Splunk、日本で可観測性サービスの提供を本格化–新戦略を聞く

 Splunkは、7月にオブザーバビリティー(可観測性)サービス「Splunk Observability Cloud」の提供を日本市場で開始した。これによりセキュリティとオブザーバビリティーの2つの軸で顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する戦略を本格化するという。同社日本法人代表でエリアヴァイスプレジデントを務める野村健氏と、セールスエンジニアリング本部長の三船亜由美氏に話を聞いた。

–「Splunk Observability Cloud」が日本でも正式にローンチされました。

野村氏:Splunk Observability Cloudは、Amazon Web Services(AWS)の東京リージョンから順次提供しています。既に「Splunk Cloud」として、セキュリティとIT運用監視の機能をクラウドサービスで提供しており、これに加わる形です。

Splunk日本法人代表 エリアヴァイスプレジデントの野村健氏

AWS東京リージョンでのSplunk Observability Cloudの提供は、日本のお客さまに2つの面でメリットがあります。1つは、国内でデータを保持できる選択肢を加えることです。法規制の順守やセキュリティ上のルールなどから、日本のデータは日本で持ちたいというお客さまが安心してご活用いただけます。

もう1つは、通信の遅延上のメリットです。お客さまのシステムが日本のデータセンターあるいはAWSやGoogleなどの日本のリージョンにデータを保持している場合も、低遅延でサービスを提供できます。SplunkのObservability Cloudは、性能やリアルタイム性を重要な特徴の1つとしており、物理的に(サービス提供元データセンターと顧客システムの)距離が近いことで、必然的にスピードが速くなります。

サービスを開始する際に、お客さまのカインズ、東京証券取引所、パートナーさまとしてアクセンチュアなど8社から歓迎のコメントをいただきました。直前に開催したお客さま向けイベント(SplunkLive! Japan)で紹介したところ、複数のお客さまからも問い合わせをいただき、可観測性への関心の高まりを感じます。

–可観測性は、複数のベンダーがそれぞれのアプローチで製品を提供しています。Splunkの特徴や差別化を教えてください。

野村氏:製品単体では、先ほどのリアルタイム性に加えて、「NoSample」という独自技術によりサンプリングをすることなくデータを監視でき、また「OpenTelemetry」というオープンソースの業界標準技術を用いているため、ベンダーロックインもありません。

三船氏:世界ではSplunk Observability Cloudを2021年に発表しており、「検知」「対処」「根本原因」という3つの流れ、そして次のような機能の枠組みを持ちます。

Splunkセールスエンジニアリング本部長の三船亜由美氏

まずはお客さまのクラウド環境、オンプレミス環境などインフラ層を監視する「インフラストラクチャーモニタリング」(Splunk Infrastructure Monitoring)があります。Kubernetesやサーバーレスなどのテクノロジーを問わずインフラ層の全てをカバーします。それぞれの環境に特化したデータ収集機能、ダッシュボードなどが既に用意され、お客さまは自社環境に適したものをクリックして選ぶことで、環境監視を始められます。

次に、その上で動くアプリケーションを監視する「アプリケーションパフォーマンスモニタリング」(Splunk Performance Monitoring)があります。アプリケーション層を監視し、障害があれば、問題解決をあらゆる形で行えます。どこで・どのようなメソッドが・どのようなエラーを出しており、どこに影響を与えているのかの相関関係を分析できます。

Splunk Infrastructure MonitoringとSplunk Application Performance Monitoringを2軸として、実際のウェブサイト利用者と同じようなブラウザーの挙動をシミュレーションする「Splunk Synthetic Monitoring」なども用意しています。

インフラストラクチャーモニタリングやアプリケーションパフォーマンスモニタリングは、動いているシステムの環境を監視しますが、最終的にはサービスを使うエンドユーザーにとってどう見えているのかが重要です。エンドユーザーに優れた体験を提供するため、迅速な応答時間を達成できるのかなどの状況を見ることができます。

インフラストラクチャーモニタリングやアプリケーションパフォーマンスモニタリングで、どこにトラブルが起きているのかを細かく見ていきますが、最終的にログを見ることになり、Splunkが得意とするログ分析にたどり着きます。製品とSplunk Cloudがシームレスに連携できる点も特徴です。

可観測性は、クラウドネイティブなコンテナー上で動くマイクロサービスのみを対象に監視する仕組みと定義されることもありますが、Splunkは広い領域で考えています。多くの企業には、クラウドネイティブだけでなくクラウドに移行したアプリケーションやオンプレミスのアプリケーションなどが混在しています。われわれのサービスはこれら全てを対象とします。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

Original Post>