拡張性・管理性が大幅に進化した“次世代クラウド・デスクトップ”とは

柔軟で拡張性に優れたDaaSに人気

 仮想デスクトップ(VDI)は、従業員のデスクトップ環境を標準化し、セキュリティとガバナンスを強化できることから、多くの企業が採用している。仮想化技術の応用で、統合的に管理でき、柔軟性・拡張性にも優れている。

「VDIを整備する方法としては、従来の“オンプレミス型VDI”のほか“クラウド型VDI”も人気が高まっています。オンプレミス型VDIは、カスタマイズ性や長期的な投資対効果が高く、高い性能を必要とする業務や、利用方法があまり変化しないような業種に向いています。しかし相応の初期投資が必要で、運用には高度なノウハウが欠かせず負荷も高いのが課題です。また新型コロナウイルス感染症のような急な環境変化への対応が難しいことから、近年は柔軟性に富んだクラウド型VDIのほうが好まれる傾向にあります」と、ヴイウェムウェア エンドユーザコンピューティング技術部 シニア スペシャリスト SEの藤野知行氏は述べる。

ヴイウェムウェア株式会社

エンドユーザコンピューティング技術部

シニア スペシャリスト SE

藤野知行氏

クラウド型VDIは、大きく2つの展開モデルが考えられる。オンプレミスVDIと同レベルのカスタマイズ性を維持したい場合には、「IaaSモデル」が望ましい。パブリッククラウドをインフラとして活用しつつ、従来からのオンプレミス展開でも利用してきたHorizon 管理コンポーネント群を展開し、仮想化基盤を自社でコントロールする手法である。

運用負荷を大幅に軽減したい場合には、「DaaSモデル」が最適だ。デスクトップの標準化を進めて管理性を向上し、高いコスト効率を実現することが可能である。基盤のメンテナンス/アップデート作業から完全に開放され、専任の技術者がいなくても利用できるというメリットは大きく、各調査会社はDaaS市場の大幅な拡大を予想している。

仮想デスクトップ基盤として高いシェアを誇る「VMware Horizon」は、IaaSモデルとDaaSモデルのいずれも選択することができる。

前者の「Horizon on VMware Cloud」は、クラウド上にHorizon環境を構築できるIaaSモデルで、複数のクラウドサービスに対応している。オンプレミス環境と同等の運用性を実現できる点が特徴だ。

後者の「VMware Horizon Cloud Service on Microsoft Azure」は、その名のとおりWindows環境と親和性の高いMicrosoft Azure上で提供されるDaaSである。マイクロソフトとヴイウェムウェアの強力な運用体制で、高い信頼性が期待できる。

Horizon Cloud Serviceについて、米ヴイウェムウェアは2022年2月に「VMware Horizon Cloud Service next-gen」を発表、同8月から一般提供を開始した。この新世代のHorizon Cloud Serviceは、第一世代のコードを大幅に刷新して拡張性と管理性が大幅に向上し、超大規模環境を含む多種多様なニーズに応えられるDaaSへと進化した。どのような革新があったのか、詳しく解説していこう。

超大規模DaaSを実現する拡張性と運用性

 第1のポイントは、「Thin Edgeアーキテクチャ」の採用である。具体的には、Horizon 環境の制御プレーン側に従来型に比べより多くの管理機能を持たせ、主に VDI のキャパシティを提供するHorizon Edge(ユーザーリソースと軽量型管理アプライアンスを内包)を管理するといったアーキテクチャに変更したことにより、管理インフラのフットプリントを削減して運用コストと拡張性を向上した。

従来のアーキテクチャでは、単一のAzureサブスクリプションあたり2,000のアプリ/デスクトップをホストできるが、逆に2,000VMごとにポッドを分割しなければならなかった。ポッドごとにHorizon管理サーバーが必要で、それぞれ運用コストがかかる計算になる。

新しいアーキテクチャでは、1つのプロバイダー(Azureサブスクリプション)で5,000VMをサポートし、最大4つを束ねた20,000VMを1つのHorizon Edge下で管理することができる。複数の管理サーバーが不要となり、1ユーザーあたりの管理インフラコストは最大で93%もの削減が見込めるという。

第2のポイントは、多彩な拡張パターンである。シンプルにユーザーキャパシティのみを増強したい場合には、上述したように、Horizon Edge下にプロバイダー(セカンダリプロバイダー)を追加することで20,000VMまで対応できる。

2万VMを超える大規模環境の場合は、同一サイト内で複数のHorizon Edgeを構成し、1つのHorizon制御プレーンで管理するという手法が採れる。「単純な大規模環境だけでなく、インフラは1つのリージョンに統合したいがコスト構造はユーザー部門ごとに分離したいというニーズにも向いています」(藤野氏)

複数のサイトへHorizon Edgeを展開する方法も有用だ。グローバル企業が、複数の国・地域のAzureリージョンにHorizon Edgeを持つというケースもあるが、国内ではディザスタリカバリ用途として注目度が高い。つまり、Azureの東日本リージョンと西日本リージョンにそれぞれHorizon環境を用意しておけば、自然災害などでいずれかが利用できなくなっても他方でサービスを維持できるというわけだ。この場合も単一のHorizon制御プレーンで管理でき、運用性を損ねることはない。

VMware Horizon Cloud Service next-genの第3の特長は、完全API駆動型アーキテクチャである。next-genの制御プレーンサービスはコンテナ型のクラウドサービスとして提供されており、VMware Workspace ONE Intelligenceのほか、サードパーティ製の管理ツールやユーザーが独自に開発した管理ツールにも対応する。

「例えば、人事異動などでデスクトップ環境の更新が必要になった場合、1つ1つ手作業でPCやアプリケーションの設定を変更する必要がありますが、統合管理ツールなどを用いれば作業を自動化することが可能です。Horizon Cloud Service next-genでは、そうした管理ツールをAPI連携によって幅広くサポートし、運用作業の自動化やセルフサービス化を手軽に実現できるようになります。将来的には当社のパートナーと各種ソリューションを提供する計画もあり、鋭意開発に取り組んでいます」(藤野氏)

ハイブリッド/マルチクラウドもシームレスに使い分け

 VDI環境は、オンプレミスもクラウドもそれぞれ長所があり、高度なカスタマイズ性や特殊なパフォーマンスが求められる部門ではオンプレミス、高いモビリティが求められる部門ではDaaSと、ハイブリッドに使いこなしていくことも重要である。現在のところVMware Horizon Cloud Service next-genは、Microsoft Azureでの提供にとどまっているが、将来的にはマルチクラウドをサポートしていくことも期待されている。

VMware Horizonは、そうしたハイブリッドクラウド/マルチクラウド/の混在環境でもシームレスに管理できる点が特長で、管理者からエンドユーザーまで幅広いプレイヤーの生産性向上に寄与できるソリューションだ。

「Microsoft Azureは強力かつ堅牢で、安定的なHorizon環境を実現できるクラウドサービスです。ヴイウェムウェアは、これまで以上にマイクロソフトと密に連携して、使いやすく効率的なDaaSの提供に努め、企業のハイブリッド&マルチクラウド戦略を支援したいと考えています」(藤野氏)

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