日立、製造業の属人的なノウハウをデジタル化する「WIGARES」、業務に必要なデータを自動で提供

日立製作所は2022年4月13日、業務ナレッジ管理ソフトウェア「WIGARES(ウィガレス)」を販売開始した。製造業における属人的な業務ノウハウをデジタル化し、業務の遂行に必要な一連の情報を、適切なタイミングで業務ユーザーに自動で提供するシステムである。熟練者の暗黙知をデジタル化して共有するとしている。

 WIGARESは、属人的な業務ノウハウをデジタル化し、業務の遂行に必要な一連の情報を、適切なタイミングで業務ユーザーに自動で提供するソフトウェアである。例えば、「業務Xを遂行するためには、業務情報A、B、Cが必要で、A→B→Cの順番でデータを参照する必要がある」といった通知を、業務の遂行に必要なデータとともに、自動で受けられる。

背景には、製造業の業務ノウハウは属人化しているという事情がある。製造業は、熟練者の技能伝承などの課題に対し、業務手順のマニュアル化や新システムの導入、書類の電子化によるデータの整理、などに取り組んできたが、「どの情報が必要で、それらの情報がどのシステムに保管され、どの順序で参照すれば業務が遂行できるのか」という業務ノウハウが属人化していた。組織として有効に共有・活用できていないのが実態だった。

要素技術として、日立製作所が開発した「構造化情報一元管理技術」(SIMT)を活用する。特徴は、(1)「構造化ID」、(2)「関係リンク」、(3)「自己学習」という3つのコア技術を使って、業務ノウハウをデジタル化することである(図1)。

図1:業務ナレッジ管理ソフトウェア「WIGARES(ウィガレス)」の概要。「構造化ID」、「関係リンク」、「自己学習」という3つのコア技術を使って、業務ノウハウをデジタル化する(出典:日立製作所)
図1:業務ナレッジ管理ソフトウェア「WIGARES(ウィガレス)」の概要。「構造化ID」、「関係リンク」、「自己学習」という3つのコア技術を使って、業務ノウハウをデジタル化する(出典:日立製作所)
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(1)まず、複数の業務システム(DCS、MES、設備管理システム、予兆検知システム、ファイルサーバーなど)に散在している各データ(計装の信号情報、アラーム・イベント情報、CSVや表ファイルのレコード、文書ファイルなど)に、構造化IDを付与し、データの意味合いを定義する。

(2)さらに、構造化IDを業務シーンに結び付けて定義する(関係リンク)。これにより、業務ノウハウをデジタル化する。

(3)関係リンクを登録していない事象については、構造化IDを付与済みの任意のデータを検索し、検索結果から自動で関係リンクを定義する(自己学習機能)。これにより、次に同一業務を遂行する際には、検索することなく、必要な情報を参照可能である。

WIGARESの販売に先立ち、実証実験も実施済み。2021年12月から、国内の大手製造業が実証実験に取り組んでいる。この結果、設備にトラブルが発生する兆候を捉えた際に、処置判断に必要となるマニュアル、設計図書、保守情報などを、それぞれのデータを格納している各システムから自動で取得し、これらデータの参照手順とともにユーザーにプッシュ通知できることを確認した。

日立製作所は今後、国内の製造業に幅広く提供するとともに、クラウドサービス化や、異常発生時の自動運転制御などの機能拡充を実施する予定である。また、日立製作所の各種サービスとWIGARESを連携させることで、CPS(サイバーフィジカルシステム)の構築によるプラント操業自動化を目指す。

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