)氏率いる編集部門で構築してきたオリジナルコンテンツの展開は徐々に進められているようで、同社は2021年2月に、ロス氏が主導するCreator製品の最初のステップを発表した。ただしInstagramやYouTube、TikTokのようなプラットフォーム上のクリエイターとは異なり、今のところLinkedIn Creatorには収益化への直接のルートは存在しないようだが、状況は変わるかもしれない。

LinkedInのクリエイター戦略担当グループプロダクトマネージャーであるKeren Baruch(カレン・バルク)氏はQuentin Allums(クエンティン・アルムス)氏の言葉を引用しながら次のように語っている。「LinkedInでコンテンツを共有できるようにして以来、LinkedInはずっと間接的に人とチャンスを結びつけてきました。アルムス氏がLinkedInの動画を投稿し始めたとき、彼は失業中でお金もなく、絶望的な状況でした。しかしその後動画が大きな人気を集め、同氏はその成功からLinkedIn上で独自のビジネスを立ち上げる事ができたのです」。

「今後の可能性を検討する際には、メンバーからのフィードバックに耳を傾けながら、クリエイターのために価値を創造する方法を進化させていきます」とバルク氏は付け加えた。

Service Pagesは、LinkedInが2月に種をまき始めた製品やプロジェクトの起点でもあるようだ。LinkedInはさらに大規模なフリーランサーのマーケットプレイスを構成し、9月までには完成すると報じられている

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このような小さな一歩を踏み出した同社。決済の設定やそれに類する処理へのリンクはないし、FiverrやFreelancer.comのように、ビジネスを生み出すためのプラットフォームを提供することでもたらされる利益をLinkedIn自体は得ていない。今のところは単に状況を検証し、一部の人に経歴を入力してもらうための手段にすぎないかもしれないが、将来的にはプレミアム購読やリクルーターのためのツール、その他の広告という形ですでに存在する収益創出機能に加えて、新しい種類の広告ユニットや支払いサービスへの道として注目すべきものになっていくかもしれない。

最後に、LinkedInがプラットフォーム上の機会を民主化しようと大々的に取り組んでいることを考えると、フリーランサーがプラットフォームに投稿するためのリンク提供は、ナレッジワーカーだけでなくより多くの人に扉を開く可能性を秘めている。こういった人々が現在LinkedInユーザーの主要部分を形成してはいるものの、仕事の世界にはまださまざまな分野が存在し、同社は長期的に新たな分野へと取り組みを広げていくのだろう。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:LinkedInMicrosoftSNS

画像クレジット:Nan Palmero / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)