NICT、複数のセキュリティ情報から深掘り分析などができる新機能

情報通信研究機構(NICT)は、6月15~17日に開催の「Interop Tokyo 2022」に出展し、セキュリティ情報融合基盤「CURE(Cybersecurity Universal REpository)」の最新機能を披露した。かわいらしい動きもする。

CUREは、さまざまなセキュリティ関連情報を集約し、横断的な分析を行うためのプラットフォーム。NICTは、無差別型サイバー攻撃の観測・分析基盤「NICTER」、標的型サイバー攻撃の統合分析基盤「NIRVANA 改」、標的型サイバー攻撃を誘引して分析を行う「STARDUST」などを運用しており、これらとNICT外部の各種情報を統合的に活用するために開発が進められている。

「CURE」はさまざまなサイバー攻撃情報を集約する基盤になる「CURE」はさまざまなサイバー攻撃情報を集約する基盤になる

Interop Tokyo会場で説明したサイバーセキュリティ研究所 サイバーセキュリティ研究室長の井上大介氏によると、従来は各種の情報を個別に管理、活用していたが、各種情報を統合的に利用できるようにすべく2015年に構想し、2019年のInterop Tokyoで初披露した。サイバー攻撃の中身は非常に複雑な構造であるため、適切に対処するには、散在している情報を統合的かつ横断的に分析して、攻撃の全容を詳しく知る必要がある。

「CURE」の歴史。集約可能な情報ソースが増え続けている「CURE」の歴史。集約可能な情報ソースが増え続けている

CUREでは、多彩な情報と膨大な量のデータを利用して高速に分析するために、現在は約4TB規模のRedisのインメモリーデータベース処理を行っているという。2019年のリリース時は、まず「Artifact(観測情報)」としてNICT独自の観測情報を集約するものだったが、2020年には「Semantics(分析情報)」として外部のサイバーセキュリティ関連ニュースやブログ、脆弱性情報、サイバー攻撃の戦術や手法に関する公開情報「MITRE ATT&CK」なども集約できるように進化している。

最新版「CURE」の画面。水色が「Artifact(観測情報)」、オレンジ色が「Semantics(分析情報)」、ピンク色が「Enricher」で表示されている最新版「CURE」の画面。水色が「Artifact(観測情報)」、オレンジ色が「Semantics(分析情報)」、ピンク色が「Enricher」で表示されている

2022年版のCUREでは新たに、ArtifactにおいてNICT内のインシデント対応チーム(CSIRT)の「NICT-CSIRT」の管理情報(Trouble Ticket)、Semanticsにおいてリフレクション攻撃の解析情報(AmpPot)やメールに添付されたマルウェアの解析情報(Malmail)を集約できるようにしたほか、セキュリティ侵害指標(IoC=Indicators of compromise)では、従来のIPアドレス、ドメイン名、マルウェア情報に、メールアドレスを追加している。

さらに、ArtifactやSemanticsのさまざまなデータに付加的な情報を与えるデータエンリッチメント機能の「Enricher」を実装した。

従来のCUREでは、データの関連付けを完全一致するIoCで行っていたが、今回のEnricherでは、例えば、特定のIPアドレスと似た活動をしているIPアドレスというような柔軟な関連付けができるようになり、「大規模な探索行為をするIPアドレス群の把握」といった分析が可能になった。さまざまに応用できるとし、例えば、IPアドレスやメールアドレスに悪性度のスコアを付与するといったことも行える。

「Enricher」の搭載により、情報分析などの柔軟性が飛躍的に向上した「Enricher」の搭載により、情報分析などの柔軟性が飛躍的に向上した

特定のIPアドレスからこれと似た特性を示すIPアドレスを調べていくデモ特定のIPアドレスからこれと似た特性を示すIPアドレスを調べていくデモ

詳細情報の表示。「Enricher」で検索したIPアドレスに関する情報ソースを視覚的に表示している詳細情報の表示。「Enricher」で検索したIPアドレスに関する情報ソースを視覚的に表示している

分析結果の様子。関連性のあるIPアドレスのリストと関連度合いがスコアで示している分析結果の様子。関連性のあるIPアドレスのリストと関連度合いがスコアで示している

また今回は、Enricherの可視化の開発にも注力したといい、CUREの画面に表示されるEnricherがコミカルに一回転する「Kuru-Rin-Pa!」動作を実現した。井上氏は、担当者が心血を注いでこの動きを実現させたとのエピソードを披露し、会場の聴講者から“静かな”笑いを集めていた。

今回の開発では「Enricher」の視覚的な動きもこだわった(?)という今回の開発では「Enricher」の視覚的な動きもこだわった(?)という

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