高いエネルギー効率で演算する「人間の脳」の再現に一歩前進

 スウェーデンのイエーテボリ大学(UoG)の研究者らは、メモリと演算機能を同じコンポーネントに組み合わせることに成功した。発振器ネットワークとメモリスタの接続に成功したのはこれが初めてだ。

これを発見したのはUoGと日本の東北大学の共同研究プロジェクト「Topspin」(Topotronic Multi-Dimensional Spin Hall Nano-Oscillator Networks)だ。この研究は、スマートフォン、ドローン、自動運転車といった幅広い分野でより高効率の技術を生み出す触媒となる可能性を秘めている。

「脳はエネルギー効率が高い。これに似た演算方法を見つけることが研究の目標だった。画像認識や音声認識のような認知タスクには、かなりのコンピュータ能力を必要とする。特にスマートフォン、ドローン、衛星などにはエネルギー効率が高いソリューションが必要だ」と話すのは、UoGのヨハン・オケルマン氏(物理学部応用スピントロニクス教授)だ。

オケルマン氏は、メモリ機能と演算機能を一つのコンポーネントに融合することで生み出される進化は、そのコンポーネントが脳の神経回路のように機能する新たな進化の入り口になると言う。

「こうしたコンポーネントは、脳のような重要なビルディングブロックになる可能性がある。認知演算のエネルギー効率が高くなるほど、可能な用途が増える」(オケルマン氏)

「イジングマシンなどの量子インスパイアコンピュータは、従来型コンピュータでは妥当な時間内または妥当なエネルギー消費量では解決できない種類の問題を解決することが証明されている。本研究の目標は、スピンホールナノ発振器の2次元ネットワークに基づく新しい完全磁気量子インスパイアイジングマシンを構築して比較することだ」(オケルマン氏)

プロジェクトの重要な発見の一つは、発振器ネットワークとメモリスタを結び付けたことだ。発振器と発振回路には、人間の神経細胞に匹敵する方法で複雑な演算を実行する能力がある。メモリスタにも、演算を実行するためのプログラミング可能な抵抗器として機能する能力がある。プロジェクトは、メモリスタを別の要素であるスピントロニクス発振器に統合できることを初めて示した。発振器の配列は、メモリスタ機能の不揮発性ローカルストレージと、ナノ発振器のマイクロ周波数演算を融合させる。これによって人間の脳の非線形振動神経回路を模倣できる。そう話すのは、東北大学の深見俊輔氏(教授、プロジェクトリーダー)だ。

「これまで人工ニューロンとシナプスは別々に開発されてきた。今回の研究は、2つの要素を一つに組み合わせるという重要なマイルストーンを示している」(深見氏)

発振器とメモリスタの統合は研究の大きな進化を表し、高いエネルギー効率が要求されるスマートフォンなどの広範囲に省エネルギーのメリットをもたらすとオケルマン氏は言う。

「演算のエネルギー効率がさらに高くなれば、スマートフォンに新たな機能がもたらされるかもしれない。その好例が『Siri』や『Googleアシスタント』のようなデジタルアシスタントだ。この演算処理には標準的なスマートフォンのサイズに対して多過ぎるエネルギーが必要なので、処理は全てサーバで行われている。これをスマートフォンでローカルに実行できるようになれば、サーバへの接続が不要になり高速かつ容易になる」(オケルマン氏)

スウェーデンと日本による「画期的」研究

UoGと東北大学の研究をさらに進化させるには、大きな課題が残っている。その一つは、配列とのインタフェース、個別の発振器の調整、組み込みメモリユニットの分野で実現可能な選択肢を見つけることだ。

UoGは、個別に制御される2つのメモリスタを使って4つの大型スピンホールナノ発振器(SHNO)チェーンを異なる同期状態に調整できることを試そうとしている。メモリスタゲーティングは、非従来型コンピュータのSHNO配列の状態を入力、調整、格納するための最適で高効率なアプローチと見なされている。

プロジェクトの重要な目標は、デジタル演算を発振器ネットワークベース演算に変えるトリガーとし、100GHzを超える周波数での演算を実証することだ。既存の回路では4GHz近辺で速度の限界に達してしまう。

UoGと東北大学の真の課題は、脳に着想を得たプロセスをエミュレーションできるエネルギー効率の高い人工ニューロンの開発速度を上げることだ。

スウェーデンと日本のパートナーシップが生み出した斬新な電圧制御スピントロニクスマイクロ波発振器は、人間の脳の非線形振動神経回路網を模倣できる。

https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/2204/19/news05.html

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