AI活用によるビジネスの成長–原動力は人間の知と技術の融合

 人工知能(AI)は人材の能力を拡張するものであって、従業員に代わるものではない。業界の専門家らは繰り返しそう主張している。よく挙げられる目標は、常に人間を介在させて、新興技術の世界におけるAIやエージェントの作業を監督、確認するというものだ。

しかし、事業成長とイノベーションの推進に取り組む際に、人間の介在とは実際にどのようなものなのだろうか。結局のところ、競争力をつけようと迅速に動いているときに、人間によるチェック&バランス(抑制と均衡)に重点を置くというのは、余計な介入であると受け止められかねない。

だが、Colgate-Palmoliveの最高データ・分析責任者であるDiana Schildhouse氏にとって、妥協はあり得ない。専門性の高い人材と技術的能力を結び付ける必要があるという。

「当社では、AIを用いたあらゆる取り組みに人間が介在する。このアプローチによって、従業員のプロセスを簡略化、高速化してビジネス価値を高め、最終的に消費者にとってより良い製品を作り出すことが可能になる」(Schildhouse氏)

同氏は米ZDNETの取材で、人間を常に介在させつつ、AIを活用した成長を支援する5つの方法を語った。

1. ビジネス課題に焦点を当てる

Schildhouse氏のチームは、世界各国のColgate-Palmoliveで、機械学習モデルや予測分析、処方分析など、AI活用ソリューションの構築、展開、組み込みを実施している。

同社では、企業の課題を解決するテクノロジーソリューションの構築に、人間中心のアプローチを採用しているという。

「その方法でビジネス部門と連携し、どのような業務をしているか、どんなプロセスなのか、テクノロジーをその取り組みにどう適用するかを深く理解しようとしている」(Schildhouse氏)

「当社のアプローチは、その理解から始まる。これは人間中心の設計によって実現する場合もある。使用するツールやインターフェースの視覚的要素に至るまで、膨大なUX/UI研究を実施することで、直観的に使用でき、当社の従業員の作業方法に合ったUX/UIを実現している」

例えば、マーケターはAIの活用を通じて、より良いアイデアをより多く、より速く利用できるという。マーケターはこれらのアイデアをテストし、自信を深められる。

「人間を介在させる仕組みは、当社におけるAI活用の構造の一部に過ぎない」とSchildhouse氏。「従業員は、プロセスに役立つツールとしてAIを使用しているはずだ。こうしたツールに仕事を丸投げしているわけではない」

2. 水平的な要素と垂直的な要素に取り組む

この探求的な取り組みの目標は的を絞ったイノベーションだ、とSchildhouse氏は指摘する。何百ものアイデアを出しても、選別して価値あるものを見つけ出せなければ意味がない。

Colgate-PalmoliveはAIを人間主導の枠組みで捉えており、これには水平的な要素と垂直的な要素が含まれるという。

水平的な要素とは、従業員の生産性向上や、価値ある情報を導き出す時間の短縮を目的として、同氏のチームが全社的に提供しているツールや基盤のことだ。

一方の垂直的な要素は、同社が優先的に探求する領域であり、これにはイノベーションも含まれる。

「両方の側面が同時に動いている。中央組織が打ち出す取り組みは重要であり、計画的に事を進めていきたい。つまり、パイロットから始めて、グローバルに拡大していく」(Schildhouse氏)

「中央組織から示された領域のうち、われわれが当社の最優先事項だと判断したのは、イノベーションや需要創出などだ。私のチームでは、全社的に適用可能なソリューションを理解して構築するという観点から、これらの領域に力を入れていく」

3. ローカルでの活用検討を促す

Schildhouse氏は重要な点として、グローバル組織のローカルチームが新しいユースケースを開発し、洗練させられることも不可欠だと述べた。

 「従業員にも活用方法を探ってほしい。というのも、われわれが提供する水平的なツールによって、チームの生産性向上と進歩に大いに役立つ機会を得られる可能性があるからだ」(Schildhouse氏)

 このような技術の実験を人間中心にするためには、探究の安全性が担保された環境を設ける必要がある。

 Colgate-Palmoliveでは、この環境が「AI Hub」と呼ばれている。AI Hubは、従業員がAIアシスタントやアプリを利用し、テストできる社内プラットフォームだ。

「非常に早い時期に、われわれのチームがAI Hubを構築した。これは社内版の生成AIツールだ。当社は、ガードレール付きの管理された方法でこのアプローチを採用した最初の企業の1社だった。AI Hubにアクセスする従業員は、トレーニングを受ける必要があった」とSchildhouse氏。

「現在では、部門や職能を代表するAIアンバサダーのコミュニティーが世界各地に形成され、つながりを維持している。従業員が安全なサンドボックス内でアイデアを試してから、全世界に共有できるため、素晴らしいアイデアが数多く生まれている」

4. 学習の文化を確立する

Schildhouse氏は、ガバナンスを受け入れることが、人間を介在させつつAIイノベーションによってビジネスの成長を実現する最善の手段だと語る。

他のビジネスリーダーが先ごろ米ZDNETに語ったように、ガバナンスは、適切に扱えば、新興技術の導入を成功へ導く手段になり得る。

「あらゆる取り組みにガードレールを設けてリスクを管理し、AIを安全かつ倫理的に、当社の価値観と社内ガイドラインに沿った形で利用するよう徹底している」。同氏はColgate-Palmoliveのアプローチに関してこのように述べた。

先述のように、業務でAIを使用する従業員は、トレーニングプログラムの受講を義務づけられている。2021年4月に入社したSchildhouse氏は、そのメリットを以下のように説明した。

「Colgateには強固な学習文化がある。入社して最初に気づいたことの1つは、従業員が新しい技術やスキルを伸ばす方法を積極的に学ぼうとしていることだ。そこでトレーニングを必須にしたが、誰もがすぐに受け入れて、AIを使うことに心を躍らせていた」(Schildhouse氏)

「トレーニングはガバナンスを管理する1つの手段だと考えている。野放しにしてAIツールを自由に使わせるわけにはいかないからだ。リスクについても考慮する必要があるため、適切なガードレールを導入した」

5. 価値の測定に注力する

Schildhouse氏によると、全体的な目標は明確であり、分析やAIを人間の理解や洞察と融合させることで、ビジネスの成長とイノベーションの実現を目指しているという。

「要は、データに基づく意思決定だ。ビジネスチームが分析ツールとAIを活用して、より良い判断をより迅速に下せるように支援している」

Schildhouse氏は入社当時、これらの目標を戦略的に達成する方法と、ビジネス部門にとってのメリットを生み出す方法について考えなければならなかった。

同氏はAIとデータ分析がビジネス課題をどのように解決できるかを見極めるための重要な問いを立て、自身のチームが開発したソリューションの有効性を複数の重要な分野で継続的に測定するフレームワークを作成した。

「まず、われわれの取り組みは増収につながっているだろうか。価格分析など、前後の分析が可能な対象の場合は、やや測定しやすい」(Schildhouse氏)

「もちろん、われわれが開発したアプリケーションによって実現された時間の節約や、洞察の獲得の迅速化といった一般的な効率向上もある。知的財産の創出も考慮する。つまり、社内でツールを開発して、コードを書き、アルゴリズムを所有するのであれば、それが当社の資産ということになる。次に、そのアプローチを市場全体に拡大できているかどうかを考える」

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

Original Post>

Enjoyed this article? Sign up for our newsletter to receive regular insights and stay connected.

Leave a Reply