「コンポーザブル」な企業で重要性を増す技術者の役割

 デジタルサービスや開発ツールが増えたことで、APIやマイクロサービス、クラウドプラットフォームなどのコンポーザブルな構成要素を使用して、企業の設立や社内ベンチャープロジェクトの立ち上げが容易になった。別の言い方をすれば、ITインフラなしのITサービスが可能になったということだ。そのとき、技術者はどのような役割を果たすことになるのだろうか。

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実を言えば、「コンポーザブルビジネス」を実現すると、ITのプロフェッショナルやITマネージャーの仕事は増える。これらの人たちの仕事に、新たな次元が加わることになるためだ。適切な技術を発見し、テストし、導入し、更新する仕事は無くならない。GartnerのアナリストであるRajesh Kandaswamy氏は、コンポーザブルな技術の利用に移行することによって、「企業は戦略的なコンサルティング、ビジネスサービス、エンタープライズソフトウェア、最新技術、運用のサポートなど、あらゆるレベルで支援を必要とするようになる一方、不要になるものはほとんど無い」と指摘している。同氏の議論は、技術的な製品やサービスを担当する役員の役割についての話だったが、個々のITプロフェッショナルにも同じことが言える。

Salesforceの子会社であるMuleSoftでグローバルフィールド最高技術責任者(CTO)兼デジタルトランスフォーメションオフィス担当バイスプレジデントを務めるMatt McLarty氏によれば、コンポーザブルビジネスの出現は、IT開発のプロセスがより多様な人材と関わるものになることを意味しているという。筆者は、最近ニューヨークで参加したMulesoftの集まりでMcLarty氏の話を聞く機会があった。同氏はこのイベントで、同氏が長年にわたって広めようとしてきたトピックの今後の展望について語った。

「この動きは、開発者だけでなく多くのビルダーにも影響を与えている」とMcLarty氏は言う。「開発者の仕事はなくなるが、ビルダーの仕事は決して無くならない。これは、システムの安定性や相互運用性を管理する、ゲートキーパーやシステム思考を行う人の必要性は無くならないからだ。ただし、より多くの人が新しいビジネスのアイデアを持ち込めるようになるだろう」

McLarty氏は、オンプレミスのITが一切存在しない企業が数多く立ち上げられていると語った。特に、ClubhouseやLyftなどに代表されるデジタルネイティブなスタートアップに多いという。「本当にゼロからすべてを作る企業などない」と同氏は述べた。「彼らは基本的に、面倒な作業をやってくれるAPIを再利用することでビジネスを構築している。スタートアップはクールな新技術ばかり使っていると思うかもしれないが、実際には、いつでも使えるAPIを探している」

古くからある大規模な企業でも事情は同じだ。「企業がレガシーシステムをAPIによってコンポーザブル化していない場合も、デジタルエコシステムで機能を見つけてこようとするだろう」とMcLarty氏は言う。「それらの企業は、『Stripe』や『Twilio』、『Googleマップ』や『Amazon Web Services(AWS)』をインフラに使うかもしれない。彼らは、そうしたAPIを使ってビジネスを立ち上げている」

McLarty氏は、コンポーザブルビジネスを構築するにあたって重要なのは、「ものを繋ぐことだけではなく、それをどう繋ぐかだ」と述べている。「何かの一番手になることよりも、適応能力が高いことの方が重要だ。企業にとって、今の物事の変化は速すぎる。この3年間で、最も重要な能力は素早く変革する能力であることが明らかになった。そして、素早く変革するための唯一の方法は、環境を切り替えても利用できるコアコンピタンスを構築することだ」

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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