新しい働き方へ─デジタルワークプレイスの確立でITリーダーがなすべきことは?

2年以上に及ぶコロナ禍が企業の働き方と働く場所に大きな変化をもたらしている。リモートワークやWeb会議システムなどのデジタルワークプレイス/デジタルワークスペース技術・製品はコロナ禍での事業継続で大きな効果を実証し、ネクストノーマル=この先の業務環境においていっそう重要な役割を果たすことになる。2021年12月1日開催のIT Leaders Tech Strategy LIVEウェビナー「2022年以降の『デジタルワークプレイス』(主催:インプレス IT Leaders)に、IDC Japan シニアマーケットアナリストの渋谷寛氏が登壇。先を見据えたデジタルワークプレイス/ワークスペース戦略策定の重要性を訴えた。

デジタルワークプレイス/ワークスペースの定義

コロナ禍でビジネスのあり方が大きく変貌する中、新しい働き方を実現するデジタルワークプレイスへの関心が高まってきた。IDCでは、デジタルワークプレイスを確立する方法やリーダーがとるべきアクションを「Future Enterprise(未来の企業)」というフレームワークの中で具体的に設定している。

写真1:IDC Japan PC, 携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの渋谷寛氏

IDC JapanのPC, 携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの渋谷寛氏(写真1)は次のように説明する。「“ネクストノーマル”=次世代のビジネスに求められる常識を実現するためのキーワードは、サステナビリティとレジリエンシーです。特にデジタル技術を活用して外部環境変化に適応し、ビジネス機会を見つけ、成長を実現するデジタルレジリエンシーが重要です。Future Enterpriseはそのためのフレームワークになるものです」(図1


図1:IDCが構想するFuture Enterprise(未来の企業)フレームワーク(出典:IDC Japan)
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IDCのFuture Enterpriseでは、企業が取り組むべき9つの事業項目を設定している。その中で、クライアント仮想化やデジタルワークプレイス/デジタルワークスペースに関わる項目が「働き方の未来」「信頼の未来」「デジタルインフラストラクチャの未来」の3つだという。そのうえで渋谷氏は、デジタルワークプレイス/デジタルワークスペースの定義、用語としての違いについてこう解説した。

「IDCでは用語の使い分けとして、アプリケーションやデスクトップに価値を付加して提供する“テクノロジーのフレームワーク”がデジタルワークスペース、テクノロジーを指し示す“場所”がデジタルワークプレイスと定義しています。一般的には、両者は同じように使われており、国内ではデジタルワークスペースが、海外ではデジタルワークプレイスが使われることが多い傾向があります」(渋谷氏)

クライアント仮想化技術の発展がデジタルワークスペースを形成

渋谷氏は、デジタルワークプレイス/デジタルワークスペースについて、クライアント仮想化技術の発展の歴史を振り返りながら説明を加えた(図2)。


図2:クライアント仮想化の進化と導入背景の変遷(出典:IDC Japan)
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同氏によると、クライアント仮想化は、東日本大震災や働き方改革、ゼロトラスト、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)といった時代ごとの事象に対応するかたちで各種の技術・技術が普及してきたという。サーバー側で運用するVDIやSBC(Server Based Computing)、オフィスの自席にあるPCにリモートから接続するRDPやアプリケーション仮想化、セキュアブラウザ、Linuxベースのコンテナ技術、USBキーを使った仮想化ソリューションなどだ。「これらが技術の進化と共に、デジタルワークスペースという分野が形成されました」(渋谷氏)

IDCでは、各種技術・手法を、VDIやSBCなどの「コアテクノロジー」、音声や動画などの「関連技術」「エンドポイント」「プラットフォーム」「ネットワーク」の5つに分類している。そして重要なのが、それらにかかわる「セキュリティ」と「ユーザーエクスペリエンス」だという。

「一般的なOA業務やCAD/CAE、金融機関での専用端末、コールセンターなどさまざま業務や用途で利用するテクノロジーがデジタルワークスペース。そして、クライアント仮想化技術を根幹に、業務環境をさまざまな場所に広げたのがデジタルワークプレイスです。これらが今後さらに進化すると、ハイブリッドのかたちで各社ごとに最適化した業務環境を作り込む世界となります」(渋谷氏)

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