顧客体験価値向上へ!全社データ分析高度化に挑むローソンの新データ統合基盤

日本国内に約1万5000店舗を擁するコンビニ大手のローソンが、データ分析の高度化に注力している。24時間365日収集される膨大な販売データとサードパーティデータを掛け合わせた分析で顧客理解の深化を進めると同時に、パーソナライズされた顧客体験の実現を目指す。そのために取り組んだのが、データ統合基盤刷新による全社のデータ管理とKPI(重要業績評価指標)の改革だ。SAS Institute Japan主催コンファレンス「SAS Forum 2021」に登壇した同社の渡邉裕樹氏のセッションから、現行のシステム課題の解決と同時に取り組んだデータ統合基盤刷新の取り組みを紹介する。

“超ビッグデータ”分析の実現で、既存システム基盤が足かせに

かねてからコンビニエンスストア業界では、POS(販売時点情報管理)データや会員データ、サードパーティーが提供する外部環境データなどを組み合わせ、仕入れや陳列棚の整備、新商品開発に活用してきた。

ローソン ITソリューション本部コーポレートシステム部の渡邉裕樹氏(写真1)は、「コンビニでは多種多様なサービスが日々追加されます。ですから膨大なデータを管理・分析し、そこから得られた知見を最大限に活用していくことは不可欠で、そのスピードに追従できるデータマネジメント基盤が必要になります」と説明する。

写真1:ローソン ITソリューション本部コーポレートシステム部 渡邉裕樹氏

ローソンが擁するビッグデータは大きく、「Pontaカード」「dポイントカード」「LAWSON ID」から収集する顧客属性データ、店舗の立地状況などに関する店舗データ、そして商品データの3種類だ。これらのデータを掛け合わせて分析し、マーケティング施策の高度化や店舗開発、店舗経営の指導、流通の最適化を図っている。「こうした施策を実施するためには、商品開発部やサプライチェーン、店舗指導員、店舗オーナーにとって価値のある情報となるよう、分析を高度化する取り組みが欠かせません」(渡邉氏)。

ローソンが新データ統合基盤の構築に至った理由は、“超ビッグデータ”──既存のシステム基盤では膨大なデータ量の管理や高度な分析ができないからだ。現在、同社ではBIツールとして「SAS Enterprise Guide(SAS-EG)」を、簡易分析アドオンの「SAS Add-In for Microsoft Office(SAS-AMO)」を介して導入している。SAS-AMOレポートは100種類以上あり、全従業員が用途に応じて活用する。分析ツールとその活用に問題はなかったものの、課題を棚卸しした結果、以下のような実態が詳らかになったという。

●情報公開ルール/セキュリティ方針に対してシステムが追従できていない
●複数システムにデータが分散し、データ取得が煩雑化・非効率化している
●システム構築から長年経過し、ハードウェアの拡張/性能限界に達している
●データ量/データ種の増加にシステム構造が耐えられず処理時間が延伸している
●日次での実績集計を前提とするため、情報鮮度が向上しない
●データ連携・データ加工処理が複雑化している
●非構造化データ分析等の将来要件への柔軟な対応が難しい

渡邉氏は「1つのシステムを個別最適化し続けた結果、システム数が膨れ上がったり、ハードウェアが経年劣化していたり、データの急増にシステムの処理能力が追いつかずに処理時間が延伸していたり、音声データなどの非構造化データに対応できていなかったりと、課題は山積でした」と当時を振り返る。

課題と主要施策のマッピングで見えてきた刷新の方向性

これらの課題を解決するためローソンは、「METIS(Managerial Enterprise Transformation Intelligence System)」と銘打ったデータ統合基盤の刷新プロジェクトを開始。システム刷新にあたって最初に着手したのは、主要施策と解決ポイントの整理だ。以下の6つに整理して主要施策とマッピングし、目指すべきシステム論理構成を定義した(図1)。


図1:データ統合基盤刷新プロジェクト「METIS」の主要施策と刷新ポイントの整理。これらのマッピングを基に課題解決に最適な情報系システム論理を構成した(出典:ローソン)
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「業務ユーザーに即したデータ参照/分析ツールへの刷新」では、ライトユーザーとヘビーユーザーそれぞれに異なる分析ツールを用意する。また、「ユーザー認証認可/データアクセスの一元管理」では、数千人が利用するシステムであることを鑑み、アクセス権の設定とそれに付帯するセキュリティ認証などに取り組む施策を講じた。

一方、「ユーザーにとって利用可能な形式へのデータ加工/格納」は、ユーザーが利用しやすいデータ形式にすることを心がけたという。そのために、システム側でデータをクレンジングし、見やすい状態で格納するようにした。さらに非構造化データなどすべてのデータを1つに集約し、データレイクとして一元管理可能なデータ蓄積環境も構築。そこでは大量データに対して高速処理と高度分析が行えるよう、マシンラーニング(機械学習)の仕組みも必要になった。

これらを満たす基盤を構築するには、データ分析ニーズに応じて柔軟にリソースをスケール可能なクラウド環境が必須だった。同社ではクラウドストレージに「Amazon S3」、データ分析基盤として「Amazon Redshift」を採用。また、データ統合には「AWS Glue」を、マシンラーニング機能として「Amazon SageMaker」の導入を決めた。

一方、フロントツールには多くのユーザーが慣れ親しんでいることから、SAS-EGやSAS-AMOの利用を継続することにしている。

●Next:ローソンの今後のプロジェクトロードマップ

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